世界の筆記具ペンハウス
雑誌「趣味の文具箱」連載でもお馴染みの文具ライター・武田健さんによる「読みもの」コンテンツ。総保有インク2000本超えの自他共に認める万年筆インクコレクターである武田さん。万年筆とインクを中心に、文具にまつわるお話を連載していただきます。

パステルカラーがリバイバル!~ラミー サファリ パステル

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歴史は繰り返すという言葉があるけれども、流行というものも歴史と同じく繰り返すものらしい。子どものころ遊んだ遊びが大人になったら今度は少し形を変えてまた話題になるということはままある。昔流行した食べ物が爆発的ヒットとなってリバイバルすることも少なくない。

例えば、最近の例だとタピオカがそうだ。タピオカなんて、日本に進出した数年前にすでにぼくは食べていたし、コンビニにも普通に以前からタピオカドリンクはあって、たまに飲んでいた。ところが、なぜか、今頃になって、まさかの空前のタピオカブームにびっくりしている大人も多いのではないだろうか。

音楽にしても、少し前までは70年代、80年代という、まさにぼくが青春真っただ中だった時代の音楽が再注目されていたし、昨年からは、AORというぼくが高校生だった時に夢中になったジャンルが海外で話題になり、それが日本にも影響しているという話を聞く。山下達郎や竹内まりやといったアーティストが海外のマニアの間で非常に評価が高いというのも、そんなリバイバルの波の影響なのではないかという気がする。

さて、文具業界においても、最近はちょっと昔のものが流行りつつある。そもそも、文房具というアナログなものが今でも根強い人気を持っているのは、やはりデジタルに飽きつつある人たちが戻ってきているからなのではないかとぼくは思っていて、万年筆の世界でも昔のものが復刻されているのをよく目にする。

最近それを一番感じたのが、今日ご紹介するラミーのサファリシリーズだ。そこで、今日はそんな昔懐かしい色を再現したラミーのサファリをご紹介しよう。

パステルカラーの3色展開

ラミーから毎年限定色で出ているサファリシリーズ。その年にしか製造されない色なので、マニアの間では垂涎もののシリーズだ。毎年集めて、ずらりと並べて楽しんでいる人もいるくらい。

ぼくも、一時期、サファリはずっと集めていて、昔の限定色をネットで購入することもあったし、中古のお店に出るとすかさずチェックしてゲットしたりもしていた。最近はちょっとそんなラミー熱も冷めてしまったのだが、今年のサファリは無視することはできなかった。

とはいうものの、実はぼくは最初は「ふーん、パステルカラーねぇ。まぁ、昔は好きだったけど、今はパステルっていう柄でもないし。50過ぎのおじさんがパステルカラーの万年筆を持つっていうのもどうよ?」と勝手に斜に構えて静観していた。

ところが、である。やはり文具売り場に行くと、ひときわそのパステルカラーが目立つんである。しかも、今回はまさかの3色展開!
無視したくても、無視できなくなってしまい、ついに、ぼくは誘惑に負けて(勝ち負けの問題ではないのは重々承知)、手に取ってしまったのだ。

万年筆というのは、見なければ、物欲もわかない。
ところが、見てしまうと、もう、だめ。
さらに実物を手にすると、ほとんどの確率で買うことになる。
自分がまったく興味のないデザインや色であったら、そんなに刺さることはないのだけれども、少しでも心動かされる軸だったら、目にした時点で、手に取った時点で、ほぼ購入決定となる。

パステルカラーも同様だ。
パステルカラーは、ぼくが高校時代を過ごした1980年代に大流行した。文房具の世界でもパステルカラーを使ったものがたくさん出ていたような気がする。当時はクリアファイルなんていうおしゃれなものはなかったけど、下敷きとかノート、ルーズリーフ、鉛筆、シャープペンなどでもパステルカラーのものがたくさん出た。そして、ぼくは当時からペパーミント色が大好きだったので、そういう色の小物を見ると、集めずにはいられなかったのだ。
だから、パステルカラーのサファリを手にしたとたん、当時の甘酸っぱい、でもちょっと苦い思い出がよみがえった。

そうなると、「50過ぎのおじさんが」などという無意味な抵抗感なんて、飛んで行ってしまうのだ。日ごろから、趣味趣向に年も性別も関係ない!と豪語しているではないか!と心の叫びが聞こえてくる。

このサファリが発売されたころ、とあるライター仲間が、「ケンさんはきっとこのブルーマカロンは絶対に買うんじゃない?」と言っていたのだが、ぼくはその時もかたくなに「いやいや、パステルカラーはちょっとねぇ」と渋い返事しかしていなかった。

なのに、だ。

3色全部見たら、ブルーマカロンだけじゃすまなくなってしまった自分が恐ろしい。

3色そろえる魅力

では、その今年発売された3本のサファリをもう少しじっくりと見ていくことにしよう。まずは、ぼくが最初に買うだろうと思われた「ブルーマカロン」はこちら。

写真に撮るのは非常に難しいのだが、本当に薄いスカイブルーで、爽やかな初夏の風を思わせる色だ。柔らかい色なので、おとなしめだが、パステルカラーというのは、独特の主張もしている感じがする。おとなしいけれども、自分の芯はしっかりと持っているぞ!という感じだろうか。「ブルーマカロン」というネーミングも物欲をくすぐるではないか!

「ミントグリーン」はまさにミントのようなすがすがしさを感じる色味になっている。すっきりとした印象はまさにミントの清涼感を感じる。でも、寒々しく感じないのは、基本的にパステルカラーだからなのだろう。この手の色の万年筆というのは、見た目が涼しいから夏限定で使いたいと思ってしまいがちだが、このサファリのパステルカラーは、3色とも温かみがあるので、これからの季節でも手軽に使えそうだ。

そして、「パウダーローズ」は非常に上品なパステルピンクだ。そんなに派手なピンクではないので、ピンクに抵抗がある人が持っても、これだったらそれほど気にならないのではないだろうか。

黒に合うパステルカラー

でも、最近ぼくはパステルカラーの文具というものをあまり持っていないことに気づいた。選ぶ色はどれもビビッドな色ばかり。だから、どんなノートと組み合わせて持てば良いのだろう?と思っていろいろと試行錯誤したのだが、以前ご紹介したPentのオリジナルノートの表紙が黒だったのを思い出し、合わせてみたら、見事にマッチングした。

淡い色合いは黒のノートと一緒に置くと、非常に引き立つ。パステルの良さを出したいと思ったら、一緒に持つものはこういう黒系のものが良いだろう。

カジュアルだけど実用的なクリップとインク窓

サファリはグリップが持ちやすいように設計されていて、万年筆初心者にもおすすめの万年筆だし、実際にぼく自身も初めて購入した舶来万年筆はサファリだ。お値段も手ごろだし、色も豊富にあるし、書き心地も良いので、万年筆初心者には集めやすい(もうこの時点で集めること前提なのだが)シリーズでもある。
それなのに、たくさん万年筆を持っている人でもサファリを買ってしまうのには、いろいろなわけがあるんじゃないだろうか。
例えば、クリップを見てほしい。

シンプルだけれども、しっかりとしたホールド感が期待できるクリップは、デニム生地のポケットにもしっかりと刺さる。
もし、まだ学生時代はいていたパステルカラーのジーンズ(当時はカラージーンズが爆発的に売れた時代でもある)を持っていたら(そしてまだはけたら)、ポケットにこのサファリを挿してでかけたかもしれない。
それぐらいしっかりとしたクリップなのである。

さらに注目したいのは、アルスターシリーズにもついているインク窓。

ここからインクの残量を見ることができるのだが、そういう遊び心もまたラミーサファリの魅力なんじゃないかと思う。

パッケージにも注目

そして、今回のシリーズ、パッケージもオリジナルだ。通常のシンプルなパッケージではなく、パステル模様の仕様になっている。

このパステルのムラの入ったグラデーションが美しいボックスのふたを開けると、その中にパステルカラーのサファリが入っているというのは、なんだか夢があって良い。ギフトとしても喜ばれるのではないだろうか。

3本揃えて着せ替えを楽しもう

当初は、買うとしたら「ブルーマカロン」だけだろうと思っていたのに、他の2本も購入してしまったのは、価格的に非常に手が出しやすいという理由もあるのだが、他にも動機があった。
この「ブルーマカロン」、「ミントグリーン」、「パウダーローズ」はそれぞれ色は違うものの、同じトーンで統一されているので、様々な組み合わせができるという点が魅力的だと思ったからだ。

万年筆は、同じのばかりを使っているとだんだんと飽きてしまうという人も中にはいるだろう。しかし、このように、同じシリーズ、同じ系統の色を揃えることで着せ替えが可能となり、いつでもフレッシュな気持ちで万年筆を楽しめるのだ。

これからの季節を彩るパステルカラー

秋から冬にかけて、様々な行事が目白押し、という人もいるだろう。寒くなる時期ではあるけれども、そういう楽しい行事があれば乗り越えることができるはず。そして、そんな時にそばにいて欲しいのは、やっぱり気持ちがわくわくするような筆記具だ。

ラミーの2019年限定カラーのサファリパステルは、まさにそんな気分を高めてくれる万年筆だといえるのではないだろうか。

 
<この記事に登場する万年筆>
ラミー 万年筆 2019年限定カラー サファリ パステル

この記事を書いた人

武田 健
武田 健
文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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