おわあ、こんばんは。
萩原朔太郎「月に吠える」猫気分だったり、
自意識過剰な『山月記』の虎気分で悶えたり。
月を愛でる良い時節となりましたね。
「月が綺麗ですね」
…誰だ、君は。
残念ながら漱石は言ってませんぜ。
(そもそも、あの御仁の性格では言わんじゃろ。)
月の美しい時期になると毎回、
「漱石が言ったという都市伝説」がまことしやかに囁かれ、
いつのまにか「漱石said」信奉勢が増えてきているので、
そのうち国語便覧にもしれっと載って
「既成事実」になってしまうのではないかと。(南無)
人の口の数によって、言語も歴史もゆるりと作られていくわけだから。
「とかくに人の世は住みにくい。」
杞憂はさておき、
月にまつわる文献をいろいろ紐解いていくと、
アルティミス(ギリシャ神話)
ディアナ(ローマ神話)
月読命(古事記)など月を司る女神や男神が
世界にわんさかあらせられる愉しさよ。
月題材の文献や音楽など諸事文化ごった煮脳細胞・飽和状態の
朝比奈斎(容量超過で停止中。)が
「琥珀月」のお色見本を作ります。どうぞよしなに。
クイーンセレニティ(月野うさぎのアレ)
千年女王(雪野弥生・メーテル母)やら
輝夜姫&月の子&ミルキーウェイ関連(清水玲子)など
創作物(漫画アニメ類)の個人的だだ漏れ連想暴走が始まりかけておりますので、
すべての創作物、「物語の出で来はじめの祖(おや)」
と紫式部女史のお墨付きの日本で一番古い物語より、
クライマックスのシーンを「琥珀月」のインクで書きました。
用紙:ナガハシ印刷株式会社・カミアウⅡ・ビューコロナ手帳用
万年筆:PILOT CUSTOM74・C特太字
ありとあらゆる物語設定のレジェンド『竹取物語』から、
かぐや姫が人の心をなくす場面。
月を眺めては、義両親との別れのつらさの落涙、
あんなにおびただしかったのに、
お迎えの天人から(怪しい)丸薬を飲まされ、羽衣着させられると
スンッと一瞬で人間界での情(心)を失くしてしまう、
とてもえげつない残酷シーンです。
カイル・ブロフロスキーのあの有名な罵声
「この人でなし!」が脳内に響きます(サウス・パーク)
帝の不意打ち訪問で顔を見られた挙句、拉致されようという状況で
とっさに隠れる場所がないため、やむなく姫がとった奥の手は!?
自ら発光。
え?
…発光…?
↑
とってもアベンジャーズ的な光の目潰し。
切羽詰まったときに開花する主人公の能力は、
少年漫画やアメコミ、SF作品諸事の常套句です。
Youは何しに下界へ?
え、流罪で地球に? なにやらかしたの一体!?
というか「なにもしていない(未成熟)」だから
下界で人の心を(現地人間を巻き添えにしてまで)
勉強して成長してこい、と?
「この人でなし!」(再)
一緒にいるはずの悲しみにうちひしがれる翁媼はじめ、
一切のモブの表現がごっそり皆無。
書かれていないからこそ、その絶望感と臨場感と、
読んでいるこちら側の「もののあはれ」が見事に発動されます。
エピローグでの帝が、
不死の薬を未練なくあっさり富士山で燃やさせる表現も秀逸です。
(どこぞの皇帝たちは不老不死に躍起となっているのに。)
この帝もそもそも、人外発光体の姫を直視してるのに気味悪がらず
「ますます手にいれたい」と懸想&3年にわたる交際開始。
すごい性癖性格です。
『竹取物語』作者エグい。
幼少時に呼んだ「かぐや姫」絵本イメージとは異なる、
この時代の姫にしては突拍子もない性格。
前回紹介した「堤中納言物語」の「虫愛づる姫君」の何倍も強烈です。
さすがレジェンド、物語の祖(おや)!
「絶対結婚なんか嫌だからね!」との難題ふっかけ諸事、
(一人目の目的未達成死亡者出てもまったく平気、
二人目死亡者には「ちょっとかわいそう」と思い始める)や
宮廷キャリアウーマンのマウント合戦にもひるまない
口達者(禁じ手の「死ぬ・殺せ」連呼)などが、
「…え、こんなエキセントリックな人だったっけ?」
と斬新です。まさにLunatic…。
しかも姫、ラストは自分だけさっさと記憶消しちゃう設定、ほんとうに残酷なラスト。
映画『MIB』のニューラライザーみたいに翁媼の記憶も消してあげたらいいのに。
ところで2021年、閃光でマウス脳の特定部位の記憶消去実験が成功したとのこと。
千里の道も一歩から。科学の日進月歩はあなおそろしきものなり。
『竹取物語』より約300年前の時代に、
月について和歌を残した人たちのなかから
柿本人麻呂の作品を。
和歌や漢詩題材では、夜間に月と向かうあうことで、
離れた恋人や故郷の人々を思い、
自分の中の寂しさや人生のはかなさを詠うものが多いです。
闇にうかぶ優しい光に照らされると
自分自身を見つめる静かな時間がはじまります。
ここでは写実と自然賛美、美しい夜空を見つめるキラキラした目と、
素直に想像の翼をはためかせる、美しき「少年の心」よ。
月の満ち欠けの呼び名について、
日本語と英語で表記しました。
太古より地球上どこからでも見られる月の姿に
洋の東西問わず、人々は夜ごと魅了されてきました。
そしてこれからも、夜空の月を仰ぎ、心打たれる未来が続いていくことでしょう。
大昔の人間とおなじように、未来の誰かも自分の心と向き合っていくのです。
用紙:SAKAEテクニカルペーパー・イロフル
Gペン:GeckoDesign・デビルディップペン・Gペン版
併用インク:彩時記「月鈴子」
八木重吉の詩「月」を彩時記2色で書きました。
前回紹介の「月鈴子」の深い茶色と、
「琥珀月」の落ち着いた琥珀色がしっくりとなじみます。
クヌギ林は、日光が地表に届く手入れの行き届いた雑木林。
昆虫はじめ、生き物が多く集う歩きやすい林。
月明り差し込む林の中の自分と、夜明け前の刻々と変わっていく空と月の色。
それに呼応するような、自分のなかの心の変化と、すっきりとした決意。
夜が次第に朝になるにつれて、月の色も淡くなっていく間に、
日常の歯がゆさや悩みを、月をとおして内省するうちに
「なにが一番大切なのか」と前向きな答えをだす姿勢が、
静かな時間のなかでゆっくりと構築されていきます。
用紙:ナガハシ印刷株式会社・カミアウⅡ・ビューコロナ手帳用
使用画材:東山マスキングライナー
琥珀色の月を、琥珀色のインクで楽しんだ(校了)あとは、
琥珀色のお酒とともに、ゆっくりと夜空を楽しみたいと思います。
月に向かって乾杯。
きりりと冷え始めた秋の夜空にうかぶ琥珀月。
地上に近いからこそ限定的に見ることのできる琥珀色の月は、
わたしたちにゆったりとした「月夜の時間」を与えてくれます。
箱もインク名も世界観も美しい、自然の色を体現した「琥珀月」
インクの様々な楽しみ方の入り口となれば、幸いです。
太陽の閃光とは一線を画す、
やわらかな反射の月の光でゆるやかに、
消したい記憶は万単位でありますぜ。
「月の光は愛のメッセージ」
セーラームーンコラボの化粧品等がでるたびに、財布の紐を全力で締めて
無駄な抵抗をする朝比奈斎(推しはセーラーマーキュリー)でした。
ではまた。
<今回のメインインク>
・Pent〈ペント〉 ボトルインク 彩時記 秋~autumn~ 琥珀月(こはくづき)
この記事を書いた人
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憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」
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