玉石参房 第四十六房 NOV立冬小雪―この静謐な空気のつめたさよ―
世界の筆記具ペンハウス

玉石参房 第四十六房 NOV立冬小雪―この静謐な空気のつめたさよ―

  • Pocket
  • LINEで送る


2025年内最後の連休が無情にも終わり、
時節はあっというまに11月も末。
毎年この時期をむかえると加速度的に【光陰矢の如し】を実感します。

晩秋から霜おりたつ時期をあらわすインク色にて季節の彩り、
北風小僧の気配も感じながら、今回もどうぞよしなに。


「立冬」「小雪」の名を冠したインクで、
それぞれの季節に合わせた俳句を。
日野草城と夏目漱石の作品です。

3枚目・4枚目の画像では、
少々にじみやすい普通のコピー紙にインクを使い、
さらに透写紙(トレーシングペーパー)のような透け感を工夫。

グリーティングカードや手帳・ノート類の
彩りのアイデアとしていかがでしょうか。

インク染め紙

まずはインクを普通のコピー用紙に塗る、
のですが、いつもなら筆で全面を塗ったりするところを、
今回は水スプレー&インクの垂らしこみにて。


なるべく細かい霧状のスプレー口だと、インクの散り方が面白く出ます。
(わたくしは今回、使い終わったスプレー式化粧水容器に水をいれて使用)

紙一面にまんべんなく水をふきかけて、
マドラーなどでインクを紙面におとすだけで
細かい水の粒にそって偶然できる色の広がりがたのしい。

最初に乗せる色は黄色系からおいていくと、
暖色でも寒色でも色の混ざりが綺麗です。

1色のみの濃淡で作ってもよいですし、
他の色と合わせてもたのしいですが、

インクは混ぜるほど色が濁るため、

  • 色はあまり混ぜず(自然な混ざり具合をいかす)
  • 少ない色数で(できれば2色、多くても3色まで)
  • 補色どうしをのせない(青紫+黄、赤+緑、など)

以上3点に注意しましょう。

のせたインクは自然にまかせて広がるままにするもよし、
紙を両手に持って少しずつ傾けながら、紙面の色水をゆっくり動かすもよし。
このあと蝋をしみこませるので、インクはしっかりと乾かしておきます。


しっかり乾かして、皺が気になる場合は低温のアイロンをかけておきます。

蠟引き紙への加工

削った蝋をアイロンで溶かしながら、
インク染紙にしみこませます。

蝋はカッターや皮むき器などで鉛筆を削るように薄く削りだしておくと、
低温でもさっと溶け、少量ずつ使えるので無駄な蝋がでにくく便利です。


薄く削った蝋が見えやすいように濃いめに色付けた紙をつかっています。
紫系には黄色を合わせると濁るので、
染料インクとは性質のことなる金墨汁や、
混ざりにくいラメ顔料系の金色インクをのせました。

蠟引きのコツは、

蝋を一度しっかり紙に吸わせたあと、
次に蠟引きしたい用紙で挟んで
余分な蝋を新しい紙に吸わせること。

そうすることで余分な蝋も使い切ることができますし、
仕上がりが均一で綺麗です。

蝋を引く前の紙とくらべると、
引いた後の紙が半透明にすけているのがたのしい。


この紙の裏側に両面テープをはって、好きな型でパンチング。


はさみやカッターで△や□、〇に切ってもかわいい。
文字が透けて見えるのでマーキングにぴったり。
弱粘着の両面テープなら自由にはがせるので移動貼りもラクに。

染め紙だけでなく、山本紙業の「かみふぶき」も蠟引きにしてみました。
細かく裁断された越前民芸紙を漉き込んであるA4用紙。
蠟引きするとベース紙は半透明に、漉き込み紙はくっきり濃くうかびます。


この控えめな漉き込みバランス、
そして透けている紙は無条件にかわいい!

蝋を加えたことで、ハリのある紙となり手帳の仕切りとしても。
油性ペンや顔料ペンで書きこみも可能。

いろいろないろで、いろいろな形を作りました。
今回は、紅葉は風に舞い霜おりたつ冬の気配まぢかな晩秋のうつろいを
2種の型抜きで。

「もうすぐふゆだね」
「そうだね」

来月のグリーティング期間もこの続きで、いろいろな彩りを。

色にいざなわれて開ける扉の向こうにひろがる、
濃く淡く美しい万年筆インクやさまざまな筆記具、紙の世界。
文具の楽しみの入り口となれば幸いです。

キリスト教暦での収穫感謝祭(11月下旬)が終わればそれが合図、
光陰矢の如し、を上回るスピードで驚愕値上がり前の三つ葉をクリスマス前までにごっそり買う&自己水耕栽培や冷凍保存で年始を乗り切ることが年内最終ミッションの朝比奈斎(かまぼこも忘れずに)でした。ではまた。

帳記事掲載文具

朝比奈さんからのお知らせ

◆絶賛更新中!X(旧:Twitter)
@asahinaitsuku

◆新たに開設しました!Instagram
@asahinaitsuku

◆目下鋭意準備中!
朝比奈斎の玉石参房
※別ページへ移動します。

この記事を書いた人

朝比奈斎
朝比奈斎
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

Twitter:@asahinaitsuku
Instagram:@asahinaitsuku