1930年、ドイツの古都ハイデルベルグで生まれたラミー社は、今や世界中の筆記具愛好家に愛されるブランドだ。サファリやネックスという若者向けのシリーズだけでなく、ステュディオや深澤直人氏がデザインを手がけたノトなど、斬新なアイディアで人々を驚かせている。
そんなラミーの神髄に迫ることができる展覧会が都内で開催されている。
『thing tools展』と題された本展覧会は、機能とデザイン性を合致させたバウハウスの思想を取り入れた斬新なデザインが話題となった、ラミー初のデザインプロダクトである「LAMY2000」が誕生した1966年から50周年という節目を記念して行われた。この展覧会は、2016年にドイツのフランクフルト応用工芸博物館にて開催され、世界巡回展としてドイツに続き、日本での開催となる。
展示会場ではそんなデザイン性と機能性の両面を兼ね備えたラミーの商品の開発される舞台裏が様々な工夫によって展示されている。中には試作の段階で没になったプロトタイプまで展示されており、ここまで見せてしまって良いの?とびっくりしてしまった。ラミーに興味のある人はもちろんのこと、機能美やシンプルなデザインが好きだという人には一見の価値のある展示ばかりだ。
また、ラミー社の様々な部署が幾多のミーティングをしながら商品を作り出していくそのデザインプロセスがシンプルな図として描かれたブラックボードも興味深い。
ラミーには、いろいろな商品があるが、その根本にあるのは、自分の個性を表現するツールであるというブランドの思想だ。だからこそ、ラミーの商品というのは、どれもシンプルで飽きのこないデザインなのではないだろうか。
思い返せば、ぼくが一番最初に購入した舶来万年筆はラミーのサファリだった。手ごろな値段で初心者も手を出しやすいというだけでなく、デザインもスタイリッシュでさらに持ちやすいところに惹かれたのだ。まさに、機能的でありながらもシンプルで洗練されたデザインというラミーの魅力にぼくはすっかり魅了されてしまったのである。その後、毎年限定で発売されるサファリシリーズとアルスターシリーズは欠かさず購入し、当然のことながら、限定インクも揃えている。
この展覧会で特に圧巻だったのが、グローバルメディアで活躍するクリストフ・ニーマン氏によるユニークな展示だ。万年筆一本からこんなに素敵な物語が作り出されるなんて!と会場を歩きながら驚きを禁じ得なかった。
また、会場限定の万年筆やボールペンや、展示の詳細を案内したカタログなども販売しているので、マニアにはたまらない展示会だ。さらに、その場で試し書きができるスペースも設けられており、そこには「わたしにとって書くこととは…」といった文言だけが入った白紙の絵葉書が用意されている。友だち同士で行けば、その絵葉書からいろいろなアイディアや話題が生まれてくるかもしれない。
そんなユニークな展示会は東京六本木にて4/8(日)まで開催されているので、今までのラミーに想いを巡らせ、そして、これからのラミーに期待しながら会場に足を運んでみてはどうだろうか。
『thinking tools』
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
東京都港区赤坂9-7-6
東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
会期:2018年3月3日(土)- 2018年4月8日(日)(火曜休館)
入場料:無料
お問い合わせ: DKSHジャパン カスタマーサービス
03-5441-4515 (土日祝日を除く10:00-17:00)
<展示会の詳細はこちら>
http://www.lamy.jp/thinkingtools.html
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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