世界の筆記具ペンハウス

手作りでしか表現できない、特別な味わい「大西製作所」

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大西製作所の万年筆

「大西製作所」…。今、万年筆ファンを中心にその名が日本中に轟いている。今回当店は大西製作所の工房に訪問し、たくさんのお話を伺ってまいりました。これまでの歩み、加藤さんとの出会い、万年筆作りの難しさ、職人としてのこだわりなど。実際に行なわれる作業工程を写真でご紹介しながら大西製作所の筆記具の魅力に迫ります。

(※当記事はペンハウス「手作り万年筆特集」でご紹介した内容を元に一部加筆修正をして再掲載しております。)

もうこの日本には万年筆を手作りする職人さんは数人しかおられません。

もうこの日本には万年筆を手作りする職人さんは数人しかおられません。

「大西製作所」の大西慶造氏は伝統工芸手法である轆轤(ろくろ)使い、積み重ねられた経験により、目視で0.1~0.2mmの精度まで正確に軸を削り出すという卓越した技術の持ち主。出来上った製品は艶やかに瑞々しく、そして生き生きと輝いている。納得した光が出るまで丹念に磨き上げ、最後まで決して手を抜くことはないという。

持つ人の事を思いながら、一本一本、丁寧に削り出されていく。

持つ人の事を思いながら、一本一本、丁寧に削り出されていく。

大西さんは職人達が軒を連ねる東大阪市の工房にてアセテートやセルロイド、アクリルなどの素材を使用し、手作りの万年筆を製作している。特にアセテートやセルロイドは加工に高い技術と大変な手間を要するため、今では全国でも数人しか職人がいないという。その昔はいろいろな町工場が分業で万年筆を製作していたが、現在ではほとんどの工場が廃業したため、すべての工程を大西さん一人で行っている。

万年筆に魅せられて50年以上、すべてを知り尽くした職人

愛媛県の中学を卒業後、集団就職により大阪の大手筆記具工場に就職した大西さん。台湾や中近東への輸出が盛んだった万年筆最盛期、当時15歳の大西さんは、セルロイドやプラスティック製の筆記具製作に携わり、基礎から製作経験を積み上げていった。途中、工場の倒産など厳しい時代もあったが、筆記具製作のみに留まらず、卸しや販売などその豊富な知識と経験を生かし筆記具の世界に携わっていく事となる。
そして転機が訪れたのは平成19年、65歳にて前職を退職した大西さんは一人の万年筆職人と偶然にも出会う事となる。

加藤さんとの出会い

数々の逸品を世に送り出してきた加藤清氏の万年筆工房「カトウセイサクショ」の歴史に、幕が下ろされたのはまだ記憶に新しい。加藤さんと大西さんは古くからお互いを知る関係であったが、この時偶然にも共通の知人の紹介により、忙しい加藤さんの筆記具製作を手伝うことになる。再び万年筆の製作を開始した大西さんは晩年の加藤さんのもと研鑽を積んでいった。
そして平成22年9月、カトウセイサクショの機械や道具などを引き継ぎ「大西製作所」を創業。加藤さんから受け継いだ万年筆に対する「想い」と、大西さんの正確無比の職人技が紡ぎ出す手作り筆記具が話題を呼び、万年筆ファンをはじめ各種メディアからも注目を集めることとなる。

加藤さんとの出会い
▲画像左が大西さん、右は加藤さんの当時の製作風景。同じ機械、同じスタイルなのがなんとも印象的。 しかし物静かに製作する加藤さんに対し、大西さんはリズミカルに作業を行うのがお二人の違いである。

加工の難しさ

加工の難しさ

昔とは異なり、角材を丸棒にする所から加工が始まる。アセテートやセルロイドは熱に弱いため、現在では丸棒に成形出来る会社はほとんど無い。製作時もゆがみが出やすいため、中央の穴をとることが難しく、均一の太さにするためには熟練の技が必要とされる。ベンチレース(卓上旋盤)にて何度もドリルで中央を取り直し、湯に入れプレス機に掛け形が整えられるまで何度も作業が繰り返される。
裁断、削り出し、穴あけ、すべては感覚が頼りであるが、生じる誤差はなんと0.1mmから0.2mm!それでも完璧では無いという大西氏。その職人魂に脱帽した。

すべての作業を一人の手により行うため、1日に製作出来るのは僅か10本程。決して妥協を許さない、モノ作りにかける職人の情熱と思いが筆記具に詰め込まれている。

加工前の軸材▲加工前の軸材。ここから筆記具として完成するまで、気の遠くなりそうな工程が待っている。

歪みやすい穴空け作業。▲歪みやすい穴空け作業。何度も同じ工程を繰り返し、真っ直ぐ軸に穴が空けられる。熟練の技のみがなせる作業である。

「皮むき」と呼ばれるもっとも難しい工程。▲「皮むき」と呼ばれるもっとも難しい工程。小刀を使い軸の表面を均一に削り出して行く。これが出来て初めて一人前といわれる。

道具へのこだわり

道具へのこだわり▲職人の生命とも言える道具たち。皮むきに使われる、カンナのような小刀は一生使う大切なもの。その他の特殊な工具は、鋼の棒より自分で作られている。

手作りでしか表現できない、特別な味わいがここにある。

手作りでしか表現できない、特別な味わいがここにある。

取材中も終始にこやかに、そして丁寧にひとつひとつの質問に応じてくださった大西さん。 大西さんの作る万年筆にはそんな真摯な人柄や、人としての優しさが映しだされているようです。
柔らかな手触りと美しい色柄。手作りでしか表現できない特別な味わい。 持つ人の事を思いながら、一本一本削り出されていく大西製作所の筆記具。ぜひ一人でも多くの方が手に取り、この素晴らしい「味わい」を感じていただければと思います。

最後に大西さんに今後の展望や夢は?と訪ねて見たところ、にっこり微笑みながら「今は作ることしか考えていませんよ」と職人らしい言葉が返ってきた。今後ますます注目が集まるであろう万年筆職人「大西慶造」から目が離せない。

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この記事を書いた人

ペンハウス山中
ペンハウス山中
ペンハウス入社12年のWEBディレクター。ページ製作から企画・イベント、システム開発などにも携わっています。趣味はサッカー観戦と合気道(四級)。
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