どんなものでも携帯する際に相応しい収納場所がある、とすればhelicoのシュクル万年筆は化粧品ポーチのようなペンケースらしくないオシャレな入れ物がよく似合うと、男ながらにそう思えてしまう。
そんなシュクルとはじめて出会ったのは、数年前の文具祭事の会場だった。
軽量でコンパクトな万年筆は各社からも発売されている中、はじめて見た瞬間に魅入られる筆記具はごく希で、他に類を見ない美しさがシュクルにあった事をいまでも憶えている。
シュクルの第一印象はまず所有欲をくすぐる存在で、常に身につけていたくなる美しいアクセサリーのような万年筆だった。しかし実物を手にしてみると目の前にある手帳やノートに無性に書きたくなる衝動に駆られる一面も秘めている、
さらに数多いラインナップを見てしまうと、あれも欲しいこれも欲しいとコレクションとして集めて日々眺めながら暮らしたくなる、そんな魔性の魅力を重ね持った万年筆がこのシュクルだといえる。
シュクルの魅力は、見た目の美しさやコンパクトなボディだけにはとどまらない。
キャップをした状態は手のひらの中にシュッと収まるサイズだが、ネジ式キャップを尻軸につなげれば、筆記しやすい長さに変わる。外観の美しさに加えて器量の良さも実感できる万年筆としての仕上がりも見逃がせない。
スマートフォンやタブレットPCが日常生活の中に深く入り込んで来た現代を生きる人たちにとって万年筆は過去の遺産に近いアナログなデバイスといっても過言ではないだろう。
だからこそ、あえて万年筆らしくない万年筆こそが今の時代に相応しいと感じる時がある。
シュクルを手にしてみると、そんな世界を待っていたかのようなタイミングで私たちの前に登場した、これは偶然ではなく時代の必然だったように思えてしまうから不思議だ。
2013年に誕生したhelicoブランドは、ハンドメイドの万年筆として登場と同時に人気を集めて、発注から納期まで数ヶ月待ちが当たり前だった。その人気は今も変わらないが、ようやく展示会や催事会場でも、また世界の筆記具ペンハウスのサイトでも購入できるようになり、入手出来るチャンスが増えたことはファンにとって喜ばしい。
シュクルは筆記具を意識させることなく、ちょっと立ち寄ったカフェの空間を自分の書斎に変えてしまう。そんなライフスタイルに相応しい筆記具はちょっと他にはない。
<この記事に登場する万年筆>
・helico(ヘリコ) シュクル 万年筆
この記事を書いた人
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文具ライター、システム手帳から綴じノートまで複数の手帳を使い分ける、手帳歴40年のマルチユーザー。
「趣味の文具箱」「ジブン手帳公式ガイドブック」などの文具雑誌や書籍をはじめ、旅行ライターとしても執筆活動を行い、文具と旅の親和性を追い求める事をライフワークとしている。
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