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大容量インクの万年筆、TWSBI VAC700Rの魅力

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 旅行が大好きな私は、プライベートであっても、仕事(取材)であっても、万年筆は欠かすことのできない相棒として、宿泊先のホテルや、街のカフェなどで、友人に手紙を書いたり、旅ノートをまとめたり、時には原稿を書くこともあって活躍の場が多い筆記具です。
そういった訳で、旅のお供にはできる限りインク容量の多い万年筆をセレクトしています。
また、長期にわたる出張や旅行では、補助としてインクボトルやカートリッジを旅行鞄の中にしっかりと入れてから旅立ちます。
一般のユーザーには、そこまで必要はないかもしれませんが、あなたが持っている万年筆の容量を考慮して、インクとの組み合わせをあれこれと想像してみるのも楽しいですよ。

カートリッジVS本体吸入式

 万年筆にインクを補充する方法には、カートリッジを交換するタイプの他に、本体吸入式(プランジャー式)などがあり、モデルによってインクの吸入方式が異なります。

カートリッジ

 
 一般的には、交換が手軽なカートリッジ方式を採用しているモデルがもっとも多く、パイロットコーポレーションのカスタムシリーズやセーラー万年筆のプロフィットシリーズ、プラチナ万年筆の#3776センチュリーなど、国産3社のエントリーモデルの万年筆は、カートリッジ式を採用しています。
オーソドックスなカートリッジインクの容量は1本あたり0.9mlから1.2mlというのが定説です。

本体吸入式

 本体吸入式(プランジャー式)を採用しているモデルといえば、モンブランマイスターシュテックシリーズをはじめ、ペリカン万年筆のスーベレーンシリーズ、ラミー2000万年筆の他に、国産ではパイロットコーポレーションのカスタム823があります。
本体吸入式万年筆の代表的なモデルの容量は次の通り。

こうして比較してみると、万年筆本体に直接インクを吸い上げる本体吸入式の方がカートリッジよりも、容量が大きいことがわかります。

TWSBI VAC700R

 
 インク容量の視点から見ると、パイロットコーポレーションのカスタム823や、ペリカンのスーベレーンの優秀さが際立ちますが、本体吸入式を採用した万年筆の中で、もっともインク容量が多かったのは、台湾のTWSBI万年筆VAC700Rでした。
 TWSBIは台湾の三文堂筆業有限公司のブランドで、2017年頃から日本の文具店に並ぶようになり、エントリーモデルのEcoシリーズや、フラッグシップモデルのダイヤモンドシリーズが特に人気を集めています。
TWSBI万年筆の中では、ダイヤモンドシリーズも2.0ccのインク容量を誇りますが、VAC700Rはそれよりも10%多く、一般的なカートリッジインク2本分に相当する「2.2cc」の容量があり、本体吸入式No1の座を獲得しました。(資料提供:株式会社酒井)

 

 さらに、VACシリーズ用に開発された「インクボトル20」は、プラスティック樹脂の本体に20ccのインク容量があり、ガラスボトルと違って本体重量も軽く、コンパクトなために持ち運ぶことも可能にしています。

 
 VAC700Rにインクを補充する際には、万年筆本体とインクボトルが一体化する構造になっていて、手を汚さずにインクを万年筆に入れられる便利な機能を持っていて、インクの補充が苦手なひとにとっては、実にありがたい「インクボトル20」です。
また、キャップをすべて取り外すと、TWSBI以外の万年筆でも使用は可能なので、TWSBI VACユーザーはもちろんですが、インクボトルを出張や旅行のお供に連れて行きたいユーザーにもオススメです。

カートリッジ派にオススメしたいアシュフォード「トラベルペンケース」

▲クリックで拡大します。

 万年筆ユーザーの中には、カートリッジ派の方もいらっしゃるので、株式会社ASHFORDから発売されている「トラベルペンケース」を紹介しておきます。
2016年、ASHFORD30周年の企画として、Pen-infoの土橋正さんとコラボで生まれたモデルで、1本差し革製のペンケースにインクカートリッジが約10本収納できるポケットが付いた、他に例のない異色のペンケースで、シンプルなスタイルが好みのユーザーにはピッタリのセレクトです。

文具愛好家の考察

 
 TWSBI万年筆の、スケルトンなボディは中に入れたインクの色がよくわかることに加えて、カラーインクを楽しみたいユーザーにはぴったりで、ステンレススティール(鉄ペン)のペン先も、カリカリ感の少ない滑らかな書き心地とあって、日常使いのための万年筆としては、ホントに優等生と呼べる存在です。
なにより、インク容量が大きいのは、たくさんの文字を書くユーザーやインクの補充が面倒くさいと感じている人にも「便利」な特徴です。
長期のお出かけのお供に、そして定番のカートリッジインクにはない、お気に入りの万年筆インクを連れて行きたいというユーザーには、ぜひ一度試して欲しい「TWSBI VAC700R」と「インクボトル20」です。

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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