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アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵職人・小林 正俊さんを訪ねて~

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アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

2018年12月に販売開始となったペンハウスのオリジナル多機能ペン「アストロロジー」。その数ヶ月前、私ペンハウス山中とディレクター水野は、加賀温泉駅に降り立ちました。目的は温泉ではなく、、ある職人さんを訪ねて。

アストロロジーは12種類の星座がそれぞれ描かれた筆記具。発売前よりSNSでも話題となり、販売開始と同時に数日で数百本を超えるたくさんのご注文をいただきました!

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

アストロロジーと職人?いったい何の関係があるの!?と思われた方もいらしゃるかもしれませんが、実はこのアストロロジーの星座の絵はすべて蒔絵職人の手作業で創られているんです。

今回、私たちは加賀蒔絵職人であり、すべてのアストロロジーの絵付けをお願いしている小林正俊さんを訪ねて、蒔絵の手法や魅力、職人としての想い、そしてアストロロジーが完成するまでの工程など、たくさんのお話をお伺いしてきました。その一部ではありますが、皆さまにご紹介できればと想います。

小林 正俊氏 プロフィール
1971年生まれ、石川県立輪島漆芸技術研修所を卒業後、伝統工芸師・角出俊平氏に師事。1995年、父・小林正男氏に師事、1966年から続く小林漆芸工房に入社。2007年からは同工房の代表として、伝統技の加賀蒔絵を用いて、万年筆など筆記具をはじめ、身近な品と伝統を融合させている。

■カナダ・バンクーバーやソルトスプリングで作品展示や、同ケベック博覧会にて作品展示及び蒔絵実演を行い、日本文化を紹介
■ニューヨークにて蒔絵装飾パネルを展示
■ドミニカ共和国フェルナンデス大統領へ作品を贈呈
■石川の伝統工芸展 入選
■山中漆器蒔絵展 受賞多数

 

漆塗りだけではない漆芸工房

── さっそくですが、工房についてお伺いできますか?

小林さん:
はい、こちらは先代が工房をしていて、それを継いだ形になります。漆が専門ですが、最近は木に漆を塗るだけではなく…家具・椅子とかも手がけています。場合によってはウレタンやアクリルといった化学塗料も使用します。陶器なんかにも塗ったり、あとガラスやインテリア関係、家具・椅子とかも手がけていますね。

── 漆を塗ることが専門ということですか?

小林さん:
一応絵を書くことが専門なんですけど、もともと僕は高校を出て輪島の漆芸研修所で漆芸の全行程を学ばせて頂きました。

本来この職業というのは、すごく分業されてまして、基本的には器を作る人は器だけしか作らない、塗る人は塗ることしかしないんですね。絵を書く人は絵を書くだけみたいに。

ちょっとそれじゃあなって思いましたんで、一応全部できるようにという風な修行をやってきて、だからすごくうちは稀なほうだと思うんですね。塗りもやるし、絵も書くし、陶器を作ったり。だからこのへんではちょっと変わった人というか(笑)そういう感じですね。

── このあたり一体は職人さんの街だとお伺いしたのですが?

小林さん:
そうですね。だいぶ減りましたけど。もともとは山中温泉という温泉街でやってたんですけど、どうしても手狭になってきたり、漆器職人じゃない方もいらっしゃるんで、色々あって、じゃあこっちのほうに出てきて、漆器の業者、漆の職人でひとつの街を作りましょうってことで。
そのころは力があったみたいで、全盛期ですね。

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

── 今はすべてお一人で作業をされているんですか?

小林さん:
いえ、弟子がいるんで、3人体制でさせていただいています。ただ人を増やせばいいかという問題ではないので、割とセンスというか性格とかもありますので。やりたいと言って来られる方もいらっしゃるんですが、なかなか続かないですね。

── 大変なお仕事なんですね

小林さん:
割と地味な仕事なので、やっぱりそういうところがあります。どうしても完成品だけ見てると華やかなのかなと思われる方がいらっしゃると思うんですけど、実際はすごく地味な作業ですので。そのギャップがあるかもしれないですね。

蒔絵と呼ばれる理由

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

── こちらは製作途中のものですか?

小林さん:
一応工程順番で、ざっくりとなんですけど並べさせていただきました。

── もともとこういったプレーンな状態なんですね!ここからどのように蒔絵を施していくのでしょうか?

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

小林さん:
この状態でうちに入ってきます。一度この状態で検品をさせていただいてます。
そして、今回はシルクスクリーンと手作業を混ぜておこなっていますので、まずは文字やある程度のあたりなどをシルクスクリーンで印刷します。その後、筆で白い線を書いて、その白が乾く前にですね、こういう青い金属の粉があるんですけど、こうやって振って付けてあげるんですね。

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

小林さん:
蒔絵っていうのはこうやって蒔くから蒔絵なんです。

── わぁ、初めて知りました、それで蒔絵なんですね!

小林さん:
そう、ずっとこうやって手作業で粉を蒔いていって、全体に青色がついたら、一回これを焼き付けます。ある程度の温度をかけて乾かすんですね。で、それが乾いてから、余分な粉をとります。そうすると、白い線をかいた部分だけ青色になります。

── なるほど。いきなりすごい手間がかかってる…

小林さん:
今回の場合は小さい点々がたくさんあるんで、抜けがないか、この段階でもう一回検品します。もうそれの繰り返しです。絵が完成するまで。

で、次の段階では小さな星を白い点々で書いて行きます。

── えーっ!
思わずえーっって言っちゃいました(笑)本当に途方がない…

小林さん:
で、この白がまた乾く前に今度は銀色の粉ですね。銀色をこうやって蒔いてあげます。そうするとさっきの青色の所はもう付かないんですけど、この小さい白い点のところは乾いてないので、銀だけがここに付くんですね。

── そういう風に重なっていくんですね。

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

小林さん:
これをまた焼き付けて乾燥させてから、この星に抜けがないかを検品します。
そして、それが終わると今度は大きな星ですね。星座の部分。これも先程と同じです。今度はピンクゴールドの部分なので赤と銀を混ぜます。赤を乗せて、その上に銀を蒔くと、やわらかいピンクゴールドになります。
これをまた焼き付けて乾燥させてから綺麗に拭いて一応軸の部分はこれで完成です。今回は上下に絵柄がありますので、上のほうも同じようにそれを繰り返します。

── (言葉を失ったため無言)

小林さん:
最近では全自動の印刷機、プリンタみたいなものでされているところもあるみたいなんですけど、それだとどうしても味が出ないんです。冷たい感じになっちゃうんで。
こうやってなるべく手をかけてあげて、今回は星のイメージなので、なるべく固くならないよう、やわらかいような仕上がりになればいいなと思いまして。

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

作り手の温もり、きちっと心を込めて

── 今回来る前に質問を考えまして、すべてプリンターで作られた商品と手作業で仕上げた蒔絵の違いをお伺いしようと思っていたんですけど、もう今の見ていたら、どう考えても違いますね。
そもそも手法が違うし、かけてる時間も仕上がりもまったく違う。どう考えても圧倒的に違いますもんね…。

小林さん:
仕上がりも違いますし、やはり手をかけた分だけ作り手の温もりっていうんですか、気持ちも入ってきますんで、そのあたりはやっぱり違います。
僕としてはお客様ひとりひとりに行き渡るものですので、きちっと心を込めて作るようにいつも心がけています。
このあたりは誰にも負けない気持ちが入ってますので。

── 感動しました。ここまで手がかかっているとは思っていませんでした。今日はここに来れて良かったです。

小林さん:
僕たちもすごいありがたいです。工程とか過程があまり表にでることが無いので、
わりと皆さんこうやって描いてるだけでしょっておっしゃるので、「そうじゃないんですよねー」とはよく言うんですけど。やはり伝わらないですよね。
伝えていこうとはこちらもやってるんですけど。なかなか伝わらないので。

── ありがとうございます。まさかこんなにいろんな工程があって蒔絵柄が完成するとは思ってもいませんでした。

小林さん:
今回ご説明したのはこれでもだいぶ端折ってますけど、だいたいわかり易い感じでってなるとこんな感じになってます。

── ちなみ一本あたりの作業にどれくらいの時間がかかるんですか?

小林さん:
1日だいたい3人がかりで50組できるかできないかぐらいです。わりと時間はかかります(笑)

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

蒔絵の素晴らしさを知ってもらいたい

── 自社のオリジナル品で製作をお願いしておいて変な話ですが、今回のアストロロジーもこれだけの手作業が入っているのにお求めやすい価格というか、それには何か秘密があるんですか?

小林さん:
手間の割には安いんです(笑)はっきりいいますと。この手間かけてこの値段なので、やっぱりどうしても値段で見ちゃうんでお客さまも。なので今回これがきっかけでこれだけ手間がかかってますよというのを伝えていただけますと、やっぱり受け止める側も違うかもしれません。

蒔絵とか漆と言っても普通みんなわからないですよね。なので、とにかく取っ掛かりとして、最初はこのあたりからスタートしていただいて、蒔絵作品を好きになっていただければと。蒔絵というものの入門編みたいな感じでと考えています。

── すこし他の作品を見させていただいてもいいですか?

(工房内は残念ながらコンプライアンス上すべてをお見せいただく事はできませんでしたが、筆記具のほかにもルーペやペーパーナイフなど過去の作品がディスプレイされていました。)

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

アストロロジーに込められたもう一つの想い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

アストロロジーに込められたもう一つの想い

── 実際完成したものを並べてみると1本1本違いますよね。

小林さん:
そうですね。多少ですが全部違っています。そのあたりは手作りの揺らぎといいますか、あたたかさが出ている部分だと思います。
やっぱり先程おっしゃられていた、単に印刷で出来てくるのと、こう手をかけたものとの一番の違いがそういうところに出てくると思います。

── そういったお話を聞くと、実際にペンををこう眺めてみても、こういうふうに作られているんだなって情景が浮かんでくるようになりました。普段なら単純に綺麗だなぁって終わってしまうんですけど。僕らここに来る前に最初にサンプルをいただいて見ていたんですけど、その時見た時と今見るのとはまた全然ちがったものに感じています。面白いですよね。

すいません。きょうは貴重なお時間を本当にありがとうございました。いろいろなお話をお伺いできてよかったです。

小林さん:
いえ、こちらこそありがとうございました。

アストロロジーに込められたもう一つの思い ~加賀蒔絵師 小林さんを訪ねて~

最後に記念撮影でにっこり。インタビュー中も終始笑顔でユーモアたっぷりにお話をしてくださった小林さん。あたたかい人柄の奥にある職人としての熱い想い。手間がかかっても、きちっと心を込めて作る。そして、ひとりでも多くの方に蒔絵の素晴らしさを知ってもらいたい。アストロロジーにはそんな職人のストーリーも込められているのです。

 
<アストロロジーの詳細はこちら>
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