卓上の硝子小物というと、涼し気な印象があるので、夏に活躍しがち。だから、これからの季節はちょっと寒く感じられるのではないかと片付けようと思っていた。
しかし、机の上になじんだその硝子小物を見ていたら、もうその場所が定位置になっているので、片付けるのは少し寂しいという気持ちになった。
そして、硝子小物というのは、シンプルなデザインものが多いから、夏はもちろんのこと、春夏秋冬で机の上を楽しませてくれるんじゃないかっていう気がしている。
なので、これからの季節もぼくの机の上にはそんな硝子小物が鎮座するであろう。
そのうちのひとつを今回はご紹介したいと思う。
これは、以前ご紹介した内ひび硝子の技法を用いたインク壺、細氷を制作したアートファクトリーによるペンスタンドだ。
美しい鮮やかなブルーと、その中にちりばめられた銀箔、さらに少しずつ増えていくというひび割れが、実に見事に一つのオブジェを形作っている。
夏の暑い時期は涼し気に見えるが、これからの寒い時期には、逆に温かさを感じる。これは、おそらく硝子製品というのは高温の火を使って作られるから、その熱を感じるからなのではないか、という気がする。
また、手作りの良さというのもある。形も完全なシンメトリーではないので、角度によって形が違って見える。また、ペンスタンドなので、少し傾いており、その傾き具合も程よいのだ。
ペンをさしたときのバランスもとても良い。直径が約17mmなので、太軸のペンも余裕でさすことができるのも万年筆コレクターにはありがたい。
重さもあるので、ペーパーウェイトとしても使うことができるのもこの「銀河」の大きな特徴だろう。
窓を開けていると、窓からの風で書類が飛ばされてしまうことがあるが、これはペーパーウェイトとしても使うことができるので、ちょっと席を外した時にこれを紙の上に置いておくと、そういった心配もいらない。
常に使う万年筆はできるだけすぐに出すことができるようにしておきたいのだが、例えば、請求書やお礼の手紙を書く時などに使うあて名書き用の万年筆は、出番が多い。そういう万年筆をこのペンスタンドにさしておけば、ぱっと取り出して書くことができる。
さて、もう少し詳しくこの「銀河」を観察してみよう。
中のひび割れの状態は、ひとつひとつ違うし、また少しずつ増えていくものなので、その変化を楽しむこともできる。それにしても、見れば見るほど吸い込まれそうな細かい細工がされていて、見飽きることがない。これは、インク壺「細氷」でも同じことが言えるので、この二つを並べてみるのも良いだろう。
また、このガラスの中に閉じ込められた細かいひびは、様々な角度を持って光を反射しており、その反射具合を見ているのも良いだろう。
ぼくは冬生まれなので、冬の寒さが大好きだし、冬の空は空気が澄んでいて清々しくてそんな冬の空を飽きずに眺めていることがあるのだが、この「銀河」はまさにその名前の通り、冬の銀河を思わせ、机の上にありながら、それを堪能することができる。そこもこのペンスタンドの魅力と言えるだろう。
実用的でありながらも、芸術性が高いので、机の上でも映えるし、便利に使うこともできる。だから、こういうもので机の上を整えておくと、それだけで仕事がはかどったり、楽しい気持ちで机に向かったりすることができるのではないか、そんな気がするのである。
<記事に登場する文具>
・Pent〈ペント〉×アートファクトリー ペンスタンド/ペーパーウェイト 銀河
・Pent×セーラー万年筆 彩時記 幻蒼海(げんそうかい)
この記事を書いた人

- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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