新型ウィルスの感染拡大という事態が発生してから不要不急の外出が憚られるようになり、仕事も在宅ワークという新しいスタイルが導入されるなど、これまで当たり前だった日常がわずかな期間で大きく変化し、個人差はあっても自宅で過ごす時間が増えました。
これがきっかけとなって、時間を手紙などに費やす人が増えて、各文具メーカーでは便箋や葉書の売り上げが伸びているようです。
現代社会において、電子メールは利便性や速効性に優れた通信手段として、ビジネスやプライベートなど、私たちの生活に欠かすことができない存在になりました。
電子メールで扱われる文字は誰もが読みやすく、写真などの情報を添えて送ることも可能ですが、言葉にできない人間の感情までは添付することはできません。
不揃いの文字には、手書でしか表現できないアナログの良さがあり、ひとりひとりの人間同士が向かい合う血の通ったコミュニケーションこそが手紙の醍醐味なのです。
手書きの手紙の良さを多くの人が理解していても、いざ便箋を前にして書いてみようとすると、「拝啓」「敬具」といった手紙特有のルールが重荷になり、やっぱり面倒くさいと感じてしまい、そのままペンを置いてしまう人が少なくないかもしれません。
この、面倒くさいと思えるちょっとしたひと手間がアナログの醍醐味で、フィルムカメラやレコード、そして万年筆にも通じる楽しみがそこにあります。
といってもそれほど難しい事ではありません。
手紙やハガキは、「前文」「主文」「末文」「後付」の4つ要素で構成されていて、ビジネス文書や目上の方へのお礼状でもなければ、すべて”前略”というワイルドカードを「前文」に使い「面倒くさい頭語は勘弁して下さいね」との意を伝えれば、後はもう自由です。
いまの時代なのでいきなり「主文」から書き始めるのもいいかもしれませんが、わずか2文字なのでここは、普段の電子メールとの違いを大人の格好良さと合わせて前面に出しておきましょう。
本文は、普段SNSに投稿するような近況などを特定の相手(個人)に向けて書き、おそまつさまとか取り急ぎといった意味を持つ”草々”で「末文」を結べば立派な手紙文の完成です。
One more Think!
万年筆やインクが好きな「逸品の小部屋」の読者の方であれば、「後付」に日付や差出人の名前に加えて、手紙を書くために使ったお気に入りの万年筆とインク名を記しておけば、万年筆の本数とインクの数だけ、書くことがさらに楽しくなるはずです。
すると、思いがけずこんな返信があるかもしれません?
「拝復 そのインク私も大好きです」
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この記事を書いた人
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文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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