玉石参房 第四房「松風」すべての文化に根付くめでたき色
世界の筆記具ペンハウス

玉石参房 第四房「松風」すべての文化に根付くめでたき色

  • Pocket
  • LINEで送る

今年はリバイバルの当たり年です。
Revival。
キリスト教における信仰復興からの単語。
「見直そう」約八百年前の平家物語。

2021年~2022年アニメ「平家物語」は、原作の古川日出夫訳も
監督脚本、作画動画、文学解釈、スタッフキャスト等
どれも非常に素晴らしかった。
Wit Studio出向社員も参加ということで
アクションシーンのコンテも垂涎。

大河ドラマでは「鎌倉殿の13人」はじめ
「平清盛2012」「源義経1966」「義経2005」など
平家がでてくるリバイバルは幾つもありながら、

子供時代のわたくしは、大河ドラマは興味薄、
学校でならう「平家物語」の本文冒頭暗唱すら
いっこうに身が入りませんでした。

壇ノ浦も目前の地に住み、琵琶法師の生演奏も耳目し、
赤間神宮の宮司お子との縁にてお社に幾度も遊びに行き、
平家蟹の甲羅の顔真似をして笑いをとる、等
平家とはゆかりある(?)生活をしていながら、
いっこうに身が入りませんでした。

古典授業中、推量の助動詞「らむ」を目にすると、
指名音読をさせられる時も
「花散るらむ(だっちゃ)」



将棋の玉駒(王駒)と同じ方位の同級生にのみ聞こえる声で
「うる星やつら」ヒロインの語尾を毎回付け足すほど
いっこうに身が入りませんでした。

「うる星やつら」も「モノノ怪」も
「モブサイコ100」も「悪女」もリバイバル。
今年はリバイバルの当たり年です。

おごれる人もひさしからず。
権威や名声を手にしなくとも
人の一生でふりかえれば、
人間が一番驕る時期とは、
思春期あるいは青年期が多かろう。

中二病とはまさに、
おごれる心もたけきことも、
皆とりどりにこそありしかども、
日本文化すべてに根付くめでたき色の「松風」を
生涯現役中二病の朝比奈斎(マツ花粉症→花粉絶賛飛散中)が色見本として
ご紹介します。
どうぞよしなに。

特殊ペン先。曲がっております。
つま先立ちのようなものから、
纏足で巻く足指のように(わかりづらい)、
鳥の上嘴のように下方曲がりなどいろいろあるなかで、

今回はFDM(ふでDEまんねん)とガラスペンにて
平家物語巻六「小督事」を、
特殊用紙を使い肉付け塗りなしの一発書き色見本をば。

平家物語巻六「小督事」

セーラー万年筆「プロフィットふでDEまんねん55°」
東京スライダ「ガラスペン太字」
コクヨ「トレーシングペーパーA2厚口75g/㎡」

「松風」いうたら「源氏物語」ちゃうんかい!
とは、おっしゃる通り。

一応、長めに日本文学を学び、源氏物語も原文全文講義を受け続け、子供時代は学研まんが偉人シリーズで最初に買ったのが「紫式部」だったわたくしですが、

光源氏、個人的に苦手なんすよ。(「で」抜き)フィクションキャラにしても。「他の女とデキた子を育ててくんない?愛してるよ♡(意訳)」って。美貌の千葉雄大キャストだとしてもいと、わりなし。(無理)

ですが、いづれの御時にか、インク作品としてご紹介たてまつりはべらむ(だっちゃ)2024年の大河ドラマ「光る君」は紫式部だそうですねリバイバル。

平家物語登場人物・小督局(藤原家令嬢・琴の名手)は美人過ぎてモテまくり、高倉天皇と冷泉大納言隆房とふたりのイケメンから愛されますが、

どっちも既婚者、しかも清盛の長女と四女の婿達なので、清盛激怒からの抹殺されそうになり行方くらましてる所です。人生諦めて逃げる途中の月夜に心動かされ、最後の月、と思いをこめて琴を鳴らしていたら…の場面。

高倉天皇后の徳子の立場と小督の立場それぞれで、読み方がいろいろとふくらむのが古典文学の醍醐味。

松葉が、そよ風にゆれるときは「さらさら」と鳴り、強風に吹かれるときは枝ごとしなる「ざわざわ」「ざらざら」としたその音が琵琶や琴の「ばららん」と強く鳴らす表現を彷彿させます。松の色の視覚と、琴や笛という聴覚の融合部分です。

それにつけても、特殊ペン先やガラスペン、書くの難しいですよね。筆っぽく書きたいのに筆とは縁遠い線になることもありますよね。

筆っぽくするには!その1「ペン先に追いインク」

ペン先に仮想の毛筆がついているイメージで
インクを極潤にし、かつインクボトルに浸すか
シリンジでインクを追加して書きます。だぼだぼ気味に。

筆っぽくするには!その2
「ペン先の角度をちょこちょこ変える」

一定の向きが必須の万年筆の定説をあえて砕く。
FDMや美工筆などペン先曲がりの万年筆やガラスペンのコツは、
「ペン先ではなくインクで書くつもりで」
「線と書き方によってペン先の当たり部分と角度を変える」

さすれば、特殊ペン先やガラスペン最難関の
【しんにょうのはらい】も肉付け塗りなしで綺麗に書けます。
そのコツ詳細は次号以降ご紹介します。

ユポ松風1

漢字:東山「マスキングライナー」
英字:ホルベイン「マスキングインク」/立川ピン製作所「日光Gペン特上品」
筆:あかしや「水筆」
用紙:ユポ

落ち着きのある濃い緑色の「松風」は
ユポではダイナミックにインクがのり、
乾いた後は鉱石断面のようになりました。

特殊用紙、今回はトレーシングペーパーやユポ(紙)。
トレーシングペーパーは基本的に、紙の材料パルプ等の素地を
めっちゃ叩きまくったり、セルロースや樹脂を足して
半透明にした紙、透ける紙。

ユポ(紙)は投票用紙で使われているアレ。
ポリプロピレン樹脂を伸ばしたものなので「紙」ではないですが
インクがのるように加工されたものも各種あり、
アルコールインクアートや染料インク分離を楽しむ遊びでも
近年使われるようになりました。

ユポ松風2
ユポ松風3

ユポ松風4

ただしユポは、紙ではないので、
時間がたつとインク剥離がみられますから

プレゼントカードや手紙など、
人にさしあげる用途の時は注意が必要です。
トレーシングペーパーはインクによっては
はじいて全く書けない時もあります。

上記の例を防ぐために、使う前に必ずすることは、
指紋や手脂を完全にとるために
紙面表裏全体をアルコール剤などで拭く


一見、きれいな紙面にみえても、インクをぬりひろげたときに
手脂ではじかれたり、自分の指紋をくっきりご披露することもあるので、

特殊用紙は紙の端をもち、紙面に触らないように、
筆記時も手袋をはめると無難です。
「そんなに皮脂過剰?」と、ご案じ召さるな。わたくし立派な乾燥肌です。

ユポ松風5

特殊紙使用時は自然乾燥で。
そのほうが発色や乾燥変化がきれいにでます。
しかし、わたくしは生粋の「いらち(せっかち)」、
温風乾燥しておりますが、
ユポは熱源近いとプラバンのように縮みますのでご注意を!

真っ白な白浜に1
真っ白な白浜に3


真っ白な白浜に2
真っ白な白浜に4

ゼブラ「チタンGペンプロ」
プラチナ万年筆「センチュリー3776ローレルグリーン」
三菱「ユニボールシグノ金銀」
本文前半用紙…SAKAEテクニカルペーパー「トモエリバーノート」
本文後半用紙…コクヨ「トレーシングペーパー」

檸檬

小学館「サライ」付録・丸善ミニ檸檬万年筆
コトバノイロ「檸檬」
立川ピン製作所「日光ペン特上品」
山本紙業「COSMO NOTE」
↑同名インク「丸善アテナインキ檸檬」版は朝比奈斎Twitterにて掲載中。
檸檬色の違いも各社ならではです。
藤富咲と松風1
藤富咲と松風2
藤富咲と松風3

彩時記「藤富咲」と合わせて。
高倉天皇崩御時のアニメ「平家物語」では背景に藤がからまる松の描写が。
非常に唸る演出です。

藤の花も、桜と同じくDNAに埋め込まれたかのような傾倒感。
藤の花の美をめでるのは日本独特な文化であり、
白居易はじめ中国漢詩文化において藤は忌むべき植物でした。

なぜなら藤は寄生植物。巻き付いた先の樹を枯らすから。
造園業的には寄生発見時に即取り除く植物です。

そのような古の中国文化を知っていながら
藤を良いものへ転化したのは、
時の権力者・藤原氏に諂った(へつらった・すりよる)
事が発端とか。藤が松にまきつくことも
「帝と臣下の一心同体の絆」として意味を更に転化。

しかしながら、その絆ゆえに、
「じわりじわりと締め上げて命を絶つ」という裏の意味が、
アニメの美しい背景描写として、きちんと表す演出に驚いたのです。

藤は藤の美しさ、松は松の美しさ。
機会があれば、この話はまた詳しく。

「松風」の濃緑は、白砂青松の松の色、風景美としても、
濃茶や織部焼、松を表現する琴や琵琶など、
諸文化にも通じる落ち着きの緑。
視覚聴覚などの五感をすべて使わせるのは、
やはり「めでたさ」と直結するからでしょう。

箱もインク名も世界観も美しい、自然の色を体現する「松風」。
インクの様々な楽しみ方の入口となれば、幸いです。

松葉は手触り意外にも柔らかく、
松の葉の香りもアロマ的にすっきりします。
口に含むと薬になるとアシㇼパさんは言ってたし、
凄く苦い!と杉元佐一も白石由竹も悶絶していました。
ゴールデンカムイ実写映画化だと…?
…リ、リバイバル…

平家物語に触れ直し諸々のメディアも視聴した今回、
大河ドラマ「平清盛」と「鎌倉殿の13人」の出演者を知って、
「あ!あのときの子役が鎌倉殿で意外な配役!」とか

昭和アニメ「まんが日本史」を観て
「旧・次元大介役&トムとジェリー中継ぎアニメ
[ドルーピー]シリーズの狼役の小林清志が源頼朝じゃん!」
と、
一人おおはしゃぎの朝比奈斎with大嚔(マツ花粉)でした。
ではまた。

<今回のメインインク>
Pent〈ペント〉 ボトルインク 彩時記 夏~summer~ 松風(まつかぜ)

この記事を書いた人

朝比奈斎
朝比奈斎
憧れの高級文具から教室に忘れ去られた名もなき消しゴムに至るまですべての文具を偏愛する者。
文字は下書き無し・肉付け塗り無しの一発書き。
文具・画材・多肉愛好家として雑貨店「SHOP511」にて多肉植物の育成販売と文具雑貨諸事の販売に携わる。好きな言葉は「玉石混淆」

Twitter:@asahinaitsuku
Instagram:@asahinaitsuku
  • Pocket
  • LINEで送る