9月に入ったにも関わらず、相も変わらず暑い日が続き、まだ夏の疲れが完全に取れていないものだから、ぐったりしてしまうという人も多いのでは?特に今年の夏の暑さは尋常じゃなかったので、余計にここに来て疲れが出るという人もいると思う。
かくいうぼくも、この夏は様々なトラブルの対応に追われ、そのしわ寄せが一気に来て、毎日をこなすことで精いっぱいな毎日。やっと少しだけ落ち着いているこの時期が実は一番危なくて、何となく気持ち的にわさわさ感が続いている。
それでも、これからの秋~冬シーズンは個人的に好きな季節なので、なんとかその期待感だけで気力を支えているという感じだろうか。
これからの季節の楽しみはいくつかある。
例えば、秋は食欲の秋という言葉のある通り、食べ物がおいしくなる時期でもある。旬の野菜や果物もあるし、焼いた秋刀魚も想像しただけでよだれが出てくるし。
そして、少しずつ暑さも和らぎ、空気も澄んでくる。外に出た時、ここ数か月間モワッとした熱気に気後れしていたのが、そのモワッと感がぐっと減り、そんな時に心身ともに秋の訪れを喜ぶ気持ちになれるのだ。
そして、もう一つの楽しみが夜空を見る楽しみが出てくる。
季節関係なく、ぼくは夜空を見上げるのが大好きなのだが、特に秋から冬のこの時期の空は一年の中で最も美しく見える気がする。
都内では満天の星は拝めないけれども、それでも夏に比べると空気も澄んでいるので明るい星は見えるし、毎日形を変える月もくっきりと見えて、あぁ、夜空を見上げるのにぴったりな季節が来たなぁと実感できるのである。
このたびPEN HOUSEから発売された新しい万年筆はそんな秋の夜空にぴったりのデザインだと思う。
夜空を思わせるラピスラズリに魅せられて
今回のオリジナル万年筆は、インクを直接吸引するタイプのプロギアレアロがベースとなっている。以前にも同じ「PRECIOUS」シリーズを出しているが、今回のテーマは「LAPIS LAZULI」である。
「ラピスラズリ」といえば、宝石のことをあまり良く知らない人でも幸運の石として歴史的にも重宝されている石だということはわかるだろう。エジプトでは、紀元前3000年頃と推定される墳墓からラピスラズリの装飾品などが発見されており、なんとそれらは遠く離れたアフガニスタンから運ばれてきたものと言われている。
そして、「Lapis」とはラテン語の石、「Lazuli」はペルシャ語で空や青色という意味があるのだとか。
そのことを踏まえたうえで、この「PRECIOUS LAPIS LAZULI」のボディをじっくりと見てほしい。
透明のボディに施された濃紺色は、まさに秋の澄んだ夜空を彷彿とさせる。夜空といっても、とっぷりと暮れた空ではなく、これから夜が始まるぞと予感させるくらいの時刻の空の色だ。
星屑のようなラメ
さらにこの万年筆の魅力はそれだけではなく、全体に程よく散りばめられた星屑のようなラメが美しいのである。しかも、このシリーズのラメは細かいラメではなく、大胆な大粒のラメなので、はっきりと濃紺のボディにキラキラが映えるようなデザインになっている。それがまた秋の星空を彷彿とさせるのである。
天の川の一部のようにも見えるところもまたより美しさを際立てている。
ぼくはラメ入りの万年筆が好きなのは、やはり、そこに宇宙を感じ、それが壮大なロマンに続いているように思えるからだ。それを手にしているときの喜びは何物にも代えがたい。
上品なピンクゴールド
そして、この万年筆をさらに上品に仕上げているのがピンクゴールドのトリムだ。青系の軸だとシルバートリムというデザインも多いのだが、こちらは敢えてピンクゴールドで仕上げている。これにより、ラピスラズリの濃紺色が引き締まり、よりクリアな感じが軸全体に漂っている。また、ペン先に施されたおなじみのPentオリジナルの刻印にも注目。
PRECIOUSシリーズを並べてみよう
ぼくは、最初のPRECIOUSシリーズであるアクアマリンを持っているのだが、これと並べてみると、同じピンクゴールドだし、ラメの入り方も同じなので、まるで一対の万年筆のようだ。ラピスラズリが夜空だったら、アクアマリンは昼の空という感じだろうか。昼と夜で使い分けて使ってみるというのも良いかもしれない。そんな物語を感じさせてくれるというのもこのシリーズの大きな特徴でもある。こちらのアクアマリンは、今は残念ながら在庫切れとなっているが、再販されるのを心待ちにしたい。
お似合いのインク
では、この万年筆にお似合いのインクはなんだろうか?と考えた時、ぼくがまっさきに思い浮かべたのがコトバノイロシリーズの「銀河鉄道の夜」だ。この作品のモチーフである銀河にぴったりの万年筆ではないだろうか。また、偶然にもボトルに貼られたラベルの色とも相性も良い。この万年筆は、このインクにあつらえた作ったのではないか!と思ってしまうほどマッチングしている。
レアロなので、インク窓があるのだが、それがまるで銀河鉄道の車窓のように見えて、さらにそこに物語を感じてしまう。
まだまだ残暑が厳しそうで、年々秋が短くなってきているような気もして、少し憂鬱になってしまうが、でも、短いからこそ、存分に秋を楽しみたいという人も多いだろう。そんな人は今からこのPRECIOUS LAPIS LAZULIを用意して、秋の夜空を味わい尽くす準備をすると良いだろう。
<この記事に登場するステーショナリー>
・Pent×セーラー万年筆 特別生産品 プロフェッショナルギア レアロ ピンクゴールド プレシャス ラピスラズリ
・Pent×セーラー万年筆 特別生産品 プロフェッショナルギア レアロ ピンクゴールド プレシャス アクアマリン
・Pent〈ペント〉 ボトルインク コトバノイロ 銀河鉄道の夜(ぎんがてつどうのよる)
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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