月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい
世界の筆記具ペンハウス

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

  • Pocket
  • LINEで送る

俳句をやっている人だったら、「月」は秋の季語であることはご存じのことと思う。仲秋の名月といわれているくらい秋の夜空に浮かぶ月は美しい。
ぼくは月に限らず天体には子どもの頃から興味があったので、四季折々、空を眺めているのが好きだし、朝も昼も夜も、飽かずに空をぼんやりと見上げるのが夢だったりもする。実際は、日常生活に埋もれて、そんな余裕もないのだけれども。
そんな中でもぼくは月を見るのが大好きだ。新月の前後は月を肉眼で確認することができず、何となく寂しい気持ちになってしまうくらい月に興味を持っている。
美しい月を見ることができた時はそれがたとえ昼間のうっすらと白んだ月であったとしても、幸せな気持ちになる。
あるいは、時々、いつもより大きな、くっきりとしたオレンジ色の月を見る時もあるが、そんな時でも、じっとその月を見ていたい気持ちになる。
そんな月をモチーフにした万年筆が彩時記シリーズで登場した。それが「琥珀月」である。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

名前の通り、琥珀色の樹脂は実に絶妙な色合いである。茶色というほど濃くもなく、かといって黄色や橙色というわけでもなく、まさに琥珀という名前がぴったりの色と言って良いだろう。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

さらにこの琥珀月をより魅力的にしているのが、彩時記シリーズの万年筆に共通のラメだ。比較的はっきりとした感じのラメが入っているのだが、中には青や緑のラメも混じっていて、実に多彩。しかし、それが上品な輝きを伴っているところがこのシリーズの魅力なんだと思う。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

ぼくはすでに「青緑」「幻蒼海」の2本を持っているのだが、色はそれぞれ同名のインクに合わせて作られているのだが、樹脂に練りこまれたラメは同じラメなので、統一感がある。しかも、同じプロギアスリムなので、3本並べてみると非常に美しいのだ。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

この「琥珀月」もまた、ペン先がPentオリジナルの刻印で、こんなところにもオリジナリティへのこだわりが感じられる。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

ぼくはプロギア系の万年筆が大好きで、他店の限定も集めている。特にプロギアスリムは他のプロギアやレアロと比べると限定を出しているショップも多く、そのために必然的に手元に集まってくる。それらをずらりと並べてみると、同じ形、サイズの軸ながらも、柄が様々なので、それが楽しい。その中でも大胆な多色ラメが施されたこの彩時記シリーズは特に目立つ存在だと言って良いだろう。

ぼくがプロギアや少し小さめのプロギアスリムを集めるのには理由がある。それは、その形そのものが魅力的だから、というのもあるのだが、同じ型の万年筆のため、首軸、本体、キャップを組み替えることができるからである。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

これが、もし他の型だったら、こういうわけにはいかない。たとえば、同じプロギアでも、プロギアとプロギアスリムではサイズが変わるので付け替えは不可能だし、プロギアレアロは首軸と軸が一体化しているためにそもそもの付け替えができなくなる。

ぼくがプロギアやプロギアスリムを中心に集めてしまうのは、同型だとこのように組み換えができるからなのだ。

これは、単に見た目だけの面白さだけではなく、機能的な面での面白さもある。

ぼくは万年筆を買う時、いつも字幅で悩んでしまうのだが、大きな文字を書く時はズームやミュージックの方が楽しいけれども、例えば手帳などに細かい字を書く場合には、細字の方が字がつぶれなくて便利だ。

でも、その軸を使うシチュエーションというのが決まっていないために、いったいどの字幅で買ったら良いのかわからないのだ。だから、ぼくは同型の万年筆を買う場合には、一つの字幅に揃えるのではなく、字幅を色々と変えることにしている。

例えば、彩時記シリーズでいうと、

「青緑」はMS(ミュージック)
「幻蒼海」はZ(ズーム)

を買ったので、今回の「琥珀月」はB(太字)にしてみた。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

セーラー万年筆の太字は比較的細くて手帳でも十分書きやすいので最近手帳に字を書く時などはBを多用している。
手紙を書く時にも重宝するが、宛名や太字で書きたい。そんな時に他の字幅を選ぶのだ。

たとえば、「青緑」の軸を外に持ち歩き、手帳に字を書きたいと思うことがある。そんな時は首軸を太字の琥珀月に付け替えれば良いだけのことだ。首軸の色と軸の色が違ってしまうが、同じ彩時記シリーズなので、そんなに違和感もない。そして、キャップもつけかえることで、色がトリコロールになり、さらにカラフル感が増す。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

こういう組み合わせは他の軸にも適用することができ。組み合わせはぐっと広がってくる。さらに他店のプロギアスリムと合わせると、無限に組み合わせていくことができるのだ。

ぼくはこの彩時記シリーズはまだ3本しか持っていないのだが、他の色も気になっているし、新色も出るかもしれないので、入荷したら今度はM、MF、F、EFと字幅を替えて揃えていきたいなと思っているところである。

月を愛でながら文字を綴り、秋の夜を過ごしたい

<この記事に登場する万年筆>
Pent×セーラー万年筆 彩時記 琥珀月(こはくづき)
Pent×セーラー万年筆 彩時記 幻蒼海(げんそうかい)
Pent×セーラー万年筆 彩時記 青緑(あおみどり)

この記事を書いた人

武田健
武田健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
  • Pocket
  • LINEで送る