世界の筆記具ペンハウス
文具好きの小部屋

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

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「心が落ち着くのはどんな瞬間ですか?」
そう聞かれたら、迷わず「書いている時です」と答えると思います。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

幼い頃から“書く”ことが大好きな子どもでした。自分では全く意識していなかったけれど、思えば小学生のときも、中学生、高校生のときも、そして大人になってからも、たくさんの時間を“書く”ことに費やしてきました。もちろん嫌々ではなく、喜んで。

勉強が好きだったのも、ノートを取るのが楽しかったから。もし、ノートを使わずタブレットだけで授業が進んでいくような時代に生まれていたら、私はきっと勉強を好きにはならなかったでしょう。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

友達との交換ノートを書くのも大好きでした。今思えば、あんなに何冊ものノートに毎日よく書いていたなぁと驚きます。1日に2、3冊書くのは日常茶飯事。その日にあった出来事や思ったこと、本当に他愛もないことを1ページか2ページにツラツラと綴っていくのだけれど、きっとそれが当時、心落ち着く時間だったのだと思います。学校で顔を合わせるし、「会って話せばいいじゃない?」と思うところですが、違うんです。書き綴ったものを回して読むのがいいのです。

中学生のころから、手帳(スケジュール帳)にもこだわっていました。中学1年生のときからファンシーなミニ6穴のシステム手帳を肌身離さず持ち歩き、リフィルを交換して楽しんだり、そんなに予定もないだろうに何かを一生懸命書き込んだりしていました。それから20年ほど経った今でも手帳には並々ならぬこだわりがあります。手帳に書き込みながら頭を整理する時間は、私にとってなくてはならないものなのです。

どうしてこんなに、書くことがすきなんだろう?

「私って、どうしてこんなに書くことが好きなんだろう?」

大人になり、文房具に関する仕事をするようになってから、ふと、不思議に思いました。

古い記憶を呼び戻してみると、頭の中に浮かんできたのは、おじいちゃんが字を書いている姿。

そう、私の父方の祖父は、文字を書くことが大好きな人だったんです。

おじいちゃんの周りはいつも、自筆の文字で溢れていました。電話番号のメモや買い物の覚書きのようなものから、日記やノート、はがき、書道を練習した半紙まで。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

おじいちゃんは字がとても上手でした。ふとメモを取り出してすらすらと書き出されていく文字がとても美しく、鉛筆や筆が、なめらかに紙の上を滑る様子をよく覚えています。

趣味で始めた書道も、晩年は師範になって他の人に教えるほどの腕前になっていた祖父。私もそんな祖父の影響で、幼い頃からお習字の教室に通っていました。最初は通うのが嫌だったけれど、練習を始めるとなぜか集中してしまうんです。そのうち、美しくて流れるように字を書けるようになるのがどんどん楽しくなっていって、なんとなくおじいちゃんの気持ちがわかった気がしたものです。

おじいちゃんが愛用していた万年毛筆

祖父が他界して数年。私が大好きな文房具に関するお仕事ができるようになって、しばらくしたころ、父が「おじいちゃんが使っていたものだよ」といって見せてくれたのが、この万年毛筆です。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

いつも近くに置いて使い込んでいたという、開明の万年毛筆。はがきの宛名や祝儀袋に名前を書く時などに活躍していたそうです。

愛用していたのが万年毛筆というところが、とてもおじいちゃんっぽくて、なんだか嬉しくなりました。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~
開明 万年毛筆スタンダード(写真上)とおじいちゃんの万年毛筆(写真下)

それからしばらくして、私もおじいちゃんが使っていたものと同じ型の万年毛筆を手に入れました。高級イタチ毛でつくられた穂先は、しなやかでまとまりがよく、日常使いにちょうどいい太さ。本物の書き心地を味わえます。穂先は傷んでしまったら簡単に交換もできます。

開明の万年毛筆スタンダードはショートサイズでカジュアルにつかえる形状ですが、より高級感が欲しければ、呉竹のべっこう調の万年毛筆もおすすめです。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~
呉竹 万年毛筆 本毛 DW141-50 べっこう調 金

こちらもイタチ毛が使用されており、しっかりした桐箱入りなので記念品や贈答用にもぴったりです。

書くことが好き。~原点はおじいちゃん~

これまでは筆文字を書く時も安価な筆ペンで済ませてきてしまった私ですが、今後はおじいちゃんと同じように、この万年毛筆を大事に使っていきたいと思います。

<この記事に登場する文具>
開明 万年毛筆スタンダード
呉竹 万年毛筆 本毛 DW141-50 べっこう調 金

この記事を書いた人

福島槙子
福島槙子
文具プランナー。ウェブマガジン「毎日、文房具。」副編集長。
文具のある生活を企画・提案し、ひとりひとりの暮らしやニーズに合った文具の選び方・楽しみ方のアドバイスをしている。 文具の魅力を体験できるワークショップの開催、文具売り場の企画や商品開発コンサルティングなども行う。著者に「まいにち ねこ文具」(Pヴァイン)。共著に「もし文豪たちが現代の文房具を試しに使ってみたら」(ごま書房新社)。
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