玉石参房 第三十房―文月―Out of the blue 青天霹靂「幻想を織りなす青い海」
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玉石参房 第三十房―文月―Out of the blue 青天霹靂「幻想を織りなす青い海」

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用紙:山本紙業・WRITING PAD A5 トモエリバー
万年筆とインク:Pent・Symphony・幻想を織りなす青い海


今回は、夏色具現化の
Pent・Symphonyシリーズ・オリジナルインク
「幻想を織りなす青い海」を中心に

朝比奈斎がお色見本を作ります。
どうぞよしなに。

長く激しかった梅雨も明け、今年も夏がやってくる。
灰色の空から一気に、濃く青い空へ。
暑いけれども、子供も大人もわくわくの夏。

その夏色を連想するような、美しい青色のインクです。


澄んだ青空のような青から、加水であらわれるやわらかな水色。
一度置いた色を乾く前に拭きとる描き方で、
夏の青い花ヒマラヤケシと、クラゲを。


用紙:SAKAEテクニカルペーパー・イロフル 


用紙:SAKAEテクニカルペーパー・トモエリバー


今の時期や、これからみられる青色の植物を万年筆で。
インクとおそろいの万年筆は、するすると書きやすく、
深い海色のうつくしい軸も眼福です。


用紙:SAKAEテクニカルペーパー・イロフル


海の水面を万年筆でかきました。
先に薄めたインクをノートに伸ばし、
しっかり乾いたら波と泡の影を万年筆で。

さらに透明ビニールをのせて、下の影の線の上を
白のアクリル絵の具や修正液などで写し取ります。
それを1cmから3cmずらして、表面の泡波として。

海の表面ができたら、次は別の用紙に文字を書きます。
夏にふさわしく涼しげな透け感がほしいので、
今回は透写紙(トレーシングペーパー)を使います。


透写紙は厚さの種類が多いですが、
あまりにも薄いと、インクがのりにくかったり、
書いた後にシワが寄ったりするので、

ある程度厚みがあるほうが書きやすい。
書いたあとの乾燥丸まりが少ない、
75g/m2以上の厚口は使いやすいでしょう。


同じ透写紙、おなじインクの下地表現で夏の風物詩を。
水紋には丸缶や綿棒入れの蓋などサイズ違いを使用。
別紙に赤と黒の金魚を描いて切り取り、
糊で貼った上に透写紙を重ねています。

かすかに透ける様子が金魚すくいのよう。


Gペン:立川ピン製作所・タチカワGペン特上品


上に重ねる透写紙に島崎藤村の「椰子の実」を。
柳田國男(仲が良かったのになんだかんだで結局絶縁)
とのエピソードがきっかけでうまれたこの情緒あふれる歌詞は
いまも学校教育での音楽の場で歌い継がれています。

揺蕩う椰子の実の経てきた時間、普遍的な望郷の歌詞。
大中寅二のきれいなメロディー、
とくに最終章の楽曲構成もあいまって
多くの人々の胸を打つ名曲です。


用紙:カランダッシュ・エーデルワイス水彩紙ブックSMアルビレオ


時は経て、世界中の距離が近くなった現代、
いろいろな場所の、国の、
青い空を楽しむことができる時代になりました。

同じように何処かで見上げる青空のもと、
悲しい思いをする人々が、ひとりでも多く慰められますように。

暑さは年々厳しく、そして体調崩しやすい時期。
みなさま、この夏もどうぞご自愛くださいね。


地球だからこそ見ることができる自然界の青い色は、
太古より人間と共にある癒しの色。

情報のスピード化で世界が身近になった分、
世界各地で突然の不意打ちのような心を削られるようなことも、
容易に知ることが可能になりました。

けれどもはたして、
人はお互いに近くなり得たのでしょうか。

いつの時代も、大切なのは自分自身を見つめなおし、
青天霹靂の世界を俯瞰すること。
相手を感じて接する思いやりを持つことを
大切にし、正しくありたいと思います。

※※※※※※

色を重ねて一つの絵を、
言葉を重ねて一つの手紙を、
人のちからと時間を重ねて一つの製品を、
それぞれの文具を重ねて「書く」という世界を。

ものをうみだす、心をかよわせることも重奏のよう。

Symphony in stationery
喧騒の日々を過ごす現代人の疲れをいやすような、
うるおいに満ちた素敵な色による「書く」「描く」時間が
たくさん生まれていくことでしょう。

色にいざなわれて開ける扉の向こうにひろがる、
「幻想を織りなす青い海」の世界。
インクの楽しみの入り口となれば幸いです。

まずは、この夏の思い出の色をどのくらい織りなせるか。
今年も相変わらずの「防護服並みな紫外線対策中」の朝比奈斎でした。
ではまた。

<今回のメインインク>
Pent〈ペント〉数量限定 ボトルインク シンフォニー 幻想を織りなす青い海 ~Blue Sea~

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この記事を書いた人

朝比奈斎
朝比奈斎
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

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