冬生まれのせいか、夏はとても苦手だ。あの蒸し暑さを考えただけで、ぞっとしてしまうほど。外をちょっと歩いただけで、じっとりと湿気を帯びた空気が体中にまとわりつき、たちまち汗だくになってしまう。しかも、建物や乗り物の中に入ると、冷房がききすぎて、汗が冷やされて寒く感じる。その繰り返しでぐったりしてしまうのである。
しかし、そんなことを言いながらも、実は夏の雰囲気が大好きだ。開放的になれるし、夏をモチーフにしたものはとてもカラフルで、ぼくの大好きな青やターコイズをベースにしたものも多い。
夏といえば、やはり海、青い空を真っ先に連想する。バリ島を始めとする南の島が好きなのも、そんな夏の雰囲気をいつでも気軽に味わうことができるから。その他にも、夏は果物が豊富なので、果物好きなぼく(特にスイカやマンゴーが好物!)には夏は食の楽しみもある。ラムネ、ソーダ水、ペンギン、花火、風鈴、サーファー、ヤシの木、などなど、夏を連想させるモチーフの入った手ぬぐいやマスキングテープなどを見ると、それだけで気分がワクワクしてしまう。
夏のうだるような暑さはうんざりしてしまうけれども、夏のアイテムは大好きだから、何とかそんな小物でごまかしごまかし、夏の暑さをやり過ごすのが大人になってからの夏の過ごし方だ。
例えば、万年筆も、スケルトンでラメの入ったものが中心になるし、中に入れるインクも涼し気なブルー系統のものがメインとなる。せめてそういった筆記具だけでも涼を感じられるものにしたいという苦肉の策でもあるのだ。
さて、今日ご紹介するボールペンはまさにそんな夏を楽しむために最適のアイテムである。
2017年に限定発売された「849トロピカル」は、色鉛筆などでも有名なカランダッシュらしい夏っぽい色を前面に押し出したユニークなボールペンだ。
カランダッシュのボールペンの代表ともいえる849シリーズは、六角形の細身のボールペンで、手にした時に、まるで鉛筆を持っているかのような感覚を味わうことができる。丸でも三角でもなく、六角形というのが文字を書くときに手に負担がかからないんだなというのが良くわかる。
さらに、カランダッシュの自社リフィルであるゴリアット芯は、ペン先とリフィールが一体となっているので、書く時のがたつきが軽減され、スムーズに書くことができるというのもまた大きな特徴である。
万年筆ばかりを使っていたぼくが、ボールペンの良さに目覚めたのも、実はカランダッシュのエクリドールシリーズを使ってからで、六角形の持ちやすさを再認識し、何本か集めてしまったほど。
その流れでよりポップな色や大胆なデザインの多い849シリーズにも興味を持つようになった矢先に、このトロピカルシリーズが発売となり、そのコンセプトとともに、ぼくはすっかりこのシリーズに魅了されてしまったのである。
全5本のトロピカルシリーズの魅力はなんといっても、その色だ。まさにトロピカルという言葉がぴったりの配色で、しかも、一本の万年筆の中に二つの色がグラデーションとなっている。これが実に夏らしい雰囲気なのだ。
いずれも夏の海辺で、あるいはプールサイドで飲んでみたいトロピカルカクテルを彷彿とさせる。
では、その一本一本を詳しく見ていくことにしよう。
パステルブルー/レモンイエロー
まさに夏のカクテルにふさわしい色合い。薄いスカイブルーから檸檬イエローへと変化するところが、涼し気で軽快な気分になる。
ミッドナイトブルー/サファイアブルー
同じブルー系のグラデーション。深みのある濃紺のブルーから明るめのブルーへと変化する様は、まるで夏の早朝の空のような雰囲気。
コバルトブルー/ターコイズブルー
これぞまさしく、ザ・夏という感じ。コバルトブルーの空と、ターコイズブルーの海の色という感じだろうか。夏のさわやかさを手中に収めた感じがたまらない!
カーマインレッド/タンジェリンオレンジ
海辺で見る夏の夕焼け空のイメージだろうか。美しくも切ない感じが見事にこのグラデーションの中に表現されている。
リーフグリーン/フューシャピンク
グリーンとピンクの組み合わせが意外な感じもするが、熱帯雨林の中で飛び交うカラフルな鳥や夏の派手やかな花のようなイメージ。
それぞれまったく違った表情を持ちながらも、トロピカルで華やかな雰囲気を持っているこのシリーズは、全色揃えて、気分に合わせて使い分けてみるのも良いし、5本まとめて持ち歩いて、そこから好きなものを選んでも楽しいだろう。
一足先に夏の気分を味わいたいという人は今からペンケースに収めておき、これらのトロピカルなボールペンを片手に、夏のバカンスの予定を立てるのも面白いかもしれない。
<商品詳細はこちら>
カランダッシュ 限定品 849 トロピカル ボールペン
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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