今年の夏は例年になく暑かったこともあり、いつも以上に清涼感のある文房具を積極的に使っていたような気がする。
透明軸やラメのある万年筆、あるいは硝子製品の卓上小物で、気分だけでも暑さをやわらげようとしていた。
そんな暑さもやっとひと段落し、少しずつ気候も穏やかになってくると、その反動からか、少しシックでシンプルな文房具を使いたくなる。今回はそんな時におすすめの万年筆をご紹介しよう。
このラミー2000の万年筆は、以前4色ボールペンをご紹介したラミー2000の万年筆版だ。
ラミー2000シリーズは、1966年に「西暦2000年になっても古さを感じないデザイン」というコンセプトのもとに登場した画期的な万年筆である。現に50年以上たった今でも多くのファンを魅了している。
その魅力の一つが軸に使われている樹脂だ。ポリカーボネイトと呼ばれる樹脂はマット感だけではく、良く見るとうっすらと縦線が入っていて、そこが立体的にも見えるところが大きな特徴である。
クリップ部分はアルミだが、軸と同じような加工がされており、統一感がある。
また、万年筆にはいくつかの大きな特徴がある。まずはそのペン先。14金のペン先は、一切の無駄がなく、ペン先として必要な部分だけが飛び出している。そのために、文字を書いている時もペン芯を意識することなく筆記できるのだ。
インクを吸入する時はピストン式で、軸のお尻部分を回転させて軸内のピストンを上下させることで、ペン先からインクを内部に取り込ませることができる。
万年筆にはインク窓が付いているのもこのプロダクトの大きな特徴だろう。さらにその先の2箇所についている小さな金具は、キャップをカチッと固定するためのもので、そのさりげないデザインもこの万年筆の大きな魅力と言えるだろう。
それらのデザインは実用的でありながら洗練されており、シンプルで飽きのこない作りになっているところがラミー2000の大きな特徴と言えるだろう。
手に持った時に適度な丸みがあり、それらも恐らく計算されたものだと思われ、手のひらにぴたっとなじむ。まるで手に吸い付くような感覚なのだ。これは、以前ご紹介した4色ボールペンと同じだ。
色といい、クリップやその他の部分も同じプロダクトなので、お揃いで持ち歩くというのも良いだろう。4色ボールペンは、黒、青、緑、赤の4色なので、それ以外の色を万年筆に入れてみるというのも良いかもしれない。
そこでぼくが選んだのはブルーブラックだ。4色ボールペンとも違うし、万年筆らしいフローも楽しむことができるので書いていて実に楽しい気持ちになる。
ボールペンは気軽にさっと書けるし、4色なので色を替えて書く時にも便利。一方万年筆は、じっくりと物事を考えながら書くのに向いている。一文字一文字、文字を書き、集中する時こそ万年筆の出番。それを可能にしてくれるのは、やはりシンプルなデザインでありながらも機能的にも優れているラミー2000ならではと言えるのではないだろうか。
<記事に登場する文具>
・ラミー 万年筆 Lamy2000 L01
・ラミー 4色ボールペン Lamy2000 L401
・あたぼうステーショナリー ふたふで箋
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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