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ぺんてるマルチ8の魅力

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8本分の筆記具を1本で持ち歩けるぺんてるマルチ8


 1987年に、ぺんてる株式会社(以下ぺんてる)から、8種類の筆記具を1本にまとめたホルダータイプのシャープペンシル「マルチ8」(PH801)が発売されてからもう40年近くにもなり、当時まだ生まれていなかったというユーザーがいるかもしれません。
当初は、製図家向けの「マルチ8」(PH801)と、デザイナー向けの「マルチ8」(PH802)と、ターゲットの異なる2つのモデルが発売され、翌1988年にはボールペン機能が加わった「スーパーマルチ8」(PH803)が登場、いまでも多くの文房具ファンから高い支持を集めている国民的な筆記具になっています。
きょうは、愛されつづける多機能筆記具ぺんてる「マルチ8」シリーズの魅力をお届けします。

マルチ8の特徴

 「マルチ8」は現在、3つのタイプが販売されていますが、すべてのシリーズに共通するのは、1本で8本分の筆記具としての機能を備えています。また、別売のリフィルを使うことで、用途や好みに応じて自由にカスタマイズできることも大きな特徴です。

マルチ8

いまも愛され続けているマルチ8

 発売から40年近くが経った現在でも定番モデルとして、文具店の店頭に並ぶ「マルチ8」。
当時、デザイナー向けに発売されたこともあり、デザインや設計の図面など、コピーした時に写らないよう「注釈」などを書き込むためのノンコピー芯が基本セットに含まれていて、当時のニーズを窺い知ることができます。
近年のモデルでは、ジアゾンノンコピー芯がピンク芯に変更されて、いまのニーズに沿った構成で発売されています。

スーパーマルチ8

さらに身近な筆記具になったスーパーマルチ8

 マルチ8をより一般ユーザー向けに作られたのが「スーパーマルチ8」です。
1本に8種類の芯が納められていることや、本体のデザインはほぼ同じですが、中の芯が刷新されて、カラー芯(色鉛筆)に加えて、ビジネスやプライベートでも使用頻度が高い油性ボールペン芯(黒・赤・青)が搭載されました。
普段からボールペンをよく使う人には、こちら「スーパーマルチ8」がオススメです。

アートマルチ8

旅のスケッチが手軽に楽しめるアートマルチ8

 2024年12月本体デザインとカラー芯の構成が刷新された新しいモデル「アートマルチ8」が登場しました。
名前が示す通り、アートに特化したカラー芯8色で構成されていて、クリアボディの軸を採用したことで、中の芯(色)がひと目でわかる視認性に優れたモデルです。
旅先で、絵手紙やスケッチを楽しむひとには、最軽量のお絵かきセットとして大きなメリットといえます。

イラストレーターハヤテノコウジさんの作品

 2024年12月に開催されたアートマルチ8発表会にも登壇したイラストレーターハヤテノコウジさんに、「アートマルチ8」を使って、移動中の列車の中で作品を描いていただきました。

アート(美術)と聞くとなんとなく尻込みしそうですが、こんなふうに、スケッチを気軽に楽しめるが「アートマルチ8」の真骨頂と言えるのかもしれません。 気軽にスケッチがたのしめるスケッチジャーナルについては、彼の著書「スケッチジャーナル」(GB出版)と、Instagram(@hayatenokouji)でも紹介されているので、こちらもぜひ参考にしてください。

マルチ8シリーズカラー見本

 現在、発売されている各マルチ8の芯(カラー)見本を作成してみました。
自分にピッタリの組み合わせは?

マルチ8

赤 / 青 / 黄 / 緑 / 茶 / 橙 / ピンク/ PPCノンコピー芯

スーパーマルチ8

赤 / 蛍光ピンク / 蛍光イエロー / PPCノンコピー芯 / ボールペン(黒 / 赤 / 青) / 鉛筆(HB)

アートマルチ8

赤/青/茶/橙/黄/黄緑/スカイブルー/ピンク

自分だけの「マルチ8」をカスタマイズ

リフィル芯

 マルチ8シリーズには17種類のリフィル(替え芯)が販売されていますが、すべてのマルチ8シリーズとの互換性が保たれて、後から自分の用途にあった芯をカスタマイズすることが可能にしています。
「スーパーマルチ8」には、3色のボールペンが付属していて、これは流石に他のモデルと互換性はないと思い込んでいましたが、ぺんてるの広報様に取材したところ「ボールペン芯リフィルもすべてのモデルに対応していますよ」と教えてもらい、試してみたら(疑っていたわけではありませんが)「アートマルチ8」「マルチ8」(PH802)にも、ちゃんとマッチしました。

旅行のお供に持って行きたいマルチ8

旅先で大活躍のマルチ8

 旅先に、「マルチ8」3本まとめて持っていく方法が手っ取り早いですが、自由なカスタマイズができる筆記具なので、自分だけの1本をまとめてみるのも楽しいかな?と思います。
ボクの場合、旅先から友人に絵葉書を送りたいのでボールペン芯は必須、観光案内所で手に入るマップにはいろいろと書き込みもしたい。そうすると、赤や蛍光カラーも外せません。
<写真>スタマイズ見本「自分オリジナルのマルチ8を作る」
それらのわがままを盛り込んでセレクトした「カスタマイズマルチ8」は次の通り。
ボールペン(黒・赤)/赤芯/青芯/緑芯/蛍光ピンク芯/蛍光イエロー芯/HB芯
こんな風に、旅先の情景を思い浮かべながら、カスタマイズが楽しめるのも「マルチ8」の魅力です。

自分オリジナルのマルチ8を作る

 それらのわがままを盛り込んでセレクトした「カスタマイズマルチ8」は次の通り。
ボールペン(黒・赤)/赤芯/青芯/緑芯/蛍光ピンク芯/蛍光イエロー芯/HB芯
こんな風に、旅先の情景を思い浮かべながら、カスタマイズが楽しめるのも「マルチ8」の魅力です。

セットに付属している芯削り器

セットに付属している芯削り器

 ちょっと余談になりますが、マルチ8シリーズには、カラー芯リフィルがセットになったモデルもあります。
ヘビーユーザーには嬉しい内容に加えて、もう一つ付属しているのが芯削り器です、何気ないオマケのように見えますが、こちらは、世界的に評価が高い中島重久堂製の削り器で、2015年にグッドデザインアワードを受賞した鉛筆けずり「TSUNAGO」を作ったブランドといえば、思いつく人も多いはずです。
付属品一つにも、妥協を許さないこだわりが感じ取られます。

文具愛好家の考察

 「スーパーマルチ8(PH803)」シリーズは、世界中で愛されている多機能筆記具として、1989年にグッドデザイン賞を、2000年にはロングライフデザイン賞を受賞しています。
いい道具の基本は、ベストセラーではなくロングセラーと考えているボクにとって「マルチ8」はその代表と言っても過言ではない、今では手放せない筆記具の一つになっています。
日常生活はもちろんです、旅先に「マルチ8」を1本加えるだけで、「メモ」「記録」「アート」といった楽しみ方の可能性がさらに広がるはずです。
今回の記事を書きながら、ハヤテノコウジさんの著書「スケッチジャーナル」を参考に、ちょっぴりアートめいた楽しみをはじめてみたくなりました。

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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