ガラスペンなるものを初めて知ったのはいつのことなのか、実はすっかり忘れてしまったのだが、実際に自分でガラスペンを使うようになったのは、本格的に万年筆を使うようになってからのこと。
主な目的は、インクの試し書きに使うため。
インクをたくさん集めるようになると、だんだんと見本帳のようなものを作りたくなってくる。自分がどのブランドのどのインクを持っているのか、ということをきちんと把握しておきたくなるのだ。
しかし、すべてのインクを万年筆に吸入して書くとなると、いちいち洗浄にも手間がかかり、時間も必要となる。
そんな時に便利なのがガラスペン。インクをガラスのペン先につけて、見本を書いたら、それを水につけて洗浄し、きれいに布で拭けば、すぐに次のインクの見本を作ることができる。
ところが、このガラスペンというは実に色々な種類があり、使い勝手もブランドによって違ってくる。
例えば、とあるイタリア製のそこそこのお値段のガラスペンをしばらく利用していたのだが、ペン先が非常に繊細で、布で拭いている時に、うっかりポキッと折ってしまったのである。
仕方なく、別のもう少し廉価なガラスペンを購入したのだが、今度は落として割ってしまったり、前回と同じように拭いている時に折ってしまったりということが続き、最近はガラスペンを使う時には細心の注意を払い、置く場所を工夫したり、拭く時も急がず、慌てず、意識して優しく拭くようにしたりして使っていた。
今日ご紹介するのは、そんなおっちょこちょいでせっかちなぼくにぴったりのガラスペンだ。
これは、ペントとおなじみの「大西製作所」、さらに日本を代表するガラスペン作家「ガラス工房まつぼっくり」のコラボレーションである『アセテート キャップ付きガラスペン』だ。
色はアクアマリン、蒼穹の彗、夢桜の3種類で、それぞれがまったく違った表情を持っている。
ぼくが好きなのは、今までも万年筆などをご紹介してきた蒼穹の彗。だが、アクアマリンも捨てがたい。蒼穹の彗は空を思わせる柄が特徴的で、一方のアクアマリンは海を思わせる軸。また、ピンク系が好きな人は、夢桜はとてもかわいらしいのでおすすめ。
さて、このガラスペンで早速ぼくはインク見本を作ってみたので、今回はその制作過程をご紹介しよう。
まず、用意するものは、名刺大サイズのカード、そして、システム手帳のバイブルサイズのリフィルだ。なぜ二種類用意するかというと、まず色別で管理したい場合には、抜き差しが自由なカード形式が便利。ただ、それだとブランドごとの一覧を見ることができないので、ブランド一覧用にバイブルサイズのシステム手帳が必要となるのだ。
さらに、色見本を作るにあたって必要なのは、2cmの正方形のシール。ぼくが使っているのはQRコードをプリントアウトするためのシール。これに色を塗りつけることで、枠をはみ出ることなく、色をきちんと塗ることができる。さらにそれに色を塗るための道具として綿棒が必要となる。
そして、ガラスペンを用意するわけだが、そのガラスペンについたインクを洗浄するための水入りのカップや柔らかい布なども用意しておこう。
まず色見本のシールを二種類作り、名刺大サイズのカードとシステム手帳のリフィルにそれぞれを貼り、そこに色名などを書くのだが、その時に活躍するのがガラスペンなのだ。
文字もしっかりと書くことができ、色も確認できるし、洗ってすぐに別のインクを使えるので、ガラスペンを利用すると作業がはかどる。
また、このガラスペンは、ストッパーが付いている。作業中はついつい気がせいたり、別の用事が突然入って集中力が途切れてしまったりすることもある。そんな時に、うっかり机の上から落としてしまうことも少なくないのだが、このストッパーのおかげで、その心配もぐんと減る。
また、キャップがあるのも嬉しい。ご当地インクを集めるのが好きなぼくは、旅先で新しいインクを手に入れることもあるのだが、空いた時間にインク見本を作ろうと思った時にガラスペンがあると便利だ。しかし、多くのガラスペンにはキャップがついていないので、持ち歩きに気を遣ってしまう。ところが、このガラスペンは、キャップがついているので、持ち歩きがしやすい。また、このキャップをしていれば、約一日はインクが蒸発することがなく書くことができるというのも大きな魅力と言えるだろう。
さらにもう一つ特記したいことは、ガラスペンのペン先が付け替えることができる点。ぼくのようにうっかりガラスペンの先を割ってしまった場合でもペン先だけを交換することができる。これは大変ありがたい構造だ。
さて、多くのインクを使ってやりたいことは、インク見本の作成だけではない、インクを使ってコロリアージュ、つまり塗り絵をするというのも良いだろう。
インクを次々と変えられるので、非常に便利。ただ、気を付けなくてはならないのは、ガラスペンはインクの量が多く出てしまうので、その調整が難しく、にじんでしまったり、他の色と混ざってしまったりすることもある。そんなことを防ぐために、通常の色鉛筆と併せて使ってみることだ。そのことで色の質感も変わり、塗り絵がより立体的になる。
このようにガラスペンも様々な場面で使える筆記具だし、このガラスペンはいろいろな便利で安心できる機能が付いているので、一本持っておくと重宝するのではないかと思う。
<記事に登場する筆記具>
・Pent×大西製作所&まつぼっくり アセテート キャップ付きガラスペン
・Pent 彩時記 ボトルインク
(2019/11/14ペンハウス追記:ペン先交換はお預かりしての修理扱いとなります。ペン先は販売しておりませんので、あらかじめご了承ください。)
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
最新の投稿
- 2020年9月18日武田健のHAPPY INK TIMEコトバノイロ「人間失格」は心の闇に寄り添った色
- 2019年11月7日武田健のHAPPY INK TIME雅な紫に魅せられて「源氏物語」
- 2019年11月1日武田健のHAPPY INK TIME短い秋を彩るインクたち ~レンノンツールバー 2019年秋季限定色~
- 2019年10月23日武田健のHAPPY INK TIME東京インターナショナルペンショー2019レポート