世界の筆記具ペンハウス
文具好きの小部屋

バイブルサイズの極厚ノートビブリオン

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 出版不況とか、活字離れとか、本(書籍・雑誌)に纏わるお話しをすると、なにかと暗い話題が多いのが昨今の出版業界です。
実際、紙媒体の書籍や雑誌の販売額は低下傾向にあり、代わって電子媒体の、いわゆるKindleやKodoなどの電子書籍が伸びていて、トータルすると2018年を底にして、2019年以降は上昇傾向にある現状です。(全国出版協会・出版科学研究所調べ)
ということなので、一概に「活字離れ」と言い切るのはちょっと違うのかもしれません。

 そんな本屋さんの店頭をよく見てみると、恐ろしく分厚い書籍がベストセラーとなって平積みされている光景を見るようになりました。例えば「独学大全」読書猿著(ダイヤモンド社)や「戦略読書」三谷宏治著(ダイヤモンド社)をはじめ、モレスキンノートブックユーザーにはおなじみのブルース・チャトウィンの「ソングライン」(青幻社)は2009年の発行から、重版が繰り返されるロングセラーになっています。
そしていま、本屋さんの店頭を飾っているのは京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」最新刊、「鵺の碑(ぬえのいしぶみ)」です。
京極夏彦といえば、不気味な妖(もののけ)が描かれた表紙とぶ厚いページ数に片手で持つにはちょっと重すぎる書籍としても有名です。 こんな怪しげな装丁ですが、作品中に妖怪や魑魅魍魎の類いや怪しげな超常現象は出てこず、至って理詰めのストーリーで展開されて、前半に散りばめられた伏線が、後半一気に繋がり快刀乱麻を断つがごとく解決へ向かう痛快さが魅力の京極夏彦です。

Pentビブリオン

さて、きょうの文具のおはなし、「世界の筆記具ペンハウス」のPentブランドから発売されている「Pent by 大和出版印刷 パピルスノート NEO ビブリオン」(以下ビブリオン)は、京極夏彦の小説に匹敵するページ数を誇るノートブックです。
そんな、ビブリオンが今回より使い易くリニューアルされました。
超ド級の厚みはそのままに、万年筆の筆記でも裏抜けや滲みの少ないことに加えて、クリーム地の「パスピエクリーム」紙に変更したことで、あとから読み返したときの視認性がさらによくなりました。

詳しいスペックについては下記の公式サイトを参照。

https://www.pen-house.net/item/46950.html

ビブリオンの使いかた

 聖書(バイブル)を彷彿させるノートブック「ビブリオン」は1冊に844ページという他にはないボリュームを誇ります。
1日1ページの「ほぼ日手帳」のような用途でも、2年以上も使えるうえに、ページには4行毎に太い罫線で7つのブロックに区切られているので、1ページを1週間というスパンでも使えます。
これなら1冊で844週間分の容量になり、年に換算すると約16年分に値します、市販されている常用日記の長いものでも10年ですから、それよりもさらに長い期間の記録をこの1冊に記すことできて、コストパフォーマンスの上でもリーズナブルなノートブックといえます。
日記の用途以外でも、イラストやアイデアノートとして、また創作のためのツールとしてもページ数を気にすることなく、書き連ねていけます。
もし、思いつくまま物語を綴り、最後のページを書き終えたときには、京極夏彦の「鵺の碑」(ノベルズ版は832ページ)を越える大作を書き上げることだって可能です。

イタリアの伝統職人が手掛ける工房IKUNICO

 どちらかといえば、デスク向きの「ビブリオン」ですが、使い込んでいくと自宅だけではもったいなくなって、外へも持って出かけたくなります。
そんな「ビブリオン」に相応しい革製カバーがオンラインショップに用意されています。
イタリアの革職人が手掛ける工房IKUNICO(イクニコ)の「Pent×IKUNICO パピルス ビブリオン ノート本革カバー」は、革の持つ質感を存分に楽しめて、外へ連れ出すのが楽しくなるカバーに仕上がっています。
「ビブリオン」の旧ノートブックを以前から使っていましたが、今回のコラム執筆にあたり「Pent×IKUNICO パピルス ビブリオン ノート本革カバー」をちょっとお借りしたところ、あまりにも「ビブリオン」の相性が良くて、正直返却するのが惜しくなっています。

文具愛好家の考察

 私的に、本を読むことと、文字を記すことはよく似ていて、はじめの一歩がとても大きなハードルですが、それを乗り越えると、ページ数の多い少ないに関わらず付き合っていけるようになります。
はじめて本にふれた頃は比較的ページ数が少なくて読みやすい本を選んでいたとしても、読む楽しみをおぼえたら、ページ数の多い本でも、すんなり読み進められるようになれるはずです。
「ビブリオン」のような超ド級ノートブックでも、書くことが習慣化すると難なく書き進められるようになり、書き終えたときの達成感はひとしおで、大長編の小説を読み終えたときの感動と似ているのかもしれません。

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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