好きな色は自分で作る!ミクサブルインクに挑戦してみよう!
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好きな色は自分で作る!ミクサブルインクに挑戦してみよう!

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ミクサブルインクを使って、自分の好きな色を作るのが好きなのだが、ひょっとしたら、「2000色以上のインクを持っていながらも、まだ自分でインクを作るの?」と驚く人もいるかもしれない。
確かに、自分でもちょっとクレイジーなのではないかと思ってしまうこともなきにしもあらず。
しかし、それとこれは別、だと最近は半ば開き直っている。市販のインクはインクで、楽しいけれども、やっぱり自分で好みのインクを作るというのは、既製品にはない独特の楽しみというのがあるのだ。だから、ぼくはたくさん既成インクを持っていながらも、たまにミクサブルインクで自分好みの色を作りたくなる。
そこで、今回はそんなぼくのミクサブルインクの使い方をご紹介したいと思う。

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プラチナ万年筆から発売されている混色可能なインクは全9色。普通のインクは、濃度が違っていたり成分が色によって異なっていたりするために、混色すると色が濁ったり、インクの性質が変わってしまい、万年筆に悪影響を及ぼしたりする可能性が出てくる。しかし、ミクサブルインクは、それらの色によって異なる部分を均一化し、混ぜても変質しないように工夫がされている。
だから、ぼくたちはそれらのインクを使って、自由に自分の好きな色を作ることができるのだ。
ミクサブルインクは、現在2種類のサイズが発売されている。大きなサイズの60mlと小瓶タイプの20mlだ。ぼくはユーミンこと松任谷由実の大ファンで、彼女の曲をイメージしたオリジナルインクを作ることをライフワークとしているので、大きなサイズをメインで使っているのだが、今回、初めて小さいボトルで混色をしてみてわかったことがある。

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ボトルの形も工夫されていて、とてもスタイリッシュなのだが、小瓶だからこその良さがある。それは、気軽に扱えるということだ。
大きなボトルは丸みがあって、しかもボトル自体が大きめなので、どうしても場所を取ってしまう。しかし、ミニボトルはひし形になっていて、場所もそれほど取らない。だから、思いついた時に、さっと自分の混ぜたいと思ったインクのボトルを取り出して、混色作業をすることができるのだ。

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では、具体的にぼくがどのように混色作業を行っているのかをご紹介しよう。
まず、必要なものは、混色するためのインクボトルと、そのインクを吸い出すスポイト、そして混色作業で使うパレットだ。スポイトもパレットも100円ショップで購入することができる。さらに、色を混ぜるためのガラス棒やすぐに洗うことができるガラスペンもあると便利だろう。

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インクを詰めるためのボトルも必要となる。
少量で良ければ、最近はインクマニアの間で使われているタミヤの10ml用のガラスの瓶が便利だろう。また、プラチナのミクサブルインクのミニガラス瓶もインクの入っていないボトルが発売されているので、それだと20mlのインクを作ることができて便利だし、既存のインクと一緒に並べることもできる。

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そして、もう一つ大事なのがデジタル計量器だ。

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混色をする時、目分量で何となく混ぜて、自分の色を発見するというやり方もあるだろう。しかし、これでは正確な分量がわからないために、二度と再現することができなくなってしまう。
せっかく自分の好みの色を作れたのに、再現できないのでは意味がない。その再現性を高めるために必要なのがデジタル計量器なのだ。

ぼくが愛用しているのが測りのメーカーで有名なTANITAの計量器だ。これは液体を測ることができる(ml表示に切り替えられる)し、0.1ml単位で細かい数値まで測ることができるのが大きな特徴。それによって、再現性がぐんと高まり、好きな色を何度でも作れるのだ。

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自分の作りたい色のイメージが決まったら、それを基に実際にインクを混ぜていくのだが、実は混ぜる作業よりも、「自分がどんなインクを作りたいか」というのを明確にしないと、なかなか次に進まない。ぼんやりとこういう色と思っていても、9色のインクを見ていると、自分は何を求めているのかがわからなくなり、混乱してしまうことも多々ある。そして、インクと真っ白なパレットを前に、困惑してしまうのだ。

逆に言えば、自分がどんな色のインクを作りたいのか、どういうコンセプトで色を作るのか、ということが明確であれば、もうほとんど完成したも同然。あとはそのイメージに沿って試行錯誤しながら色を混ぜていけばよいのだから。

基本的にぼくは緑に青が混ざったようなターコイズ色が大好きなので、今回はちょっと実験的にそういうターコイズ色をまず作ってみた。

ミクサブルインクでターコイズ色を作りたいと思ったら、ブルー系のAQUA BLUEか、AURORA BLUEにグリーン系のLEAF GREENを混ぜることになる。今回ぼくはAQUA BLUEとLEAF GREENを混ぜて明るめのターコイズブルーに挑戦。

まずは、AQUQ BLUE1に対してLEAF GREENを同量の1を入れて混ぜてみた。この時の「1」というのは、スポイトで1滴ということだ。同じ割合で二つの色を混ぜたのがこちら。

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次にAQUA BLUEをもう1滴加えて、2:1にしてみる。ほんの1滴加えただけで、明るさがぐんと変わってくる。

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さらにAQUA BLUEを1滴ずつ足していくとこんな風に変化していく。

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画像だとPCの環境によって実際の色と少し差異が出てきてしまうので、もし自分が気になる色があったら、自分でこのようにして基準となる色の混色サンプルを作っておくと良いだろう。

そうすることによって、ここに別の色を混ぜたり、片方の色を増やしたり減らしたりしながら、理想の色を追求しやすくなる。

今回、ぼくが作ろうと思った色は、北海道をテーマにした色。実は、11/27-30にユーミンのコンサートを見るために札幌に行くので、それに合わせた色を作りたいと思った。夏の北海道は何度も行ったことあるのに、冬の北海道は初めて。そこで、冬のイメージの色を作りたいと思った。
じゃあ、冬のイメージの色というのは、いったいどんな色か?
それを考えるのが楽しい。
北海道といえば雪だけれども、インクで白を作ることはできない。
じゃあ、どんな色が良いのか。
ぼくがイメージしたのは薄めのブルーだ。セーラーのSHIKIORIにも「雪明」という名の美しいブルーがあるけれども、あれとはまた違った感じの薄いスカイブルーを作りたいと思った。

さきほどぼくが調合した中から自分のイメージに近いものを選び、そこに色を加えていく。その作業を繰り返しながらインクの名前を考える。それもまたミクサブルインクの醍醐味。

その制作過程がわかるのがこのノート。

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このノートは、ミクサブルインク専用のノートなのだが、自分が今どの配合でインクを作っているのかがわかるようになっている。ミクサブルインクを実際にやりたいと思ったら、このメモを取るのは習慣化して欲しい。あとで書けばよいや、と思っていると、だんだん何がなんだかわからなくなってくる。だから、面倒でも、1滴増やすごとにどの色をどれだけ加えたのか、ということをメモしておくようにしよう。

色を加えたら、それをガラス棒などで混ぜ、それをガラスペンで試筆する。そこで色を確認し、納得のいくまで調合を繰り返すのだ。インクは足すことはできるが、一度混ぜてしまったら色を減らすことはできないということも頭に入れておこう。そういう場合には最初から作り直すことになる。

さて、色の配分が決まったら、今度は調合だ。
配合を基に、どのインクを何ミリにするのかを決める。
たとえば、3色のインクを1対1対1の配合と決め、10mlのタミヤ瓶に入れるとしたら、3mlずつ3色を混ぜていけばよい。

今回のぼくの配合は以下の通り。

インクカラー 比率
QB(AQUA BLUE) 10
AB(AURORA BLUE) 1
LG(LEAF GREEN) 1
DL(薄め液) 30

もしこのままmlで作ってしまうと40ml以上になり、使い切れないので、これを半分の分量にしてみた。つまり下記の通りのレシピになる。

インクカラー 配合量(ml)
QB(AQUA BLUE) 5ml
AB(AURORA BLUE) 0.5ml
LG(LEAF GREEN) 0.5ml
DL(薄め液) 15ml

これで合計が21mlだ。
20mlはオーバーしてしまうが、プラチナのミニボトル20mlは少し余裕があるので、+1mlぐらいは許容量となる。

そのレシピを基に、空のボトルを計量器に乗せ、慎重にインクを足していくのである。

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ボトルにインクを詰め込んだら、いったんキャップをして、良く振ってかき混ぜる。そして、混ざったインクを再びガラスペンなどで試筆をしてみよう。

パレットで作った時には一応目安として1滴ずつ混色していったが、その時と色味が少し違うことが稀にある。それは、1滴の分量がごくわずかではあるが、違っているから。その場合は、ここで最終調整を行う。ぼくがタニタの計量器を使うのは、0.1ml単位で色を足していくことができるから。青みが足りないと思ったら、QBかABを0.1mlずつ足していけばよいし、もう少し緑を強くしたいとおもったらLGを0.1mlずつ、さらに色を薄めたいなら、薄め液を同じように0.1mlずつ足していき、最終調整を行う。そして、その最終的なそれぞれのインクの量がレシピとなるわけだ。

今回は上記の配合で自分のイメージにぴったりの色が出たので、ぼくはこの配合で決定をした。

最後にボトルにシールを貼ることも忘れないようにしよう。たくさんインクを作ると、どれがどれだかわからなくなるからだ。ぼくが使用しているのは、パソコン用のシールで、QRコードを印刷するための2cm四方の正方形型のシールを使っている。これにインク名を書いたり色を塗ったりしてボトルに貼れば完成。

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自分の思い通りの色を作るのはとても楽しいし、色を混ぜながら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返し、さらにネーミングを考えるのもまた至福のひと時。

ぜひ、まずは手を出しやすいミニサイズの色を揃えてミクサブルに挑戦してみてはいかがだろうか?

ただし、ついつい夢中になり過ぎて、寝食を忘れてしまう可能性が大なので、その点だけは気を付けて欲しい。

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<記事に登場する文具>
ミクサブルインク ミニ 水性染料インク INKM-1000 20ml入り
ミクサブルインク 水性染料インク INKM-1200 60ml入り
ミクサブルインク ミニ用 エンプティーボトル【空インク瓶】 IGVM-500 20ml入り
ミクサブルインク ISV-1200 万年筆インク調合キット(うすめ液、空ボトル、スポイト)

この記事を書いた人

武田健
武田健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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