玉石参房 第十一房「冬銀河」すべてのひとに、すべての星の光と深い夜空からのなぐさめを。
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玉石参房 第十一房「冬銀河」すべてのひとに、すべての星の光と深い夜空からのなぐさめを。

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師走で心を亡くす東奔西走の時期、みなさま、ご機嫌いかがですか。
忙殺の日々、疲れた身体をひきずりながら帰宅する我の頭上に
流星も降る、月明りも降る、雪も降る。
上を向いて歩こう。
涙が零れないように。

否!
泣いてなんかいない!これは年末諸事への冷や汗!
泣く時間があったら手と頭を動かすのだ!
恋人はサンタクロースじゃない!
みんな各々がサンタクロースなんだ!
(フランシス・チャーチ著&中村妙子・訳&東逸子・絵)

サンタさんも今頃、同じく大変な思いの労働をしているはずだ!
配り終えても終わりじゃない!会計報告書!年度末決算の準備!
最大多数の最大労働だ!
The greatest labor of the greatest numbers!!!
公理性の原理!ベンサム!違!

と年末恒例あれもこれもフルスロットル独楽な絶叫・朝比奈斎が
「冬銀河」のお色見本を作ります。どうぞよしなに。

12月の街のイルミネーションと、流星多めに降らす冬の天体ショーは
人工と自然の対比あれど、いろいろな光によって心潤わせる冬の醍醐味。
そんな季節をあらわす彩時記「冬銀河」のコンセプトカード文言をGペンで。

Gペン:立川ピン製作所・タチカワプレミアムセット
用紙:SAKAEテクニカルペーパー・トモエリバー


日常的に使い勝手の良い紺色。
加水すると明るい水色、分離は紫やピンクなど赤系を含む色がでます。
分離画像での紙は、事務所にあったカレンダーの裏。コート紙です。
分離がはげしく面白くでる、意外な紙の発見あり。
塗るのです。いろいろと試すのです。

前回はエミリー・ブロンテを紹介しましたが、
今回はシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」より
ガラスペンにて。

ガラスペン:paraglass・2way glass pen
用紙:山本紙業・コスモエアライト


両端に太さの異なるペン先のついたガラスペンは、
表現を変えたいときにとても便利。
淡い色の軸もうつくしくて、うっとり。

「ジェーン・エア」も「嵐が丘」と同じく、
怒涛の苦難の展開に心情が乱高下する中で、
たいせつなのは逆境を生きる人々の健気さと
打ちひしがれるときにこそ慰めを与える自然の描写。

涙にくれる日々のなか、こころもとない気持ちを胸に
夜空を仰ぎ見るシーンを書きました。
大いなる夜空にまたたく星々が人の心をつよくする瞬間は、
古今東西、きっと誰にでもあてはまる場面でありましょう。

日本文学、俳句・和歌において
「銀河・天の川」のみだと初秋の季語ですが、
「冬銀河」となると、冴えわたる冬空の天の川や天空、
文字どおり冬の季語となります。
その季語をつかった岸本マチ子の俳句を万年筆にて。

万年筆:PILOT・キャップレス螺鈿ブラック
用紙:SAKAEテクニカルペーパー・イロフル


冬銀河のイメージにも合う螺鈿の軸。
自分好みの筆致が出しやすい万年筆だと思います。
個人的には追いインクで潤沢めに書いています。
ニブのしなりではなく、「インクそのものの接地」で書くつもりで。

物語の季節は違いますが、
銀河といえば、あの名作をGペンで。

Gペン:立川ピン製作所・タチカワプレミアムセット
用紙:山本紙業・コスモエアライト


Gペンだと、これでもかと太く書ける面白さがありますが、
逆に、髪の毛ほどの繊細な線も引くことができます。
線の強弱、手につたわるしなり具合がGペンの醍醐味ともいえましょう。
シャープな細い線、エッジのきいた太い線で
温故知新な独自性を目指しています。


連載初回の第1房「雪月夜」にて塩を使った白抜きを
さわりのみお伝えしましたが、
今回、夜空の最果てを表現するべく、塩撒きの土台から。
インクが乾く前に塩をのせ、乾かすだけ。(簡単!)

もやもや暗黒物質もろともに、ラメを撒き、別紙に富士を描き糊で貼り付け。
夜空も夜富士も「冬銀河」のみで描きました。

水彩紙:カランダッシュ・エーデルワイス水彩紙ブックSMアルビレオ
富士山用紙:SAKAEテクニカルペーパー・トモエリバー
オリオン座&冬の大三角:ぺんてる・ペン修正液
ラメ表現:rom&nd・リキッドグリッターシャドウ


冬の夜富士の静けさと満天銀河のさやけき光が
うちひしがれる人々の心に寄り添えますように。
箱もインクも世界観もうつくしい「冬銀河」。
インクの様々な楽しみ方の入り口となれば、幸いです。

今号をもってペンハウス彩時記シリーズのコラムは一区切り。
素敵な色のインクに囲まれ、自分でも思いもよらぬ線や色の展開が
とても楽しいしあわせな時間となりました。
拙作にお目をとめてくださった、すべての皆様に感謝申し上げます。
Gペン作字の先駆矜持をよりどころとして
あれもこれもと欲張りとっちらかった文言、どうぞご容赦を。

素敵なインクや紙製品、諸文具はこれからもたくさん出てくるでしょう。
面白そうなあたらしい文化も、たくさん生まれ出るでしょう。
どんな時代になったとしても、
自分の手でつむぐ書くひとときを、
それぞれの場所で
この先もご一緒いたしましょう。
それでは、また。
朝比奈斎でした。

<今回のメインインク>
Pent〈ペント〉 ボトルインク 彩時記 冬~winter~ 冬銀河(ふゆぎんが)

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この記事を書いた人

朝比奈斎
朝比奈斎
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

Twitter:@asahinaitsuku
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