世界の筆記具ペンハウス
雑誌「趣味の文具箱」連載でもお馴染みの文具ライター・武田健さんによる「読みもの」コンテンツ。総保有インク2000本超えの自他共に認める万年筆インクコレクターである武田さん。万年筆とインクを中心に、文具にまつわるお話を連載していただきます。

短い秋を彩るインクたち ~レンノンツールバー 2019年秋季限定色~

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夏の暑さが去り、一気に寒くなったような気がする。
暑さが大の苦手なぼくは、夏の間は汗をふきふき、早く寒くならないかと思っていたのだが、あっけなくその暑さに終止符が打たれると、一抹の寂しさを感じてしまう。なんとも身勝手なものである。

最近の日本は(日本だけじゃないかもしれないが)、春と秋が短いという声を良く聞く。
昨日まで寒いと思っていたら、突然暑い日が続いたり、逆にそろそろ暑さも潮時かなと感じたとたんに、上着が必要になるくらい寒くなったり。
今年の秋もそんな感じで、唐突に訪れた感じがする。
もう暦の上では冬に入るわけだけれども、まだまだ気分的には秋を味わいたいと思っている人もいるだろう。

そんな秋を彩るインクをご紹介したいと思う。

台湾発の秋季限定インク

大人気の台湾発の藍濃道具屋(レンノンツールバー)は、台湾の風土を生かした美しいインクを出しているのだが、毎年季節ごとに、これまた素敵なインクをリリースしていて、季節が巡ってくるたびに、だんだんと今シーズンはどんな色なんだろうか?と楽しみになってくる。

パッケージに描かれたシールのデザインもそのインクにぴったりのイラストが描かれていて、それもまた楽しみの一つだ。
さて、そんな藍濃道具屋の2019年の秋限定インクはどんなモチーフなのだろうか。

季節限定インクは、いつも3種類出ているのだが、今回も3種類ある。
「秋刀魚」「欒樹」「文旦」の3種類だ。それぞれまったく違う色味だし、モチーフも様々だが、台湾の秋を感じることのできる素晴らしい色だと思う。

短い秋を彩るインクたち

秋の味覚の代表格―秋刀魚―

栗やかぼちゃとともに秋の味覚の代表格でもある秋刀魚は、台湾でも人々の間で人気の魚のようだ。その秋刀魚をモチーフにした色が季節限定で登場した。

短い秋を彩るインクたち

短い秋を彩るインクたち

色は一見黒に見えるけれども、よく見るとグレーにかなり近く、シックな色になっている。秋刀魚の表面は黒みがかっているのだけれども、それも真っ黒ではなく、うっすらとシルバーに光っている部分があり、まさにこのインクはそんな脂ののった秋刀魚を彷彿とさせる美しい色だと思う。

台湾を代表する樹木―欒樹

次にご紹介する2019年秋季限定色は、「欒樹」という木がモチーフになっている。中に入っている説明文によると、台風の去る時期に赤い実を結ぶ木で、台湾では四季を通じて人々から親しまれているらしい。でもこの名前は初めて知るので、日本には入ってきていない木なのかもしれない。

一体どんな実をつけるのか、実際に見に台湾に行きたくなってしまう。

短い秋を彩るインクたち

短い秋を彩るインクたち

色は明るい赤というよりも、少しくすみのある赤でとても雰囲気がある。インクとしてみると、優しい感じに見えるが、実際にこの色の実がたわわになっているのを見たら、きっと目を引くし、鮮やかに映るんだろうなぁと思い、ますます見に行きたくなってしまうのである。

おいしい味を思い出すー文旦

3つ目にご紹介する藍濃道具屋の2019年秋季限定インクは、「文旦」。ぼくは子どもの頃からお菓子が大好きで、いろいろなお菓子を食べてきたのだが、特にぼくが好きなのは、駅の売店で手軽に買えるようなキャラメルだとかキャンディーだ。中でもよく食べるのは「ボンタンアメ」。母も好きで、子どもの頃から外出時には良く買ってくれたので、それで好物になったのかもしれない。今でもときどき無性に食べたくなることがあるくらい好きなのだ。そんなボンタンアメは柑橘系の果物から作られているのだが、その果物というのが「文旦」なのである。
それをモチーフにしたのがこの色。

短い秋を彩るインクたち

短い秋を彩るインクたち

柑橘系というと、どうしても黄色系の色を思い浮かべがちだが、こちらは緑がかなり強い。かといって真緑ではなく、やはり黄色が入っているのがきちんとわかる程度の濃いめ黄緑という感じだろうか。爽やかで秋のひんやりとした風に似合う色なんじゃないかと思う。

ボックスを開けるときは底から

藍濃道具屋のインクはボトルやボックスに貼られているシールのデザインもおしゃれでぼくは大好きなのだが、ひとつだけ注意点がある。
それは、ボックスを開けるときは必ず底から開けるということだ。なぜなら、その美しい絵が描かれたシールがボックスの上部の蓋を覆うように貼られているため、上部から開けようとするとカッターなどで切り込みを入れなくてはならないのだ。そうするとせっかくのラベルが分断されてしまい、見栄えがあまりよろしくない。
そういうのが気になる人は底から開けるようにしよう。

短い秋を彩るインクたち

短い秋を彩るインクたち

台湾は今まで2回行ったことがあるのだが、いずれも台北市内ばかりだったので、来年あたりはもう少しいろいろな場所に行ってみたい。高雄に住んでいる文具好きの友人を訪ねてみたり、今年も盛り上がった台南ペンショーに行ってみるのも良いかもしれない。
目下の夢は、最近仲良くなったジュエリーデザイナーのヤーチンライさんの案内で台北の文具業界や文具好きの人たちと交流すること。
また新しい楽しみができたので、これらのインクを使いながら、その日を心待ちにしたい。

 
<この記事で紹介しているインクはこちら>
レンノンツールバー ボトルインク 季節限定色 2019年秋季限定

▼記事に登場するジュエリーデザイナーのヤーチンライさんのガラスペンはこちら
ヤーチンスタイルの製品一覧を見る

この記事を書いた人

武田 健
武田 健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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