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趣味の文具祭会場レポート

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趣味の文具祭会場レポート

 雑誌「趣味の文具箱」が主催するはじめての文具イベント「趣味の文具祭」が、2023年9月23日(土曜日)に開催されました。この日は奇しくもフレディリック・バーソロミュー・フォルシュが万年筆の原型を考案したことを記念して「万年筆の日」に制定された日、今回の祭典に相応しい日となりました。

雑誌「趣味の文具箱」

創刊から20年、手で書くことの楽しさ、書く道具としての文房具の魅力を発信する、日本で唯一の定期刊行されている専門誌として、「趣味文(しゅみぶん)」の愛称で多くのファンから支持を集めている雑誌です。

今回、初めての「趣味の文具祭」について、統括プロデューサーである清水茂樹氏に話を伺うと、「見る」「買う」「体験する」をテーマに、他の文具のイベントとはひと味違う「深さ」が大きなポイントです、そこをぜひ楽しんでくださいと、力強く語ってくれました。

会場レポート

 「趣味の文具箱」が主催するイベントには、やはりそれに相応しい個性豊かなメーカーや文具店など29社が、会場となった東京のWITH HARAJYUKUホールに集まりました。

その中から一部になりますが、イベントレポートをお届けします。

趣味の文具箱ブース

試筆

会場に入ってすぐ左手にある「趣味の文具箱」の体験ブースが来場者を迎えてくれます。

体験をテーマに、「カランダッシュ」と「ファーバーカステル」という海外2大筆記具メーカーの色えんぴつが並び、同じ色でも書き比べをしてみると微妙に発色が異なることに気付かされます、こんな比較体験ができるのも、このイベントの魅力のひとつです。

趣味の文具箱×Glass studio Toolsオリジナルガラスペン

ガラスペン

 「趣味の文具箱」販売ブースでは、本誌のオンラインショップで取り扱っているシステム手帳などのオリジナルアイテムが並びます。

また、今回は岡山に工房を構える「Glass studio Tools」とコラボレーションしたガラスペン「TAKETORI 青山緑水」が抽選販売として登場、日本で唯一の軟質ガラスを使ったガラス吹き技法で作られるガラスペンは高級感と透明感に溢れる美しさが人気で、これを目的に足を運んだファンが多く見られました。

デザインフィル株式会社

デザインフィル

 PlotterやMD notebookなど多くのブランドを持つデザインフィルからは、誰もが憧れる「KNOX」のフラッグシップモデル「AUTHEN(オーセン)」に新しく加わった特別モデル「ブライドルレザー×ナチュラルタンシュリンク」が、どこよりも早く先行販売されて、開場と同時に多くのシステム手帳ファンを魅了しました。

KAWACOYA

KAWACOYA

 KAWACOYAは、革職人である松澤邦幸氏が2013年に立ち上げたブランドで、彼のシステム手帳を手にすると、隅々から革への思いが伝わってきます。

そんな「KAWACOYA」のブースでは、今回のイベントのために社としては初めての革「プエブロ」を使用したシステム手帳M6(リング径13mmと20mm)M5(リング径20mm)を用意、その質感はうっとりするほど魅力的でした。

私が立ち寄ったときには「イタリアンレザー」モデルはすでに完売という人気振り。個性的なシステム手帳を求めるユーザーには、目が離せないブランドです。

株式会社コクヨ

コクヨ

 2023年クラウドファンディングで目標金額5400%を達成して、大成功をおさめたWPシリーズの「ファインライナー」と「ローラーボール」が一般発売に先駆けてコクヨブースで先行展示されました。

現在受注に対して生産が間に合わないために、本会場では抽選申し込み制ということになりましたが、いち早く実物に触れて試筆することができるのは、来場されたひとたちだけのご褒美です。

Jetsetter

デルタ

 デルタのドルチェビータといえば、万年筆ファンならだれもが知る名門のブランド、2018年に惜しまれながら廃業してしまいましたが、元デルタのニノ・マリノ氏が新生デルタを立ち上げ、あのドルチェビータが復刻することになりました。

一般発売として店頭に並ぶのは、まだ先になりそうですが、Jetsetterのブースではひと足早くその姿を目に、そして手に触れることができました。

TWSBI

TWSBI

台湾のブランドTWSBIを取り扱う株式会社酒井のブースTWSBIでは、スケルトンなボディーが人気のTWSBI万年筆をはじめ、オシャレなポーチに入ったオリジナルインクを配合できるInk mazeru(インクマゼル) のキットが人気を集めていました。

基本インクが3色、それぞれのボトルのキャップにスポイトが一体化されていて、インクを変える度に洗浄する必要がない、他の万年筆インクにはない利便性を備えたキットは自分メイドの万年筆インクを手軽に楽しみたいユーザーにはぴったりのアイテムです。

TAG Stationery

olu

 京都で愛される文具店TAG Stationeryからは、新しいプロダクト「OLU(おる)」の先行販売に、システム手帳ファンが集まりました。

「折る」「織る」をコンセプトに可能な限り縫う工程を省いて作られた革製システム手帳は、M5・ミニ6のふたつのサイズとふたつカラーバリエーションで登場。

柔らかく、すっと手に馴染む「Olu」は使いやすさに加えて経年変化も楽しめる逸品、正式な販売はまだこれからということで、この会場で手に入れた方はとてもラッキーです。

Lihitop(リヒトープ)

リヒトープ

東京渋谷区に店舗を構えるLichtopeは、万年筆の調整とステーショナリーを取り扱うセレクトショップです。

万年筆を快適に使っていただくことをコンセプトに「万年筆の調整」に大きなウエイトをおいています、このイベントでも店主自ら、ブースに足を運んだ万年筆愛好家のために、1本1本を丁寧に調整をされていました。

小池新編集に聞く

新編集長

 ひとつの雑誌で20年もの間、同じ人物が編集長を務めることは出版業界では異例のこと、その後を継ぐことは、大変なプレッシャーではなかったかと思われます。

そんな小池新編集に話しをお聞きすると、編集長交代に際して「前編集長の清水さんからはぶっ壊せ」と助言をいただいたとのこと。

この20年で読者も変化して、本誌も新しい読者と共に新しい誌面づくりを進めていく事が重要としながらも、「趣味の文具箱」らしさは継続して、ファンの嗜好の変化にもしっかり対応していきますと、コメントをいただきました。

ステージ「清水前編集長×小池新編集長トークイベント」
ステージ「清水前編集長×小池新編集長トークイベント」

 小池新編集体制でスタートした2023年4月号(vol.65)では、ガラスペンを大きく取り上げたところ、新しい10代の読者からハガキが届くようになり、早くもその変化が現れたといいます、そして2023年10月号(vol.67)では王道の定番万年筆を取り上げ、新しい読者に定番文具の魅力を伝えることで、万年筆ファンを育ていくような仕組みを感じました。

小池編集長は長く、清水統括プロデューサーと共に仕事をしてきたことで「趣味の文具箱」の遺伝子をしっかりと継承して、その上で新しい風を本誌に吹き込み、これまでのファンを裏切らない、それでいて新鮮な雑誌をつくってくれそうです。

取材後記

 今回、清水統括プロデューサーから特別にプレスとしてご招待いただき、時間の許す限り会場を見て廻りました。

メーカーの枠を越えた試筆体験や、どこよりも早く見て触れることができるアイテムの数々、ちょっと訳ありでお得な価格で購入できるが故に撮影がNGなブースなど、イベント予告の情報からでは予測することができない体験がこのイベントにはありました。

今回のコンセプトでもある「深い」の意味が、ひしひしと伝わってくる「趣味の文具箱」ワールドに魅せられて、これは仕事抜きで参加したかったというのが正直な感想です。

次回は、ぜひとも関東以外の会場での開催を希望するところです。

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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