繊細なインク壺~ダイアモンドダストが消えぬ間に想いを綴って…
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繊細なインク壺~ダイアモンドダストが消えぬ間に想いを綴って…

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インクをたくさんコレクションしているぼくは、インク壺の存在は知ってはいたものの、それほど心をくすぐるアイテムではなかった。
万年筆でインクを使うことが多いから、わざわざインク壺にインクを移し替える必要もないし、インク壺の多くはガラス製だから取り扱いに気を付けなくてはならないし。

しかし、最近、万年筆とは一味も二味も違うガラスペンの書き心地の良さを知ってから、インク壺にも興味を持つようになった。

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ガラスペンとインク壺の相性が良いのは、どちらもインクを気軽に思いついた時に使えるからなのではないかと思う。
ぼくは、仕事柄、クライアントに手紙を書くことが多いのだが、そんな時にさっと机の上にある筆記具で手紙を書くことができるというのは、忙しい時などは大変に便利。
万年筆でも良いのだけれども、たとえば、うっかりインクの補充を忘れていて、インクが途中で切れてしまって、それがストレスになるということもある。
でも、インク壺にきちんとインクが入っている状態にしておき、ガラスペンを常備しておけば、そんなストレスを感じることもなくなる。
さて、今日はおしゃれで繊細な雰囲気のインク壺をご紹介したいと思う。

繊細なインク壺~ダイアモンドダストが消えぬ間に想いを綴って…

アートファクトリー インク壺 細氷」は、繊細なひびが特徴的なインク壺だ。

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ガラスの中に閉じ込められたひびは、なんと3年から5年かけて成長するひびなのだとか。また、中には20年以上かけてひびが増えることもあるという。そして、いったい、どういう状況でひびが入るのかはわからないが、ひびが入る瞬間にぴんと澄んだ音が響く。どのタイミングでひびが入るのか誰も知らないので、もしその瞬間に立ち会えたらラッキーなのだろう。このインク壺にはそんなロマンも封じ込められているというところがまず魅力的と言える。

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ちなみに、この「細氷」は、北海道の富良野で冬の時期に見られる自然現象ダイアモンド・ダストをイメージしており、ハンガリーを起源とする内ひび硝子の技法を用いて作られている。縮み方の異なる二種類の硝子が重ね合わさることによって、この不思議な現象が見られるのだ。そして、この技術を持つ河野克佳氏は硝子の仕込みなどからすべてを行っている唯一の職人だ。

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そんなインク壺は机の上に置いておくだけでも、涼し気だが、細かいひびが入っていることによって、綿のような印象もあり、温かみも感じられる。そこにインクを入れてみると、より一層インク壺の美しさを実感することができるのではないだろうか。

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一対となっているガラスの蓋を取り、ガラスペンのペン先を軽くインク壺の中のインクにつければ、すぐに文字を書くことができるようになる。蓋を開けておけば、インクが切れてもすぐにつけて書けるし、インク切れなどの心配もない。

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また、書いている途中で文章の続きを考えたい時、ふと目の前にあるこのインク壺を眺めていると、緊張がほどけたり、その時にぴったりの言葉がみつかったりすることもあるだろう。

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繊細な模様なだけに、ずっと見ていても飽きないし、ひょっとしたらそんな最中にひびが入るところを目撃することができるかもしれないという予感もする。

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このインク壺は、卓上に置いておくだけで我々のイマジネーションを広げてくれる、そんなインク壺なのではないだろうか。インテリアとしても使用できる作りなので、インクを入れて使うだけでなく、ペン先を洗浄するための水を入れておくという使い方も良いだろう。

中のインクの色によっては、先週ご紹介したペーパーウェイトとの相性も抜群だ。

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秋の夜長は自分の好きなインクをインク壺に入れて、ゆったりとした気持ちで大切な人に手紙を書いてみてはどうだろうか。

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<記事に登場する文具>
Pent×アートファクトリー インク壺 細氷

この記事を書いた人

武田健
武田健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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