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文具好きの小部屋

万年筆魅力再発見!

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万年筆魅力再発見!

やらかしちゃいました。

 いえ、別に犯罪に手を染めたとか、女房に浮気がバレたとか(してません)ではなくて、「万年筆離れ」?を体験してしまいました。

 鉛筆関連の取材をしていたら黒鉛芯を使用した鉛筆をはじめてとするシャープペンシルや芯ホルダーといった類いの鉛筆系筆記具の魅力に取り憑かれてしまい、以前はポン酢瓶の異名を持つパイロットコーポレーションの万年筆インキ350mlを3年で使い切るペースでインク消費をしてきた私が、鉛筆系筆記具にのめり込んでしまった結果、消費ペースが1/10程度に落ち込んでしいました。

鉛筆系筆記具

 近年、ぺんてる株式会社「オレンズネロ」や三菱鉛筆株式会社「クルトガダイブ」、パイロットコーポレーション「S20」など、筆記具メーカー各社がしのぎを削るように、個性的で進化したシャープペンシルが続々と登場する中で、モデルによっては手頃な価格の万年筆よりも高価なシャープペンシルが現れるようになりました。

加えて、若い世代ではクラフト作家さんによる木軸シャープペンシルが人気を集めて、お目当ての作家さんが出展するイベントでは朝1番から、会場入口に長い列を作る熱心なファンの姿を目にします。

私の場合、幸いにして「木軸シャープペンシル」に、のめり込むことはなくて、比較的オーソドックスで手軽に手に入れられる「鉛筆」や「芯ホルダー」が中心で、いつの間にかそれだけで箱ひとつが埋まってしまうほどに増えてしまいました。

デッサン

また、やっかいなことに、それまで万年筆で筆記していたことの大半が、鉛筆系筆記具にとって代わっただけなく、黒鉛芯が得意とする作業をあえて仕事のルーチンに加えてしまったことで、机と向き合う時間がさらに長くなってしまいました。

特に、これは楽しいと思えたのは、原稿記事に差し込む写真をイメージしながら書いたデッサンもどき!?私は、絵心というようなオシャレなセンスは皆無なので、どう贔屓目に見ても子どものラクガキ程度にしか見えないながらでも、商品撮影をする時の事前イメージとしては十分に役立っています。

この作業も万年筆で、できない訳ではありませんが、鉛筆系の筆記具だとより美術(アート)っぽくみえたりするので、仕事をしているモチベーションは格段にアップします。

最近の鉛筆事情

鉛筆事情

 鉛筆系筆記具にはまってしまい、あらためて「鉛筆」という、日本人にもっとも馴染みのある筆記具を再認識した私でしたが、鉛筆取材をした際に、いまの小学校で使われている鉛筆の硬度の主流はBや2Bで、昭和世代が使っていたHBよりも黒はより濃く、芯は柔らかくなっています。

最近の小学生は以前よりも筆圧が弱く、力を加えずにはっきりした文字を書くにはBや2Bが適しているということ、また学校によっては硬度を「B」や「2B」など指定している場所もあり、文具店の店頭ではHBよりも濃いB以上が良く売れているという事実でした。

やっぱり万年筆はいい筆記具だ

お礼状

 以前、取材したことを思い出しながら、筆圧が必要なく、だれでもが滑らかに濃く書ける筆記具といえば万年筆ではないか!これを機会に学校教育に、万年筆を採用してみてはいいのにでは?と思っていた、そんなある日。

お世話になった方にお礼状を認(したた)めることになって、ひさしぶりにモンブランマイスターシュテックを手にして、インクボトルからインクを吸い上げた時、忘れていたはじめて万年筆を手にした時の興奮が蘇ってきました。

ペン先が便箋の上を走る姿は、銀盤の駆け抜けるフィギュアスケートのフリースタイルのように美しく、万年筆が勝手に文字を綴っていくような感覚はまさに万年筆の醍醐味です。

自分が書いたはずの文章なのに、自分ではない他の誰かが私の身体を使って書いたようにも思えてしまいます。

そんな、滑からでくっきりとした文字が、大きな筆圧を加える事なく筆記ができる、万年筆だけが持つ「書く」喜びを再認識したしだいです。

文具好きの思考

万年筆

 しばらくの間、万年筆がペンケースのセンターから外れてしまったことで、万年筆の良さを改めて実感する機会になりました。

誰でも、憧れて購入してみたけれど、いつの間にかペンケースのセンターから外れただけでなく、机の引き出しの奥に忘れさられてしまった万年筆があるのでは?

しばらく、使っていなかった万年筆に新しいインクを注いで、はじめて手にした日の記憶を呼び起こしてみてはいかがでしょう。

そんな経験をした人ほど、万年筆の魅力を再発見できるのではと思います。

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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