
今月は立夏小満に沿って、Pentオリジナルインク、
彩時記やコトバノイロのお色見本を中心に、
ペンハウス取り扱い商品をご紹介します。
え、もう梅雨入り?と驚く5月、どうぞよしなに。
初夏のきざし、緑ますます濃いこの時期、
街路樹によくつかわれるクスノキ・タブノキは小さな花を咲かせています。
実はアボカドもこの両樹木の仲間のクスノキ科。
樹木医・櫻井健太氏の花とつぼみの画像を参考に、
この木に良く集うチョウも描いてみました。

用紙:SAKAEテクニカルペーパー・新トモエリバーFPハードカバーA5ホワイト5㎜ドット
使用インク:Pent:コトバノイロ・みだれ髪
IWI:Color of Nature夏コレクション・立夏・小満
Gペン:立川ピン製作所・タチカワGペン特上品
ガラスペン:寺西化学工業株式会社・ギター・オーロラロング・キャップ付き・ジェリーレッド
色鉛筆:ぺんてる・芯ホルダー マルチ8セット
油性ペン:立川ピン製作所・タチカワミリペン・ファインポイントシステム
アサギマダラやアオスジアゲハは、都心部でもよくみかけるチョウ。
蜂の多い田舎山間部よりも、都会のほうが天敵も少なく、
5月おわりから初夏にかけて、水たまりなどにいるチョウの群れは
意外とよくみられます。
タブノキの黒い実、その味はうっすらとアボカドに似ているそうですが
人間の味覚向きではなく、
鳥たちの好物だけにとどめておいたほうが宜しいようです。
※※※※※
5月29日没の歌人・与謝野晶子。
「晶子忌」「白桜忌」とも呼ばれ、晩年好んだソメイヨシノから。
この歌人の「うたごころ」はつねに清濁併せて話題性に富み、
一世を風靡し続けてきました。
処女歌集「みだれ髪」。
たっぷりと艶やかな髪を「みどりの黒髪」とあらわす素敵なことば、
現代ではかなり遠いものとなりました。
本来は、新芽のようなつやつやした、たっぷり若々しい黒髪の表現。
以前の記事でも書きましたが、
「みどりご」と同じく、「みどり」とは若葉あらわす色だけでなく、
「うまれたての生命力、若々しさ」をあらわしています。


両親から疎まれて育った晶子にとって、文学の世界に入る瞬間こそが
「自分の唯一の居場所」であったはず。
8歳で漢学を学ぶ才もありながら、実家での負い目や引け目の生活の中、
女学校での文学接点がますます晶子の拠り所となり、
存分に才を開かせ、いきいきと筆をふるう姿は、
ついには与謝野鉄幹の目にとまるように。
「わたしが世界に対して我慢しなくていい、
世界がわたしを見つけてくれる」、
まさにそんな万能感を感じながら、
新しい人々との世界に踏み出していきます。
紆余曲折ののち、与謝野(浮気性)鉄幹の妻に。
文学サロンに夫婦揃って顔を出しているうちに、
「新しい女性」として地位を確立し、
夫・鉄幹以上の評判を得てしまいます。
日々くさる夫や、時に起こる自分へのバッシング、
子供を置き去りにしての洋行、
女性活動家とのいざこざも、下衆な醜聞も、どんな苦境下でも
「うたごころ」こそわたしの生きる世界、
これさえあれば何もいとわず、と
すべてに立ち向かう(?)様が、ほんとうに生命力強すぎます。
文学表現への執着、夫への執着こそ、晶子自身の生きる力。
ねっとり濃い言葉の選び方も、確実に読者を意識したうえで、
自身を表現するプロデュース力に脱帽します。


併用インク:Pent・彩時記・青緑
与謝野晶子「五月礼賛」より抜粋形式にて。
初々しいなかにも女の情念たっぷりめな「みだれ髪」当時とくらべると、
その後の人生世界観のひろがりが年齢と共にあることを加味しつつ、
やはり「女性として生きる」ことのよろこびに満ちた、
晶子らしいうたごころに、生命力の強さを感じます。
コトバノイロ「みだれ髪」の濃い深緑からあわい灰緑の変化が
五月雨を含む空模様と、彩時記「青緑」のあざやかな色味の爽やかさを使い、
五月新緑あらわす色でさまざまな文学のことばを。




※※※※※
新商品「jishoru」
しっかりした上製本仕様の高級ノート。
自分好みに育て上げる育成ノートです。



50音順の項目は、何をうめていこうかとワクワク!
手持ちの文具や画材を使って、すきなものをひとつずつ埋めていきます。


製品によっては水性インク筆記具や水分多めの万年筆インクでは
滲みや裏抜けがあることも…
軽量化した紙の宿命ではありますが…

…にじみ。泣。(万年筆ユーザーあるある)


そんなときこそ「ガンヂー・インキ消し」!
以前の記事では、色抜き絵画表現として塩素をつかいましたが、
同じ効果を持つこのキットで今回は「字消し」として。
この両液方法は紙によっては荒れるので、
そっと、すこしずつ試していきます。
インクによっては完全に消えない時もあり。
今回はちょっと紙肌が荒れちゃったけど、
どなたかにさしあげるものでもなく、
自分だけのノートだし良しとします。




紙肌が繊細なので、字を消したあとは念のため別筆記具、
ゲル状硬化インクのアクアリップにて。
うまく上書きできました。安堵。
滲み&裏抜けた部分はシールをいろいろ貼って、
このページも「育てて」いきます。
ほんのり下に残った前の万年筆インクの色も
「ノートを育てている」過程のひとつとして思い出に!します!
次ページに線が透けてしまっても、
次回の描きこみ下絵線として利用予定です。
(つぎはどんな蝶を入れようかな、と次に書く時間が楽しみ!)
記憶の記録、新しいこととの出会いや下調べ、
自分の「好き」とむきあう時間がたのしい「jishoru」です。
色にいざなわれて開ける扉の向こうにひろがる、
濃く淡く美しい万年筆インクやさまざまな筆記具、紙の世界。
文具の楽しみの入り口となれば幸いです。
わたくしの住む山間の谷間は標高720m。
新緑にぎわうこの時期は、蝶も鹿も猪もいるどころか、
それ以上にニホンザルの楽園です。
最近は共働き親猿が多いので、子ザルは幼稚園・小学1~2年くらい年齢でそれぞれ20匹ずつグループを作り、
「先生猿(目つきコワい)」の引率の下、人間様の罠をクリアして畑を荒らすという社会科実習の毎日。
鳥獣戯画、甲乙丙丁巻の次の戌己庚申が描けそうな知恵比べ&根くらべな朝比奈斎(ライフル式BB弾を構えて気分はデューク東郷。俺の後ろに立つな)でした。ではまた。
<登場インク>
・Pent〈ペント〉コトバノイロ みだれ髪
・Pent〈ペント〉彩時記 青緑
・IWI Color of Nature 夏コレクション
<Jishoruの詳細はこちら>
・archshop(アーチショップ)辞書式ノート Jishoru
朝比奈さんからのお知らせ
◆絶賛更新中!X(旧:Twitter)
@asahinaitsuku
◆新たに開設しました!Instagram
@asahinaitsuku
◆目下鋭意準備中!
朝比奈斎の玉石参房
※別ページへ移動します。
この記事を書いた人

-
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」
Twitter:@asahinaitsuku
Instagram:@asahinaitsuku
最新の投稿
- 2025年5月21日朝比奈斎の玉石参房玉石参房 第四十房 MAY立夏小満―生き続ける力・存在意義―
- 2025年4月23日朝比奈斎の玉石参房玉石参房 第三十九房 APR清明穀雨―春色繚乱いろいろな文具の色―
- 2025年3月19日朝比奈斎の玉石参房玉石参房 第三十八房 MAR啓蟄春分―蕾は春の調べをゆっくりと―
- 2025年2月21日朝比奈斎の玉石参房玉石参房 第三十七房 FEB立春雨水―風花よ、なごり雪よ―