年始の挨拶は万年筆で!
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年始の挨拶は万年筆で!

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年賀状

毎年この時期になると頭を悩ませるのが、年賀状の問題。

我が家は大学で教えていた父の仕事の関係上、年賀状の枚数は他の家庭よりもはるかに多かった。一番多い時期で500枚以上の年賀状を出していたこともある。
さらに海外の知人などにはクリスマスカードを送っていたから、それも合わせるとこの時期には、600枚近い手紙のやり取りを行っていたのだ。

ぼくが子どもの頃は、表面は業者に頼んで印刷をしていたが、大学に入った頃から、ぼくが年賀状を作成していた。一番最初が当時年賀状の主流だったプリントごっこという手軽な版画キットのようなものを使って年賀状を作っていた。おそらくそれを使って年賀状を作っていたのは10年くらいだったと思うのだが、毎年材料を揃え、図案を考え、印字するという作業がとても楽しかった(量が多かったから大変ではあったけれども)記憶がある。

パソコンを使うようになってからは、もっぱらパソコンでの作業に移った。住所も表面もすべてパソコンで作っていたので、両親もだいぶ気が楽になったと思う。
父が現役を退職してからは、もっぱら年賀状の枚数も減り、父なき今は母とぼくを合わせてもだいたい100枚程度の年賀状で済んでいるので、最盛期の頃と比べると、ぐっと我が家の年賀状の枚数は減って、少しは楽になった。

でも、やっぱりこの時期は憂鬱だ。
そもそも年賀状を書かなくてはいけない、という強迫観念が面倒。もちろん、年に一度しかやり取りのない人の近況報告を知るのは嬉しいことだし、自分もそういう人にはきちんと近況を伝えたいと思う。でも、やはり義理で送らなくてはならない人だとか、いつも顔を合わせているのに、わざわざ送ることもないんじゃない?みたいな感じの人に改めて送ることもないんじゃない?という気にもなってしまうのだ。
さらに、年末年始というのは、何かとせわしない。来るべき新しい年に向けて、年内に片付けておきたいものが一気に押し寄せてくるから、それを片付けて、なおかつ、年賀状を元旦に届くように出さないといけないと思うと、さらに憂鬱になってしまう。

しかし、万年筆を日常的に使うようになってからは、少し状況が変わってきた。普段からノートや手帳に万年筆で文字を書くことは多いのだが、なかなか手紙を書く機会というのは少ない。だから、年賀状というのは、まとまった文字を万年筆で書く絶好の機会なのである。
では、年賀状を書く時にどんな万年筆やインクを使ったら良いのだろうか。

インクは顔料インクがおすすめ

年賀状

年賀状

まず、インクはできるだけ顔料インクを使うことをお勧めする。
特にハガキだと雨にぬれたり、この時期は雪が降ったりする可能性も考えて、防水対策のために顔料インクを使うと良いだろう。セーラー万年筆からは、以前コラムでもご紹介したSTORiAはカラフルな色が揃っているので、手紙を書くのに最適だ。宛名は超微粒子顔料インクの青墨を使うと良いだろう。美しいブルーブラックなので、目上の方にも失礼にならない。

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顔料インクだとぬれても滲まないので、ハガキを書く時には重宝する。

いろいろな字幅を使ってみる

年賀状

年賀状をすべて印刷する人は別として、せっかく万年筆を持っているんだったら手書きで書きたいと思う人は多いだろう。表も裏もすべて手書き、となるとかなり時間はかかってしまうだろうが、例えば、せめて住所と名前だけでも手書きで書きたいところ。そんな時に活躍するのが、太めの文字が書ける万年筆だ。
ぼくが選んだのは、セーラーのミュージック<MS>と呼ばれる、ちょっと変わったペン先。これは、音符を書くために作られたペン先で、縦は太く、横は細く書くことができる面白いペン先。これで文字を書くと、ちょっとだけ自分の字が好きになる。太い字なので、細かい字を書く手帳や日記には不向きだが、宛名や新年のあいさつだと思う存分太い字が書けておすすめ。

同じく太字でおすすめの字幅が、ズーム<Z>と呼ばれるもの。これは、寝かせ気味に書くと太く書け、立たせて書くと細くかけるという優れもの。インクのフローを楽しむこともできるので、ズームも宛名や挨拶の言葉に最適だ。

国産の万年筆は舶来の万年筆と比べると細めの字幅が多い。これは細かい漢字を書く文化だから、必然的にそうなったと思われるのだが、年賀状を書く時はしっかりとした太い字で書きたいという人もいるだろう。しかし、文字がつぶれてしまっては意味がないので、ほどほどの細さも求められる。そんな時にぼくが良く使うのが太字<B>だ。

しかし、やっぱりメッセージを書く時には太字では不便に感じることも多い。なので、メッセージは細字の<F>を使うと良いだろう。程よい細さなので、細かい漢字を書いてもつぶれないから安心だ。

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ところで、今回年賀状で使った万年筆は、セーラーとプラチナを選んだのだが、字幅を確認するためには、ペン芯の刻印を探さなくてはいけない。その時、メーカーによって刻印の位置が違うので気を付けたい。セーラー万年筆はペン先の左横に刻印がある。プラチナの場合はペン先の正面に刻印があるので、そこを見ればその万年筆がどの字幅なのかがわかるので、手持ちの万年筆を確認しておき、使い分けてみると良いだろう。

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セーラー万年筆の刻印

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プラチナ万年筆の刻印

いろいろな字幅の万年筆を使うことで、ハガキ全体にメリハリが生まれ、相手に印象を与える年賀状を書くことができる。さらにいろいろな色を上手に組み合わせて使うと、より効果的になる。

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宛名を書く時のコツ

ぼくが、手紙やはがきの宛名を書く時に気を付けているのは、文字の大きさを揃えて書くこと。方眼の用紙だったら線に合わせて書けば良いので、比較的文字の大きさを揃えられるのだが、封筒やはがきの場合はそういうわけにはいかない。そんな時に重宝するのが定規だ。定規を下にあてて、その上に文字を書くことによって、比較的文字の大きさを揃えることができるし、底の部分が均一になるので、見た目にも整うので見た目にもスマートになるのでこの方法を試してみると良いだろう。(横書きの場合に限られてしまうけれども)

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縦書きの場合にもちょっとした工夫で面白い宛名を書くことができる。ぼくが思いついたのは、漢字の左はらいの部分だけを少し伸ばすこと。過度な装飾は配達する人を混乱させてしまうが、これぐらいの遊びだったらきちんと読めるし、ちょっとしたデザイン文字らしくておしゃれに見えるから、チャレンジしてみるのも良いだろう。

年賀状

年賀状は元旦に届くように送りたいところだが、実はぼくはどうしても年末はバタバタしてしまい、気持ち的にも年賀状に向かう気にならないので、最近はお正月を過ぎてからまとめて書くようにしている。中には喪中の人もいるし、出したのか出さなかったのかわからなくなってしまう場合もあるし、あるいは、一年に一度しかやり取りをしていないと、年賀状で近況を知る人も多い。そういう人に対しては年賀状を受け取ってから書いた方がより細かな対応ができる。また、喪中の人に関しては寒中お見舞いとしてお悔やみの言葉を書くことができる。

最近はインターネットの普及によって、年賀状のやり取りが減ったという話をしばしば耳にするが、年賀状というのは、手書きが好きな人にとっては、文字をたくさん書く格好の機会なので、ぜひ、色々な万年筆、多彩なインクを使って年賀状を書いてみてはどうだろうか。

年賀状

この記事を書いた人

武田健
武田健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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