2021年8月に「京都手書道具市」という、手書きにこだわったペンや紙などを取り扱うメーカーや小売店など28社を集めた文具のイベントが開催されました。
コロナ禍の中での開催とあって、チケットの販売は事前申し込みのみという事になり、2日間のチケットは早々に完売、チケットを手にする事ができた文具ファンで賑わいました。
「ほぼ日手帳」や「モレスキン」などの手帳ブームからはじまった、この文房具のムーブメントは、パイロットコーポレーションの低価格万年筆KAKUNO(カクノ)やカラフルな万年筆インキ色彩雫(イロシズク)の発売で、一気にユーザー層を拡大させると同時に万年筆インクを趣味のカテゴリーへと昇華させました。
そこから、微妙な書き心地の違いを楽しむ「紙」の愛好家や、カリグラフィーやガラスペン筆記など、日常とはちょっと異なる「書く」を楽しむユーザーが生まれて、ひとくちに「文房具」という枠に収まらない世界がさらに広がった感を覚えます。
(※メーカーにより「インク」「インキ」と表記が異なりますが、以下メーカーを指定しない場合はインクで統一します)
現在の万年筆インクブームのきっかけとなったのは、神戸ナガサワ文具センターが2007年に発売したオリジナル万年筆インク「神戸インク物語」でした。今回のイベントにはそれにつづく新しいシリーズ「オノマトペインク」の新色2色が、会場で発表と同時に発売されて来場者の注目を集めていました。
中でも、フィルムカメラで撮影するシーンをインスパイアした「かしゃかしゃ」は、モノクロ写真を思わせるグレー系インクが、今回のイベントでは他の色を押さえて1番の売れ筋になっていました。
オリジナル万年筆インクといえば「世界の筆記具ペンハウス」の彩時記シリーズもそのひとつで、お目当てのインクを求める多くの人達で賑わいました。
なかでも、今回はナガサワ文具センターの「オノマトペインク」と同じくグレー系の万年筆インク「風雪海(ふゆうみ)」が大人気で、会場では意図せず奇妙なシンクロニシティが生まれていました。
この他、ペンハウスのブースでは、オリジナルブランド「Pent」の万年筆シンフォニーシリーズや、大西製作所&ガラス工房まつぼっくりとコラボしたキャップ付きガラスペンなども評判で、常にファンがブースを囲んでいる状態でした。
さらに、今回のイベントでは、新製品ではないちょっと意外な商品にも注目が集まりました。
コンバーターの先に繋ぎインクボトルから直接インクを吸い上げるツール「ハミングバード」が初日で完売してしまい、翌日追加搬入するという一幕もありました。
万年筆インクボトルの底に残ったインクを最後の1滴まで無駄なく大切に使い切る「ハミングバード」は、このイベントに相応しいアイテムとして、多くの手書きファンの心を掴んだのかもしれません。
新型コロナウィルスの感染拡大で、在宅ワークや外出を控える生活を余儀なくされている現在、ステイホームでも手軽に楽しめる「文房具」は、手書きの醍醐味を教えてくれるツールとして、改めて見直され始めているように感じた今回の「京都手書道具市」でした。
<この記事に登場する文具>
・Pent〈ペント〉 万年筆 シンフォニー アダージオ
・Pent〈ペント〉 by 大西製作所&まつぼっくり アセテート キャップ付きガラスペン
・Pent〈ペント〉 ボトルインク 彩時記
・Pent〈ペント〉 インク吸入器アダプター ハミングバード
この記事を書いた人
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文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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