世界の筆記具ペンハウス

東京文具の展示会レポート

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 2024年7月、東京では国際文具・紙製品展ISOTをはじめ、ベンチャーメーカーが集うFRAT#6など文具にまつわる展示会が開催されました。
昨年はコロナ禍明け1年目という状況下での開催でしたが、今年からはいよいよ本格化、昨年以上の賑わいと活気を感じます。
ただし、これらの展示会は「文具女子博」や「〇〇文具祭り」といった、一般ユーザー向けの販売会ではなくて「B to B」(Business to Business)というメーカーと小売店の商談会という位置づけで、一般ユーザー(消費者)は原則、入場することはできません。
しかし、メーカーサイドにとっては、自社製品をPRできる絶好の機会とあって、期間中は多くのバイヤーを集めていました。

国際文具・紙製品展ISOT

今回、36回目を数える「国際文具・紙製品展ISOT(イソット)」には、国内外から多くのメーカーが出展します。近年ではアジアからの出展も多く、国際感がさらに加速しています。

 
 「国際文具・紙製品展ISOT」では、毎年各社からエントリーされた製品の中から、サステナブル部門・機能部門・デザイン部門、それぞれ5点が日本文具大賞に選ばれて、展示会の初日にあたる7月4日の「日本文具大賞表彰式」にてグランプリが発表されます。
今年2024年のグランプリには、サステナブル部門から株式会社日本理化学工業の「キットパス バイ アーティスト(エクル)」が受賞しました。

 
 お米を精米した米ぬかを主原料とした、安心・安全な筆記具で、ガラス面のようなつるつるしたところにも、発色よく滑らかに描けます。さらに、書いたあとから濡れた布で消すこともできるので、子どもにも安心して使える優れものです。

 惜しくもグランプリには届かないながらも、KA-KU大阪(株式会社酒井)の「8月の夜」は自分で手軽にインク配合を楽しめるキットと女性に親しみやすいコスメを連想させるポーチにまとめたアイデアとパッケージは斬新なものがありました。
また、同会場(東京ビッグサイト)では、他の展示会も併設されて今年初めて開催された「推し活グッズEXPO」では、プラス株式会社や株式会社リヒトラブなど文房具大手メーカーはこちらのブースに出展、文房具のカテゴリに収まらない新しいユーザーの獲得に向けて、商品を展開していました。
こういったメーカーが目指す方向性が垣間見えるのも、展示会の魅力です。

FRAT#6会場レポート

 今年で6回目を迎えるFRATは、文具と雑貨の作り手と売り手がフラットな関係で手を携えて、「どうすればユーザーに魅力を伝える事ができるか」を一緒に考える場として、大手文具メーカーではないベンチャーメーカが中心となってスタートしました。
2024年7月4日と5日の2日間で過去最高のブース数と昨年を上回る来場者数を記録、業界でも注目を集める展示会です。
今回は、FRAT#6を会場から、それぞれブースの代表の方に今回のイチオシアイテムを紹介してもらいました。

Beahouse(ベアハウス)

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「フリーサイズブックカバー」
 どや文具ペンケースや自由名刺入れなど、ユーザーの視線にたって生み出されたちょっとユニークだけれど実用的なプロダクトで人気を集めているBeahouse(ベアハウス)。
FRAT#6では、ロングセラーの「フリーサイズブックカバー」をバリエーション豊かに展開。どんなサイズの書籍でも包んでしまうブックカバーに、猫柄デザインも仲間入りして新しいファンを獲得しています。すでに愛用しているユーザーでも、もうひとつ欲しくなるデザインです。

ロンド工房&るうの

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「Dunn×がま口ペンケース」
 クリエイターるぅさんのブランド”るうの”の「がま口ペンケース」と薄い革製品をプロデュースするロンド工房がコラボレーションした、革製のがま口ペンケースが登場。定番のオシャレでカワイイ布製のがま口ペンケースとは趣が異なるちょっぴり大人感覚で楽しめるモデルです。

山本紙業株式会社

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「万年筆推薦紙見本帳」
 2024年9月に発売される「万年筆推薦紙見本帳」がひと足早く会場でお目見えしました。
今回は手軽に持ち運べるA5サイズにリニューアルして、それぞれ紙質の異なる「万年筆推薦見本帳vol.1」(THIN PAPER/三善トモエリバーS/チャンピオンコピー/タイプライター用紙/スムーズオニオンスキン)と「万年筆推薦紙見本帳vol.2」(ライトファース/スライトホワイト/ソリスト/ひつじ雲便/スムースアートペーパー)の2種類がラインナップに加わりました。
また、アナログな複写式メモ帳「コピペメモ」がリニューアルされて、お手頃価格になって再登場しました。

株式会社あたぼう

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「飾り原稿用紙ノート」
 原稿執筆の新しい可能性を生み出した株式会社あたぼうの飾り原稿用紙に新しく「飾り原稿用紙ノート」が2024年5月に発売されました。水平開きノートで話題の中村印刷所の協力で生まれたこのノートは、5種類の飾り原稿用紙を各10枚ずつが製本されています。
さらに、定番と異なる色と紙で構成されて既存の飾り原稿用紙よりも強度がアップ、これからはノートとして持ち歩ける「飾り原稿用紙」が楽しめそうです。

コーリン鉛筆

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「mizutamaさん×コーリン鉛筆コラボ色鉛筆」
 タイから新しいプロダクトを携えて来日したコーリン鉛筆。
今回の新作は、人気イラストレーターmizutamaさんの書き下ろしデザインのパッケージとこの製品だけのオリジナル色「いちごジュースの色」(mizutamaさん考案)と「あのラムネケースの色」(文具店・ぷんぷく堂さん考案)を含む12色のコラボ色鉛筆が登場。
おもわず、ジャケ買いしたくなるパッケージも魅力な12色色鉛筆です。

ハイモジモジ

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「TAPE STATION」
 鉄道マニアだけでなく鉄道会社も舌を巻くほど細部にまで鉄道愛の詰まったマスキングテープです。
「乗り鉄」「撮り鉄」「見る鉄」など鉄道ファンにもそれぞれ楽しみ方が存在しますが、デスクで鉄心を満たしてくれる「TAPE STATION」は新たに「貼り鉄」というカテゴリを生み出しそうなプロダクトです。
駅舎や車両など、どのモデルも大人から子どもまで楽しめるアイテムとしていま、さらに人気を集めそうです。

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LETS STATIONERY GOODS

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「LETSクリアシステム手帳」
 2021年に生まれたばかりの新しい文房具のブランド、LETS STATIONERY GOODSの人気アイテムはこの透明なカバーを採用した「LETSクリアシステム手帳」。本来は中身を隠すことがスタンダードなシステム手帳において、あえて「魅せる」ことをコンセプトにおいた新しいスタイルは、推し活など自分を演出できるシステム手帳として、大手老舗ブランドを脅かす存在になりそうです。

文具愛好家の考察

 
 ISOT、FRATの開催期間中には、全国から多くのバイヤーや業界関係者がここ東京に集結した1週間でした。
ISOTは近年、海外からの出展にシフトしている傾向がみられる中、FRATの大手文具メーカーの製品でないベンチャーメーカーの個性的なプロダクトに特化した展示会として、大手販売店のバイヤーからも注目を集めているように感じました。
これらの展示会を見てまわり、かつて「文房四宝」といわれた、書斎で使う道具(=文房具)が、カテゴリーに縛られない柔軟な使い方、例えば「推し活」のためのツールとしての用途を見いだすなど、「文房具」の新しい可能性を感じさせる展示会だったと思います。 

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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