先週に引き続き、今週も紙もののご紹介。先週ご紹介したふたふで箋は、200文字で程よい文字の量なので気軽に扱える、と書いたが、いつも気軽に文章を書きたいというわけではない。
時にはがっつりと、じっくりと、ゆっくりと文章をしたためたいという時もあるだろう。そんな時はやはり200文字のふたふで箋よりも、400字詰めの方が使い勝手は良い。
そこで、お勧めしたいのがふたふで箋の兄貴分的存在の「飾り原稿用紙」だ。
「飾り原稿用紙」は現在、「桃雲流」「黒雷公」「港煉瓦」「鋼導管」「波抹茶」「金鶯錯」「碧翡翠」「蔓葡萄」の8デザインが用意されている。
だから、自分の書きたい内容やインクの色などに合わせてデザインを選んでみるというのも良いだろう。
すでに前回、「ふたふで箋」で「波抹茶」「金鶯錯」「碧翡翠」「蔓葡萄」の4種類の詳細はご紹介したので、今回は、現時点においては飾り原稿用紙だけのデザインである残りの4柄について具体的に見ていくことにしよう。
まずは、「桃雲流」。
一見凝ったデザインに見えるけれども、実際には非常にシンプルで、おしゃれな仕上がり。まるで雲が流れていくかのような曲線が流麗で、文字を書かずに、ただその柄を眺めているだけで、気持ちが良くなってくる。
「黒雷公」は文字通り黒色の飾りがついている。
モノクロのシンプルなデザインで、そこが逆にモダンな感じがする。どんな色にも合うし、どんな内容を書いても、その内容を引き立ててくれるような気がする。黒なので、色見本で使ってみるのも面白いだろう。
モノトーンだし、シンプルなデザインだからこそ、じっくりと思考をまとめたい時などに使うと良いだろう。
「港煉瓦」は、その名の通り、レンガ色の煉瓦が積まれているようなデザインになっているのだが、この比率が実に絶妙で、四隅の大きめの煉瓦ともぴったりと合っている。また、5文字ごとのポイントにも小さな煉瓦が使われており、邪魔にならず、非常に便利だ。
なお、この原稿用紙には日本の茶色好きの人たちで作っている「日本茶色普及協会」のシールが貼られており、その遊び心も面白い。
さて、飾り原稿用紙の中で最も新しく、今年の夏に発売された「鋼導管」はそれまでのシンプルなデザインとはまったく違う、ある意味画期的な原稿用紙と言って良いだろう。
まずその凝ったデザインが非常に面白い。ぼくはこちこちの文系人間なのだが、理系の人たちにも受け入れられるようなデザインになっているところが面白い。この配管をイメージしたデザインに、ブルーグレーの色のマッチング具合は秀逸。しかも、すべてがアンシンメトリーで作られているので、それを眺めているだけでも楽しい気持ちになる。
魚尾の下部が時計盤になっているところにも注目したい。
さて、これらの飾り原稿用紙は、400字詰めなので、普通の原稿用紙として使うのに最適だ。例えば、読書感想文なんていうのはどうだろうか。
大人になるとなかなか読書感想文を書くということもないと思うが、この飾り原稿用紙だったら、その作品のイメージに合った色や柄の飾り原稿用紙を選んで、それに書いてみると良い記録となるのではないだろうか。
読書感想文だけではなく、柄に合った散文的なものを書いてみたり、あるいはエッセイをまとめてみたりするのにも飾り原稿用紙は最適だ。その柄を見ていると、何となく文章を書きたいという気持ちを起こさせるので、普通の原稿用紙よりも創作意欲を掻き立てられるのではないだろうか。また、400字という制限があるから、その分量で起承転結を考えながら書いていくという文章修行にもなる。
飾り原稿用紙はA4サイズなので、ただ普通に原稿用紙として使うだけではなく、たとえばプレゼントの包装紙として使っても良いのではないだろうか。文庫本を包み、そこにメッセージを添えてみたり、その小説の一部を抜き書きしてみたりしてプレゼントしても良いだろう。
また、色見本帳として飾り原稿用紙を使う人もいる。特に黒ベースの「黒雷公」は色が邪魔をしないので、色見本紙として最適だ。
このように、飾り原稿用紙は様々な用途で使うことができるので、ふたふで箋と合わせて、常備しておき、用途によって使い分けると良いだろう。
<記事に登場する文具>
・あたぼうステーショナリー 飾り原稿用紙
この記事を書いた人
- 文具ライター、山田詠美研究家。雑誌『趣味の文具箱』にてインクのコラムを連載中。好きになるととことん追求しないと気が済まない性格。これまでに集めたインクは2000色を超える(2018年10月現在)。インクや万年筆の他に、香水、マステ、手ぬぐいなどにも興味がある。最近は落語、文楽、歌舞伎などの古典芸能にもはまりつつある。
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