これからの季節におすすめ!絵画的魅力にあふれた魅惑の万年筆
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これからの季節におすすめ!絵画的魅力にあふれた魅惑の万年筆

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万年筆を選ぶ時、ぼくはまずデザインを重視する。書き心地や持った時のフィット感というのも大切だが、一番はやはり軸の色だとかその軸にあしらわれた模様などが気に入るかどうか。
文字を書いている時に、必然と視界に自分の手と軸が入ってくる。その時に気分が高まり、さらにそれによってもっと書きたい!という気持ちが強くなったり、字を丁寧に書こうという意識が働いたりするのではないだろうか。
だから、万年筆の軸の模様というのは非常に大切なのだ。

ぼくが主にイタリアの万年筆が好きなのは、イタリアの万年筆の軸の色は、他の色にはない独特の色が多かったり、デザインが斬新だったりするから。
もう生産が終了してしまったデルタにせよ、オマスにせよ、いずれもシンプルでありながらも、どこか心をくすぐる軸が多いし、ヴィスコンティに至っては、もう芸術品としか言えないような軸を出してくる。アウロラのいくつかのシリーズは細かいディテールまで凝っていて、眺めているだけでも楽しくなる。

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二年前に廃業してしまったオマス。独特のマーブルラメが美しいボローニャシリーズはシンプルなのにずっと魅入ってしまう。

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デルタは他のブランドにはない独特の個性が感じられる軸が多い。コレクションする愉しみもあるし、書いていてワクワクするのはデザインの秀逸さによるところが大きい。

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4年がかりで集めたアウロラの大陸シリーズとマーレシリーズ。細かいディテールが楽しい。

そういう点でドイツのメーカーの万年筆というのは、質実剛健なのが多い気がする。シンプルだし、すっきりしているけれども、奇抜さはない。
ところが、ペリカンは最近ちょっと路線を変更しているような気がしてならない。夏に出たm600のホワイトターコイズもそうだったが、面白い色の軸を出してくるようになった気がする。
ぼくは勝手にオマスとデルタの代わりに、ペリカンががんばっているからなんじゃないか!と妄想しているのであるが…。

イタリア万年筆が好きだと言いながらも、なぜか最近、ペリカンも手元に集まってきているのは、そういう勝手な妄想によるものなのかもしれない。

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とはいうものの、最初はペリカンぐらいは基本的に持っておいた方が良いだろうという軽い気持ちで、まずは手を出しやすいM215のトラディショナルを購入し、そこから少しずつM400、M600と増えていった。

皆さんもうご存知だとは思うが、ペリカンは軸の長さ太さが大きくなると、型番号が大きくなる。だから、自分の手にぴったりの軸がみつかると、もうそれを手放せなくなってしまうのだ。
ぼくはそれほど手が大きいというわけではないのだが、かといって小さいというほどでもない。男性にしては普通の手のサイズだと思う。そうなると、どうしてもM200だとどうしても小さく感じてしまう。持てないこともないけれども、ちょっと違和感を覚える、という程度。

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それがM600くらいになるとかなり手にフィットしてくる。持っていてまったく違和感がないのだ。そして、M800はフィット感だけではなく、ずっしりとした存在感を得ることができる。いかにも「万年筆を持っている」という気持ちになるのだ。

M800はフィット感だけではなく、その大きさゆえの楽しみがある。それは、大きいだけに、軸の模様をたっぷりと堪能できるのだ。これはまだぼくが手にしていないM1000にも言えることかもしれないが、とにかく軸が大きいと存在感もあるし、手にした時に視界に入ってくる部分も小さいサイズのそれよりも増える。そのために、愛でる時間が長くなってくるのだ。

ぼくが初めてM800を購入したのは、完売してしまった「グランプラス」からなのだが、この軸を手にした時の感動は今でも忘れることができない。それを知っているからこそ、これからもM800はできるだけ集めていきたいなと思ったのである。

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そして、その後、「ヴァイブラントブルー」、「ルネサンスブラウン」、「オーシャンスワール」と順調に揃っていった。

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そんなペリカンからまた面白い軸の万年筆が出た。それが今回ご紹介するm800「ストーンガーデン」だ。

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最初このことをお店のチラシで知ったのだが、そのチラシの写真ではあまり面白さが伝わってこなかった。確かに軸の部分は複雑な面白い模様が入っていて面白そうだけど、キャップや軸のお尻の部分が黒っぽく見えて、そこが気になったのである。
ところが、実際に見てみると、これがまったくの大違い!
軸以外の部分の色は黒ではなく、濃紺なのだ。それも軸に組み込まれた青い部分と同じトーンの青さで、そのマッチングが実に素晴らしいと感じた。

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もう少しじっくりと軸の部分を観察してみると、今までにないような独特の模様だ。「グランプラス」のようなマーブル模様ではないし、「ヴァイブラントブルー」や「ルネサンスブラウン」のような大理石柄でもない。「オーシャンスワール」みたいな変化のある独特の柄とも違っている。それまでにはないようなユニークな柄、それが「ストーンガーデン」の面白さだと思う。まさに様々な石をクラッシュして埋め込んだような、そんな軸。だから、光の反射によって全然見え方が変わってくるし、角度によっても印象ががらりと変わる。軸を見ていると、まさに石の庭園に紛れ込んだような、そんな気持ちになるのだ。

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また、じっと見ていると、抽象画的にも見えてくるから不思議だ。万年筆そのものは立体だし、丸みを帯びているので、そこから直接的に絵画のような二次元的なものを見出すことはできないのだが、軸の模様が、スクラッチのような効果を出しているために、キャンバスに絵が描かれた様を連想させ、それが絵画的に感じるのかもしれない。そんなことを思いながらこの「ストーンガーデン」を愛でてみるというのも面白いのではないだろうか。まさに芸術の秋!という感じで良いと思う。

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ペリカンは比較的字幅が太めなので、細めのFを選ぶことが多いのだが、今回はMを選んでみた。何となくこれだけ存在感のある万年筆だったら、太めの文字でがっつりと文字を書くというのも良いのではないか、という気がしたからだ。
個体差もあるが、この軸のMは意外にもそんなに太くもなかったので、それはそれでラッキーだったのかもしれない。

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手元に集まったM800シリーズをずらりと並べて、今月はどの万年筆とお付き合いをしようかと思って一本を選ぶのは至福のひと時。これからもそんなささやかな幸せを味わえるような軸が発売されることを心待ちにしている。

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ちなみに、先週からぼくが持ち歩いているのが、「ストーンガーデン」と「オーシャンスワール」の2本。何となくこの二本の組み合わせがこれから来る冬を予感させるような色のような気がして、そんな気持ちを高めるためにこの2本を交互に使っている。

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<記事に登場する万年筆>
ペリカン 万年筆 特別生産品 スーベレーン M800 ストーンガーデン
ペリカン 万年筆 特別生産品 スーベレーン M805 オーシャンスワール
ペリカン M215 万年筆
ペリカン M400 万年筆
ペリカン M600 万年筆
ペリカン M800 万年筆
ペリカン M1000 万年筆

※オマス、デルタ、アウロラ大陸シリーズ・マーレシリーズ、ペリカングランプラス・ヴァイブラントブルー・ルネッサンスブラウンは完売となっております。

この記事を書いた人

武田健
武田健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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