黒色インクの魅力
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黒色インクの魅力

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2018年10月22日現在ぼくが所有している万年筆インクは1944本。年内には恐らく2000本を達成することになるだろう。しかし、それだけインクを持っていると、すべてをまんべんなく使うということはほぼ不可能に近い。だから、どうしても使う色に偏りが出てきてしまう。

ぼくが一番よく使う色は青系の色。この青系というのは、どうやら一般的にも人気の色で、例えば、ダイアミンやセーラーの100色インクでも、青系の色は実に多く出ている。でも、ぼく自身も使う色は圧倒的に青系が多いので、どんなにたくさんの色が出ても、そんなに困ることはない。
むしろ、もっといろいろな青インクを使いたいし、集めたいと思ってしまうほどだ。

ところが、一方でほとんど出番がないインクというのもある。一番使いにくい色は黄色系のインク。特に判読性の低い、自分で文字を書いていても何を書いているのかわからないような明るめの黄色はほとんど出番がない。
さらに、実は個人的には黒インクもあまり使わない。色そのものは好きなんだけれども、黒インクというのは、何となくボールペンのインクと変わらないんじゃないかという変な先入観があって、ついつい敬遠してしまう傾向にある。

しかし、グレー系の色は好きだったりする。微妙なフローを楽しむことができるし、黒とは違った味わいがあるので、グレーは必ず1本持ち歩くようにしているほど好きだ。
では、黒とグレー、どのように違うのだろうか。グレーと黒の違いはおそらくその薄さにあると思うのだけれど、黒と言われている中にもグレー系の色というのは実はあるんじゃないか?という気がして、せっかくだからPEN HOUSEで扱っている黒インクを調べてみることにした。

黒色インクの魅力

「BLACK」と呼ばれているインクだけではサンプルが足りないので、PCサイトの検索機能で、<種類で探す>の項目で「インク・替え芯・消耗品」を選択し、その下の<色味で探す>の項目で「ブラック」を選択し、検索ボタンを押す。

そうすると全部で502件ヒットするのだが、これらにはインク以外の消耗品なども含まれているので、並び変えを「価格が高い」にすると比較的インクが最初に表示されるようになる。そこからぼくが手持ちのブラックインクを選び、それらを比較してみた。

その結果をまとめてみることにしよう。

まず、ブラックと選択したにも関わらず、なぜかまったくブラックとは言えないような色が何色かあり(プライベートリザーヴのブラックチェリーなど)それらは除外しておく。また、どう見てもブルーブラックなのでは?という色もあったので、(ダイアミンのレジストラーズインクなど)それも除外した。

さて、みなさんは「黒」と聞いて真っ先に思い浮かべるのはどんな黒だろうか?ちょっと艶やかな黒、あるいは、べったりとした黒など、いろいろな種類の黒があると思う。まずは、日本の3大ブランドの黒系インクを比較してみよう。

黒系インク比較

セーラー ブラック

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セーラー 極黒(顔料インク)

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パイロット ブラック

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プラチナ万年筆 ブラック

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セーラーは普通の染料インクの「BLACK」と顔料インクの「極黒」の二種類があるが、「極黒」の方が顔料だけあって立体感のある黒という気がする。染料の方はべったりとした黒という印象。ぱっとみた限りでは、顔料インクの方が優しい印象で、それが意外。
パイロットの「Black」は他社と比べるとだいぶ薄めだ。グレーに近い黒といって良いだろう。そして、3社の中で一番バランスが取れている黒がプラチナだ。濃すぎず、薄すぎず、ちょうど良い感じと言って良いかもしれない。オーソドックスな黒だから、どんな場面でも無難に使える。

では、海外のブランドはどうだろうか。まずはいかにも黒らしい黒からご紹介していこう。

プライベートリザーブ ウルトラブラック

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プライベートリザーブ ベルベットブラック

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ダイアミン オニキスブラック

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ダイアミン ジェットブラック

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カヴェコ ブラック

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エス・テー・デュポン インテンスブラック

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プライベートリザーヴの「Ultra Black」がもっとも濃い黒で、同じくプライベートリザーヴの「Velvet Black」がそれに続く。ダイアミンの「ONYX BLACK」は濃いが、少し柔らかい印象。同じくダイアミンの「JET BLACK」はさらに優しい印象を与える気がする。カヴェコも塗りつぶすとしっかりとした黒だし、細字で書いても濃い黒になるが、太字だと柔らかくなるところが面白い。デュポンの「Intense BLACK」は細字で書いても太字で書いてもグレーに近い黒という感じだろうか。

では、次に黒というよりもむしろグレーといった方が良いのでは?という黒をご紹介したい。

J・エルバン ペル・ノワール

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アウロラ ブラック

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そんな中でもグラデーションがあり、黒に近いグレーがエルバンの「PERLE NOIRE」やアウロラの「Black」だろう。これらは太字で書くと少しグレーが入ってくるが、細字だと黒が強調される。

ステッドラー ブラック

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クロス ブラック

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ラミーブラック

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ペリカン 4001 ブリリアントブラック

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ところが、ステッドラー、クロス、ラミー、ペリカンはいずれも「Black」という名前ではあるけれども、完全な黒というよりも、少し灰色の要素が加わり、逆にそれが濃淡に表れると味わい深い黒になるのではないだろうか。そういった濃淡を楽しみつつも、黒色インクを使いたいという人はこのあたりのブランドがおすすめだ。

エーデルシュタイン オニキス

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ペリカンのエーデルシュタインの「ONYX」も黒インクだが、少し黄色が入っているスタンダードの「brilliant black」と比べるとかなり純度の高い黒という気がする。

ウォーターマン インテンスブラック

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ダイアミン クォーツブラック

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ビスコンティ ブラック

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ウォーターマン、ダイアミンの「QUARTZ BLACK」、ヴィスコンティは、上記の黒に比べるとかなり薄くて、濃い黒を期待している人には物足りなさを感じるかもしれない。でも、柔らかい黒が好きな人にはこのあたりを使ってみると良いだろう。

では次に、非常に個性的な黒インクを見てみよう。

オンライン ブラック

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オンラインの「black」は少し青緑がかった色で、しかもそれが細字でもわかるくらいの変わり種。これはかなりユニークで使っていて楽しいインクだと思う。一見黒に見えるのに、良く見るとうっすらと青緑が入っているところが、インクフェチにはたまらない!

モンテグラッパ ブラック

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同じ理由でモンテグラッパの「Black」も面白い。むしろこれは紺色とかブルーブラックと言って良いんじゃないの?という気がするくらい青みがかっている。

ダイアミン エクリプス

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もう一つ面白い色がダイアミンだ。これも黒のカテゴリーに入ると思うのだが、紫がかった黒で、そこがまた面白い。細字だとあまりわからないかもしれないけれども、太字だとその濃淡で紫が出てくるので、それを楽しみたいところ。

Pent(ペント)彩時記 風雪海

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Pentの彩時記「風雪海」も黒系インクとカテゴライズされるが、これがまた微妙なところで、真っ黒というわけではなく、うっすらと緑というか黄色というかそういう色が混ざっている感じが面白い。濃淡が出やすい万年筆だと、文字に立体感が出て、味わい深い文字が書けるインクだと思う。

パーカー ブラック

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PARKERの「Black」は安いし、比較的手に入りやすいインクなので、愛用者は多いという話を聞いたことがあるが、この色も非常に個性的だ。まず黒の割には優しい薄めの淡い色であること。さらに純正の黒という感じではなく、少し黄色がかっているところもこのインクの面白いところだろう。だから長く使っても飽きがこないのかもしれない。

以上、全部で25種類の黒系インクをご紹介したが、どれ一つとして同じインクはないということがお分かりいただけただろう。実際に万年筆に入れて、細字で書いてみると同じように見えるかもしれないが、太字で書いてみたり、少し滲ませてみたりすることで、個性がより際立ってくる。そういう個性を感じつつ、自分の好きな黒をみつけていくと良いだろう。

<記事に登場するインク>
セーラー ブラック
セーラー 極黒(顔料インク)
パイロット ブラック
プラチナ万年筆 ブラック
プライベートリザーブ ウルトラブラック
プライベートリザーブ ベルベットブラック
ダイアミン オニキスブラック
ダイアミン ジェットブラック
カヴェコ ブラック
・エス テー デュポン インテンスブラック
Jエルバン ペル ノワール
アウロラ ブラック
ステッドラー ブラック
クロス ブラック
ラミーブラック
ペリカン 4001 ブリリアントブラック
ペリカン エーデルシュタイン オニキス
ウォーターマン インテンスブラック
ダイアミン クォーツブラック
・ビスコンティ ブラック
オンライン ブラック
モンテグラッパ ブラック
ダイアミン エクリプス
Pent(ペント)彩時記 風雪海
パーカー ブラック

この記事を書いた人

武田健
武田健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。