世界の筆記具ペンハウス
文具好きの小部屋

万年筆ライフがさらに楽しくなる紙選び2024

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新年あけましておめでとうございます。
2024年、新しい年を迎えました、といってもこの記事が公開されているのは成人式も終えてお正月気分から抜け出して、すでに通常モードに戻った人が多いかもしれません。
とはいえ、新年はじめのコラムなので、少しはお正月らしいお話をと思ってあれこれ考えてみたところ、「世界の筆記具ペンハウス」の読者に相応しい書くコトに纏わるお話しをお届けします。

書き初め


日本には、書き初め(かきぞめ)というお正月の習慣があります、古くは江戸時代に宮中の行事として行われていたようですが、明治以降一般庶民にも広まり、新暦の1月2日に(それまでは旧暦の正月2日)行われるようになりました。
新しい年を迎えて、初めて毛筆で字や絵を描くことを指す言葉を調べてみると「書き初め」の他に、試簡(しかん)試豪(しごう)筆はじめ(ふではじめ)試穎(しえい)試春(ししゅん)といった同意語があり、同義語では初硯(はつすずり)といった粋な表現もあるようで、表現などから見て、今以上にお正月には欠かすことができない行事のひとつだったようです。


さらに「書き初め」は恵方に向かい詩歌を書くことが習わしだったようで、漢詩の「長生殿裏春秋富不老門前日月遅」がよく用いられたとのことです。

万年筆初め

 万年筆を使って、恵方に向かい好きな言葉で「書き初め」をするといのも楽しい趣向なので、ぜひ一度お試しあれ。
さて、毛筆であれば半紙や奉書などの書道に用いる「紙」を思い浮かべますが、万年筆の場合はいかかでしょうか?
文具ファン・紙ファンから支持を集める山本紙業株式会社(以下山本紙業)が、現在取り扱っている紙の種類は数千種類にもおよび、万年筆インク以上に紙も種類が豊富です。
すべてが一般ユーザー向けに販売されている訳ではありませんが、そのほかの紙製品を取り扱うメーカーから発売されている紙を集めれば、もうとんでもない種類になります。
そんな数多くある紙の中から、今回ボク自身がこよなく愛用している「用紙」をカラータイプ別にセレクトしました。

ホワイトペーパー

山本紙業株式会社「バンクペーパー高砂プレミアム」


 山本紙業と三菱製紙株式会社が、既存のバンクペーパーを元に、万年筆ユーザーの求めるニーズに対して、設計から見直した結果たどり着いたひとつ答えがこの「バンクペーパー高砂プレミアム」です。
万年筆インクの濃淡を楽しむためには、乾燥性が犠牲になるなど万年筆ユーザが求める理想と抄紙技術の間には矛盾を孕んでいて、それらを解決するために様々な調整を行い、ついに完成に至りました。
その証として三菱製紙の品質保証THREE DIAMONDのウォーターマーク(透かし)が刻まれています。
スムーズな書き心地と、万年筆インクの濃淡をおもいっきり楽しみたいユーザーには、納得の「バンクペーパー高砂プレミアム」です。

クリーム用紙

デザインフィル「MDペーパー」


 MIDORIのブランドでも知られるデザインフィル株式会社は、1960年代から手帳や日記などの生活に寄り添うアイテムとして、開発されたのがミドリダイアイリー用紙、その頭文字から「MDペーパー」の愛称で知られています。
にじみや裏抜けの少なく、書き心地の良さを目標に改良を重ね続けてきた「MDペーパー」は、長い歴史とともに常に私たちの生活のそばにあります。
そんな「MDペーパー」クリーム紙は、やわらかい佇まいと文字の視認性の高さが魅力で、万年筆はもとより他の筆記具を使った時でも、その特性はかわりません。


私自身、万年筆での筆記の他に、取材のときに撮影する写真を事前にイメージするために絵コンテを作りますが、そんな時に活躍してくれるのが「MDペーパー」です。

グレー用紙

吉川紙商事株式会社「NEUEGRAY」


「目に優しい」をコンセプトに開発された「NEUEGRAY」は、創業100年を越える老舗の吉川紙商事株式会社(以下吉川紙商事)が、0(ゼロ)ベースから開発した、他に類のないまったくあたらしいグレーカラーの用紙です。
12月のコラムでも少し触れましたが、白い紙は光をほぼ100%近く反射するのに対してグレーは約30%から40%と眩しすぎることはありません。
長時間の向き合うレポートや報告書などの筆記に、大切な目を労ってくれるのが、初めてのグレー用紙「NEUEGRAY」です。

目に優しい用紙

大栗紙工株式会社「まほらノート」


 「目に優しい」というキーワードから、発達障害を持つ人の側に立ち、インクルーシブルデザインを採用して生まれた「まほらノート」は、大阪に社を構えるノートを作る老舗メーカー大栗紙工株式会社(以下大栗紙工)の先進的なプロダクトです。
「まほらノート」は光の反射を抑制して視認性の高い文字が書けることはもとより、シンプルなデザインの中に筆記を優しくサポートしてくれる罫線など、これらすべてが発達障害を持つ人たちの生の声から導かれた答えです。
書くコトに集中できるように、ページのレイアウトとは至ってシンプルに、罫線は書くためのサポートをする機能に徹しています。


また、罫線の中央にもう1本の罫線を薄くひいたことで、上下のバランスを取りやすくしているほかに、縦書きにした際には中央のバランスを整えることにも役立ちます。
近年、横書きがスタンダートになって、縦書きが苦手という人でも、この「まほらノート」を使えば書きやすく、読みやすい文字を書くことができそうです。

文具愛好家の考察

 紙の好みはそれぞれですが、万年筆などお気に入りの筆記具が、その紙と触れた時に指先に伝わってくる感覚が自分にとって「心地よい」と感じることができる紙こそが、一番ではないのかと思います。
2024年新しい1年のスタートに、自分好みの「紙」を探す旅をはじめてみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

出雲義和
出雲義和
文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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