独創的な発想のユニークなボールペン
万年筆を使うようになってから、すっかりぼくは普段の筆記具は万年筆ばかりになってしまったのだが、最近はボールペンも気になり始めている。
自分の好きな軸の万年筆は、同じ軸でボールペンも揃えたくなるし、ボールペンしか使えないような場面ではこだわりのボールペンで筆記したい気持ちが強くなる。
今日はそんな時にぴったりのボールペンをご紹介したいと思う。
以前もカランダッシュの夏にぴったりなトロピカルカラーのボールペンをご紹介したが、今回は同じシリーズだけれども、まったく違ったコンセプトのボールペンだ。
このボールペンは、ネスプレッソのカプセルをリサイクルして作られたもので、その発想が実にユニークだ。
カランダッシュと同じスイスを拠点とするエスプレッソマシンやエスプレッソコーヒーのメーカーであるネスプレッソはご存じの方も多いと思うが、カプセルごとに味の異なる抽出液が閉じ込められており、それを使って専用のマシンでエスプレッソやコーヒーなどを作るというシステム。その時に使用済みのカプセルが生まれるのだが、それをリサイクルして作られたのが今回のこのボールペンなのだ。
ネスプレッソは、「セカンドライフプロジェクト」と呼ばれるリサイクルプロジェクトを主催しており、昨年はメタリックスチールブルーの「ダルカン」と呼ばれるカラーが選ばれた。
このコラボのボールペンの色が独特なのは、そのカプセルカラーによるもので、非常にそれがクールで粋な感じがする。色は深い青緑色で、メタリック調ではあるが、マット加工がされているので手になじみやすく、持った時に温かみもほのかに感じられる。
849シリーズのボールペンの魅力について
849シリーズのボールペンの魅力は、なんといっても、そのシンプルな造形美にある。鉛筆を思わせる六角形の軸は一切の継ぎ目がなく、軸のノック部分(このノック部分の細かな細工もお洒落!)からペン先に向けて、滑らかなラインが続く。そして、ペン先はペン芯に向けてすぼまっているのだが、そこが実に優美。鉛筆を綺麗に削った時に、外側の塗装部分とペン芯を包む木の部分に美しい山形の模様が浮き上がるのだが、この849シリーズはそれを見事に陰影によって再現しているところがマニアにはたまらず、ずっと眺めたり、撫でたりしていたくなる。
そして、刻印にも注目したい。他の849シリーズと同じように「SWISS MADE」の刻印が入っているだけでなく、「MADE WITH RECYCLED NESPRESSO CAPSULES」のロゴも入っていて、この商品がネスプレッソのカプセルをリサイクルして作られたということがわかるようになっている。そのロゴもシンプルでさりげないので、デザインにマッチし、それも含めてこのボールペンのクールな世界観を形作っているのではないかと思う。
万年筆もそうなのだが、筆記具というのは、文字を書いている間、ずっと視界にその筆記具が目に入る。だからこそ細かなこだわりを感じられるような筆記具にこそ愛着が湧くのであるが、このネスプレッソは色といい、形といい、まさにそういうマニアックな心をくすぐる要素を持っているところが素晴らしい。
パッケージにもこだわりを感じる
また、パッケージにも様々な工夫がされている。
まず、表を見てみると、真ん中がくりぬかれており、その形がネスプレッソのカプセルの形になっているところが憎い演出だと思うし、遊び心も感じられる。そして、「This was a Nespuresso capsule.(これはネスプレッソのカプセルだった)」という英文がさりげなく入っているところも面白い。
箱はスリーブから引き出す形になっており、そこから現れるボールペン本体を包む段ボールにも実は面白い工夫がされているのだ。このパッケージも、100%再生可能なボール紙を原料としているだけでなく、なんと、接着剤を一切使わずに組み立てられているのだ。試しに底の部分を外してみると、簡単に解体することができた。こういうパッケージの細かい部分のこだわりや軸をより引き立てるデザインというのは、このボールペンのコンセプトとも合致し、そこに好感が持てる。
最近では地球の環境問題が深刻化し、それによって人々のエコに対する関心も高まっているが、こういう自分の好きな筆記具の世界でもそういう視点から製品が作られるようになったというのはとても喜ばしいことだと思う。さらに、カランダッシュのこのネスプレッソのコラボは、単なるエコではなく、それがスタイリッシュでかっこいい商品に仕上がっているところに大きな魅力があるのではないだろうか。
ネスプレッソは他にも様々な色のカプセルを出しているので、今後はぜひ、そういったカプセルも使って、いろいろなバリエーションを出して欲しいなと願っている。
実は昨年末に、2016年限定の849のボールペンがコレクションに加わり、現在9本の849シリーズのボールペンが揃った。これにこれからどんな色のボールペンが加わるのか、今から非常に楽しみで、どんどんこういうボールペンも積極的に使っていきたい。
<この記事に登場する文具>
・限定ボールペン 849 カランダッシュ+ネスプレッソ
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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