玉石参房第三十六房 JAN小寒大寒――沈思する寂静の夜――

用紙：SAKAEテクニカルペーパー・イロフル
万年筆：Pent・大西製作所・Symphony～沈思する寂静の夜～

今月は小寒大寒にあわせ、Pentオリジナルインク、
「Symphony～沈思する寂静の夜～」のお色見本を中心に、
ペンハウス取り扱い商品をいくつかご紹介します。
2025年もどうぞよしなに。

深い夜空の色のインクです。
吸収のよい紙にインクを落とし、乾燥させたのちに
1滴水を垂らすと、円形にインクが分離しながらひろがります。
紺色から淡い色がつぎつぎと咲いていきます。

光にかざすと、紙の繊維に染みこんでいる意外な色素も見られます。

※※※※

ひつじ雲便箋は張りのあるさらっとした手ざわりの紙。
透かすと名前の通り、雲のようにふわふわとした繊維の陰翳が。
インクの吸水よく、Gペンで書いてもひっかからず、
にじまず、裏抜けもしません。

用紙：山本紙業・ひつじ雲便箋

スムースアートペーパーは、つるりとした手ざわりで厚めの塗工紙。
くっきりした発色と、やわらかな接地感がたのしい紙。

染料インクなら増粘剤を足すと滲み対策になります。
水性ペンや顔料インク、アルコールインクや鉛筆などもおすすめ。

用紙：山本紙業・スムースアートペーパー
つけペン：立川ピン製作所・タチカワつけペンセット・C型3mm
　　　　　ZEBRA・チタンGペンPRO

暦と体感気温が近年の温暖化によりズレてきているものの、
２４節気７２候の各名称は、
長い歴史の継承と時間の区切りをきっかけとして
わたくしたちの生活に、ちょっとした気分のリセット感をあたえてくれます。

24節気にちなんだインクを併用して、
72候のそれぞれを混色しながら表記。

用紙：SAKAEテクニカルペーパー・イロフル
併用インク：IWI・Color of Nature・小寒・大寒

1/21はリスの日、
「里芋」の別称もある小型の猛禽・スピックスコノハズク、
「沈思する寂静の夜」カラーの皇帝ペンギンを。

※※※※

あかしや「天平の夢」は、彩ゆたかな、いにしえの奈良の５色。
美しい和紙巻の軸は手にしっくりなじみ、
筆ペン軸にありがちな、つるつるしたプラスチックの持ちにくさを解決。

透明キャップで色や穂先の状態もわかりやすく、
滑り止め付きなので、キャップの転げ逃げもありません。
さりげない心配りがうれしいお品です。

色はくっきり明るい顔料インク。
穂先の命毛も繊細な、とても書きやすい筆ペンです。

しなやかな穂先のかきごこちとゆたかな色の発色をもとに、
「今日は残りの人生の最初の日」と前向きな気持ちを与えてくれる、
チャールズ・ディードリッヒの名言を。
ころんとした丸い文字にも筆ペンは合います。
用紙は発色の良いスムースアートペーパー。

2月28日は、惑星がすべてアーチ状に揃う日。
深い夜空にうかぶ夜富士は、わたくしの好きな題材で、
過去にも制作しました。

くっきりとした夜空の紺色は原色のまま。
用紙によって意外な発色をする紺色インクの分離色を利用して
夜富士の表現を。

※※※※

地動説をテーマにした漫画「チ。―地球の運動について―」がとても好きで、
待望のアニメも昨秋から開始され、毎週楽しんでいます。

15世紀の夜の暗さ、星空の美しさを体感できるよう、
昨今のアニメに比べると非常に光量の少ない作品ですが、
「部屋をくらくして大きな画面で観る」と、

限られた情報のなかで真理を追い求める人々の信念が
深い洞察とともに「沈思する寂静の夜」の名のとおり、
幾夜にもわたり、ゆっくりと積み重なっていきます。

アトラス彗星の可視や、火星最接近、
季節ごとの流星や星座、
月の満ち欠けなど天空イベントがあるたびに、

先人が紡いできた学問・発見のつみかさねが順に引き継がれ、
その最先端の、今のわたくしたちがこの目で見る景色は、
普通であり特別であることをおぼえます。

そんな夜の、深い思考の時をあらわしたうつくしき紺色。
作った人から、使う人へ。使う人から、便りを受け取る人へ。

色にいざなわれて開ける扉の向こうにひろがる、
「沈思する寂静の夜」の世界。
インクの楽しみの入り口となれば幸いです。

ゆっくり夜空を眺めていられるのも今だけ。
まだ1月なのにすでにスギ花粉が飛散開始、みずからの目と鼻が警報発動中の朝比奈斎（ゴーグル装着の日々・スギ山林地域居住の悲哀よ。）でした。ではまた。

＜今回のメインインク＞
・Pent〈ペント〉数量限定ボトルインクシンフォニー沈思する寂静の夜～Night～

朝比奈さんからのお知らせ

◆絶賛更新中！X（旧：Twitter）
@asahinaitsuku

◆新たに開設しました！Instagram
@asahinaitsuku

◆目下鋭意準備中！
朝比奈斎の玉石参房
※別ページへ移動します。

この記事を書いた人

朝比奈斎

憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP５１１」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

Twitter：@asahinaitsuku
Instagram：@asahinaitsuku