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玉石参房 第一房「雪月夜」~三好達治の「雪」と線の濃淡編~

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朝比奈斎(あさひな・いつく)です。はじめまして。
万年筆インクや種々画材、Gペン筆ペン万年筆ガラスペン綿棒等で
文字や絵などの、よしなしごとを書いています。

今月はペンハウスオリジナルインク
「彩時記」より【雪月夜】を、
言葉と色に誘われるイメージをもとに、
文学作品と併せてご紹介します。
どうぞよしなに。

目次

三好達治の「雪」と線の濃淡編

「しんしんと降る雪は」

このあとに、みなさんは、どんな言葉をつなぐでしょうか。

しんしんと降る雪は、「恐ろしい」
しんしんと降る雪は、「美しい」etc…

ふりつもる雪への憧憬を持つ人、
しずかな重みで家屋をゆっくり圧す雪に慄く人。
言葉からなにを思うか、感じるか。人の数ほど千差万別。

まず一つ目は三好達治「雪」をご紹介。

三好達治「雪」
使用ペン・紙:日光Gペン特上品+トモエリバーFP無地

「雪月夜」とは、雪景色にさす月明り。
降った後と、降っている時の月明り2種。
闇のなかに青白く光る、静かで、幻想的な
さやけき色(清けし・形容詞ク活用。
日本語ってすてきだなあ!)

雪と月明りを受ける日常の住まい
家の中の「太郎」、「次郎」。
それは子供なのか、大人なのか。
部屋に灯りはあるか、闇の中なのか。

部屋に灯りはあるか、闇の中なのか。

きりりと冷えた外の雪景色と、
人が住まう部屋の温度。
音もなく存在する雪と、
家の中の人の息遣い、体温や鼓動。

無数の「太郎」「次郎」たちの家、家、家。

無数の「太郎」「次郎」たちの家、家、家。

照らす月光の青白い煌めき。無音の雪。
ときに、重みにまけてすべり落ちる、ふくよかな音。
闇と雪の色、寒さと温かさの対比。

ミクロな視点からマクロな視点へ、
まるでドローンを飛ばすかのように広がる世界観。

たった2行の文による想像の奥行きの広さに脱帽です。
三好達治の、詩における情感、感性の鋭さと、

大嫌いな佐藤春夫宅の前で
「バカヤロー」と叫びダッシュ逃げ、とか
「喧嘩に強く文壇最強」とのお墨付きを
三島由紀夫からもらっていたりなど
剛柔備えた私生活エピソードも、
人間臭くていいですね(人間だもの)

Gペンは、よくしなるので
太い線と細い線を合わせた書き方ができます。
毛筆の時と同じようなスピードで書くと、
線が「きりり」と立ってきますし、

ゆっくり丁寧に引くと、
それはそれで味のある線ができる
面白い筆記具です。安いし。

(諸所の色にじみなどの書き方については、
次回以降「しなるペン・しならないペン」でご紹介します。)

三好達治「雪」_2

プラチナ3776センチュリー太字+インク工房162と473
これは雪月夜発売以前に書いたものです。
詩文は通常普通に書けば写真の通り2行表記のところ、
わたくしは横溝正史作品も市川崑作品も庵野秀明作品も好きなので、

三好達治「雪」

このような縦横囲み配置で今回(も)書きました。
はじまりとおわり、阿吽、alpha・omegaで円環を為す。
(円くないけれど、2行で「とじる」。
2は、素数先陣の美しさよ)
周囲の空白が積もる雪の如くあれかし。

次回は、「雪月夜」を使って

雪を表現する文学の2つ目と
雪の風景を描く方法をご紹介いたします。
それでは、どうぞお健やかに。
朝比奈斎でした。

【次回、~色のゆらめきは雪の如し編~に続く】

<この記事で紹介されている文具>
Pent〈ペント〉 ボトルインク 彩時記 冬~winter~ 雪月夜(ゆきづきよ)

この記事を書いた人

朝比奈斎
朝比奈斎
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

Twitter:@asahinaitsuku
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