玉石参房 第四十二房 JUL小暑大暑―自然共存・清浄な理想の生き方―
世界の筆記具ペンハウス

玉石参房 第四十二房 JUL小暑大暑―自然共存・清浄な理想の生き方―

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2025年夏。
昨年以上に異常気象継続中ですが、なにはともあれ夏本番。
そんな季節にぴったりな、コトバノイロ「潮騒」をはじめ、
夏色インクのお色見本を作ります。
夏ノ暑サニモマケズどうぞよしなに。


Pent:Pent・コトバノイロ・潮騒
IWI・Color of Nature・小暑・大暑
サクラクレパス・アクアリップ・グロスクリア
ホルベイン・マスキングフルイドペン
ガンヂー・インキ消し


今回は「バチック技法・白抜き」にトライ。
過去記事でも何度か登場しておりますが、
透明インクペンのアクアリップ、マスキングインク、
インキ消し(無ければキッチンハイターなどの家庭用漂白剤)を使用。

(お子様と一緒の時は取り扱いに充分注意してくださいね)

マルマン・スケッチパッド(厚め用紙)を切り取り、
角を丸くカットして
透明インクペンとマスキングインクで先に文字を書きます。
見えにくいときは、ライトをあてながら。

インキ消し(漂白剤)は、インクを塗ってしっかり乾いてから使います。
ガラスペンや水筆などにつけて書いてみましょう。
(金属つけペンは✖。錆びます)



マスキングインクが木工用ボンドのように透明にかわいて固まってから
インクや絵の具をぬり、その色が完全にかわいたあとで
そっとこすりはがして白抜きします。

ペン型はインク調整がむずかしいので、
最初は絵皿などにとりわけて
ナイロン筆やネイル用シリコン筆で書くことをやってみましょう。
(使用後、筆先に固まったものを取り除きやすいので)

万年筆インク(染料インク)が早く染みこみやすい紙だと、
乾いて透明になったマスキングの下に染料がしみて、
文字にムラができることがあります。

しっかり白く抜きたいときは、厚めの微塗工紙など
染料インクがゆっくりかわく用紙を選ぶとよいでしょう。
(薄い紙ではマスキングを剥がすときに破れるおそれもあります)

※※※※

1945年(昭和29年)に発表された三島由紀夫の「潮騒」。

昭和時代から数回映画化され、2012年朝ドラ「あまちゃん」では
オマージュとしても一部扱われるなど、
大衆にひろく認知された作品です。

この作品以外を先に読んでいると、「潮騒」の文章が
それまでの三島カラーとはガラリと変わります。

誰にでも情景が思い浮かべられるような、映像的且つ、
三島らしい無駄なし的確な文章によって

いつの時代も激しく進化する文明から少し離れ、
昔ながらの自然とともに歩む島の人々の実直な生き様が
「善きもの」「清きもの」として見事に表現。

無口な少年主人公・新治が
ヒロイン初江に出会い初恋を経験することで、
「どうあるべきか」とつねに襟を正しながら成長する物語のなか、

島の暮らしの善きものと、そこで在るべき理想の生き方を
自分の言葉で訥々と初江に語る場面から抜粋。


「潮騒」発表後、たった4か月で映画版第一回「潮騒」が公開されます。
その短い期間を鑑みるに、
はじめから映画化ありきで構想があったことが判ります。

三島の理想モデルである離島のリサーチも入念で、
実際にロケハン的な探訪も行われ、細かな描写の元に。

時にコミカル、時にロマンティックな展開盛りだくさん。
初江や新治の初々しさ、
二人をとりまく大人達の田舎特有の気質、

しかし濁よりは清に重きをおく理解度
(新治と初江を助けたり、悪評の誤解を解くなど)もあわせて、
若者を見守る人々の姿によって大団円。

単純明快でさわやかな読後感、コトバノイロ「潮騒」も作品の世界観に沿って、
爽やかな夏色のインクです。

※※※※


冒頭の3種類のインクを使って、ラテン語格言を。

金色輝くゼブラのチタンGペンPROが、
2025年5月製造分をもって廃番との衝撃発表から数か月。

ゆっくりと時代が終わることを噛みしめながら、
通常版の銀色ゼブラGペンも今後永く続きますよう祈願しつつ購入継続。

1897(明治30)年に国産Gペン初生産のゼブラ。
ゼブラの各種Gペン製品については、また次の機会にくわしく。

※※※※
さて、くっきりはっきり濃く書きたいときは、
なんといってもマットホップbyぺんてる!

普通紙だけでなく、つるりとした表面の用紙やビニールにもOK!


可愛い色。「ノートの雄」であるツバメノートの使用紙に書いた発色と裏抜けの様子。
さすがの高発色は、大きめの顔料使用によるもの。

わたくしは淡い染料インクや水彩の相棒として
マットホップ初登場時期から、よく使用しております。


下地の色にも負けず、濃くかきたすことでグッと強まる紙面。
塗り方も自由自在、工夫が幾重にも。

マットホップの注意点
大きめの顔料を使うということは、
乾いて固まりやすいという欠点も。

・保管は横置き
・使用後はペン先のインクたまりを拭きとる
・常に使い続ける(←最重要)

久しぶりに使う、という場面では
残念ながらインクが固まって出ないときも!
インクがでない時の対処法を、ただいま1か月かけて検証中。
待て次号!(今知りたい方々、Xの随時投稿をご参照ください)


夏のいきもの「咲く・飛ぶ・泳ぐ」シリーズ。

クラゲは天地無用もなんのその、ということであえて逆配置。
アオアシカツオドリのブーツのような青色や
わたくしの好きな各いきものの濃い色を集めました。

さきに万年筆インクでざっくり塗って、しあげにマットホップをちょい足し。
ミニカードを1日ずつ描いてふえるのも、自由研究みたいで楽しい。


こちらは先の3種類の万年筆インクで
ネガティブペインティング手法を。(経過途中)
1層、2層、3層と塗り分ける方法は、お子様の夏の宿題にもぴったり!
この方法は、来月に続きます。(宿題、今年も頑張ろう!)


モロッコの青い街、シャウエンの街角を3種インクとマットホップにて。
定期的に、壁を青く塗りなおしているユダヤの伝統。
ギリシャのサントリーニ島やミコノス島、
スペインのプエブロ・ブランコなども美しい家並みで有名ですね。


ゆっくり夏をたのしみたい…。

アイスクリームとサクランボがマットホップ、
海とソーダは万年筆インク、
砂浜はぺんてるのマルチ8(色鉛筆)。
波はマスキングインクの白抜きです。


さあて、今年の夏は…。

色にいざなわれて開ける扉の向こうにひろがる、
濃く淡く美しい万年筆インクやさまざまな筆記具、紙と夏色の世界。
文具の楽しみの入り口となれば幸いです。

冷涼な澄んだ空気の山、虹の多い谷、
アラザンのような星、鹿の音、鳥の音、花と蝶。
緑響く夏のここへようこそ…とは裏腹に
アブ・ハチ・高い標高による紫外線・日焼け対策、常時長そで虫よけ網付き帽子&首タオル&ゴム長ときにゴムズボン動物対策の大判雨傘持参の朝比奈斎(サル・クマ・イノシシ・ブヨ・アブ・ハチは許すまじ2回目)でした。ではまた。見た目より自衛優先。

<登場インク>
Pent〈ペント〉コトバノイロ 潮騒
IWI Color of Nature 夏コレクション
<ペンハウスでお取り扱いのある筆記具>
ゼブラ チタンGペンプロ
ぺんてる マットホップ

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この記事を書いた人

朝比奈斎
朝比奈斎
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

Twitter:@asahinaitsuku
Instagram:@asahinaitsuku